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財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生|読書

今回紹介する本は「財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生」という本です。
最近話題のMMTについて書かれている本です。
MMTとは、「Modern Monetary Theory」のことで、日本語では現代貨幣理論と訳されいます。MMTの勉強をしたいなと思って読んだ本です。

概要

著者はステファニー・ケルトンさん。
ニューヨーク州立大学ストーに―ブルック校の教授である経済学者の方です。
日本語訳は土方奈美さんという方で、日本経済新聞の記者だった方です。
MMTは経済についての理論なので、そういう意味では専門家かつ記事を書くプロだった方の訳なので、理解しやすい日本語になっています。

ただ経済学についての内容なので、ある程度経済には基本的な素養は必要な事、理解があったもついていくのはなかなか難しいものでもありました。

MMTは賛否両論ある理論ですが、まずはどんな理論なのか学んでみようとしたときには手に取りやすい部類に入ると思います。
また初版が2020年10月でコロナ禍にも触れているという新しい書籍である点も選択の際のポイントです。
実際の経済と経済学は異なる、という前提を持って読み進めていくと頭に入りやすくなると思います。
MMTそのものに賛否あることや理解が難しい経済学の内容になるので、
ここでは触りの部分で、ポイントを3つにまとめています。


家計と違い、政府は通貨の発行主体であるため財政赤字は問題ではない。
政府支出が過剰かのバロメータはインフレの程度である
本当に解決すべき赤字は貨幣ではない


家計と違い、政府は通貨の発行主体であるため財政赤字は問題ではない。

MMTは、政府の借金はインフレをもたらさない限り問題ではない、という主張をする理論です。
アメリカ、イギリス、日本はそれぞれ自国通貨を持ち、各国の政府と中央銀行は通貨の製造者であり必要な資金を自ら作り出すことができる。そのため資金が尽きることもなく、そもそも借金をする必要がない、というものです。つまりユーロ圏には当てはまらないということです。

そもそも借金をする必要がないなら、なぜ国債を発行するかというと、それは金利調整のため。なのでそもそも借金という表現が間違っている、負債という言葉にするべきだ。そして、これまでの、まず税金と借金によって資金調達し、その後支出する、という認識は誤りで、本当はまず政府の支出(通貨の発行)があり、その後税金や借金(国債発行)で回収している、という順序が正しい、という主張です。

また、片方の赤字はもう片方の黒字。つまり、政府の赤字(財政赤字)は民間側の黒字である、と主張しています。
もっとも民間側の「どこ」が黒字なのかは重要で、本当に必要なところに支出されなければならない、ということも強く訴えています。

この点で、日本でもMMTが注目されているのは、日本でも財政赤字が大きく膨らんでいることがたびたび問題視されていることに起因していると言えます。

政府支出が過剰かのバロメータはインフレの程度である

とは言っても、通貨を発行し続けて政府支出を増大させ続ければ、インフレを招きます。なのでインフレには警戒する必要がある、ということです。
通貨の価値が暴落すれば誰も国債を買ってくれなくなる…といった深刻な事態になります。
MMTでは、インフレ対策として、通貨の発行を完全雇用の実現のために行い、物価の安定を図ればよい、と主張しています。
特に地域社会や地球を大切にするような仕事を用意するべきだとしています。
就業保証ができれば①失業がなくなって景気の波が抑えられること、②さらに賃金が安定するので物価の安定につながる、それでインフレも抑制できるということです。

本当に解決すべき赤字は貨幣ではない

財政赤字よりももっと深刻な問題が、他にある。
それは質の高い雇用の不足であり、貯蓄の不足であり、医療の不足であり、教育の不足であり、インフラの不足である。さらに気候変動問題への取り組み不足という大きなスケールの問題も深刻だ、もっと言えば民主主義も傷の深さという意味で深刻である。
これらを解決することは財政を議論するよりも遥かに重要なことだ。
本当に重要な不足に対して、積極的に投資を行うべきだ、としています。
民間側のどこを黒字にするか、の投資先についての言及ですね。
最後の方はMMTの理論についてというより、世の中のあるべき姿について説かれています。

感想


「財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生」という本の内容をほんのさわりの部分で触れました。
まだ新しい理論ということもあって、議論の真っ只中にある内容です。
既存の考え方への反証をとおしてMMTの正当性を訴えていますが、まだ鵜呑みにはしづらい内容とも感じました。とはいえ議論紛糾しているのは、的を射ている部分があるから、とも言えます。
その国が通貨の発行体であることが条件であるなど適用にも縛りがあります。

今後進んでいく議論にも注目したいです。

以上です。


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