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【オンラインショップ更新】特集 月の絵本

こんにちは!
古本とがらくた paquet.オンラインショップ更新のお知らせです。
商品はすでにショップに掲載されていますが、購入可能になるのは今夜21時です。

今回は秋の夜長に読みたい「月」をモチーフにした絵本を5冊セレクトしてみました。
神秘的なお話から世界の民話、ハロウィンにもぴったりなダークな雰囲気の作品まで、なかなかおもしろい品揃えになったと思います。

まずはロングセラーの名作から!

「お月さまってどんなあじ?」
マイケル・グレイニエツ 文・絵
いずみちほこ 訳
1995年9月9日 セーラー出版 発行

お月さまってどんな味がするんだろう?
ある夜に月を見上げて、ちいさなカメは思い立ちます。
「いちばんたかいあの山にのぼって、お月さまをかじってみよう」
でも、ちいさなカメは山の上にのぼったところで月には手が届きません。
ちいさなカメはぞうを呼んできます。ぞうはカメの背中に乗るとお月さまにむかって鼻を伸ばしますが、それでも月には届きません。

「キリンさんなら……」

キリンがシマウマを呼んで、シマウマがライオンを呼んで、と、動物たちはどんどん高く積み上がって月に近づいていきます。
有名なロシアの民話「おおきなかぶ」とおなじ、くりかえしの技法が使われたストーリー。
この絵本は邦訳版が出版された翌年、1996年の日本絵本賞翻訳絵本賞を受賞しています。
夜空を背景にぽっかり浮かぶお月さまと積み木のように積み上がる動物たちの表情は間が抜けていてかわいらしく、読み聞かせにもぴったりの一冊です。

「おこった月」
ウィリアム・スリーター 再話
ブレア・レント 絵
はるみ こうへい 訳
2006年9月10日 童話館出版 発行

一度見たらわすれられない、迫力のあるおこった顔の月の表紙。
北アメリカ大陸の先住民族に伝わる民話をもとにした絵本です。

ある夏の夜。ラポウィンザという少女が月を見上げ「顔があばただらけだ」と悪口を言いました。
心無い一言に傷つき、おこった月は彼女を闇のなかへと連れ去ってしまいます。
友だちのルーパンは彼女を助けようと、月のすぐそばの星にむかって矢をはなち、くさりをつくります。
太陽がのぼると、くさりははしごになりました。彼は勇敢にもはしごをのぼり、ラポウィンザを助けにむかいます。

彼は道中で二人の人物に出会い、彼らの導きで月の領地にたどりつくとラポウィンザを助け出すことに成功しますが、本当にこわいのはそこからでした。
おこった月が逃げる二人を追いかけてくるのです。

再話を担当したウィリアム・スリーターは、ルーパンとラポウィンザの冒険を雰囲気たっぷりに語ります。道中に出会う人物から授かった品物で窮地を切り抜けていくようすは、さながら日本昔話の「三枚のお札」のよう。日本でのお札が北アメリカではネイチャーな魔法道具に代わって描写されているところ──どんな品物なのか、書いてしまってはつまらないのでここには書きませんが──がわたしは好きで、世界の民話好きには刺さるのではないかと思います。

おこった月の顔は本当にこわいので、ちいさな子には刺激が強すぎるかもしれませんが、ブレア・レントのうつくしい色彩にのせて伝わってくるのは「他者をばかにすることのこわさ」「だれかを助けようとするとき、かならずほかのだれかの助けが必要であること」
晴海耕平さんの訳もすばらしく、大人が読んでもおもしろい作品だと思います。

「お月さまと王女」
池田大作 文
ブライアン・ワイルドスミス 絵
1996年7月3日 オックスフォード大学出版局 制作 聖教新聞社 発売

「色彩の魔術師」ブライアン・ワイルドスミスが描く夜空が真っ暗ではないことがいつ見てもいいなあと思う絵本です。
水彩、ガッシュ、パステル、色鉛筆などさまざまな画材を使って描かれるブライアンの絵は、カラフルなのに神秘的で、かわいらしいのにどこかこわく、絵本というより画集のようにいつまでも眺めてしまいます。

この絵本の登場人物は、耳に星をちりばめたおおきな月ウサギと、学校がきらいでわがままなソフィーという女の子。
ソフィーが月ウサギにつれられて月の国へでかける神秘的なお話は、全編にわたって星くずがちらばるファンタジックなページに彩られています。

「フルムーンスープ すべては、このスープからはじまった」
アラステア・グレイハム 作・絵
1992年5月20日 ブックローン出版 発行

「スプレンダイドホテル」がどこにあるのかわからないけれど、“きわめて由緒あるホテル”であるスプレンダイドホテルでは、満月の夜のディナーに名物「フルムーンスープ」が出る。
大判のこの絵本には「スプレンダイドホテル支配人」による手紙──序文と後書き──以外に文章はなく、ホテルを輪切りにして中が見られるようにした、まったくおなじ構図の絵のみで物語が進んでいきます。

ホテルは一階にロビーとレストラン、二階に客室、地下に厨房があり、どうやらこの厨房でフルムーンスープが仕込まれているようですが、屋根裏部屋には人ならざる者が住み着いていて……
とあるホテルを舞台に、人間も幽霊も動物も宇宙人も好きなように動き、めくるめく破天荒にドラマが展開されていきます。

作者のアラステア・グレイハムさんについては、邦訳された作品はこの一冊のみ(しかも絶版)で、しらべても情報が出てこないので詳細は不明ですが、おもしろい絵本をつくる方であることはたしか!
絵から想像を巡らせて、くりかえしたのしめる一冊です。

「月のしかえし」
ジョーン・エイキン 文
アラン・リー 絵
猪熊葉子 訳
1995年11月30日 株式会社徳間書店 発行

子どものころ、月の表面に浮かぶ黒いしみは餅つきをするウサギだと教えられましたが、それは日本ならではの伝承。西欧では髪の長い女性や男の姿にたとえられているそうです。夜空で毎夜かたちを変え、神秘的に輝く月はどの国の人にとってもイマジネーションの源だったのでしょう。遥か遠い昔から世界中の人がおなじ月を見上げ、それぞれに空想を巡らせたことを思うと伝承とは(その内容はべつとして)素朴でかわいらしいもののように思います。

イギリスの児童文学作家、ジョーン・エイキンはエドガー・アラン・ポーの影響を受け、ファンタジーの分野で活躍した作家ですが、彼女は本作で月に黒いしみがついた理由を「国一番のバイオリンひきになることを願う男の子が願掛けのために月の顔にむかって靴を投げた」として、西欧の伝承とかけあわせたふしぎな物語を創作しています。
絵を担当したのは「指輪物語」に挿絵をつけたことでしられるおなじくイギリス出身の画家、アラン・リー。このタッグでしか実現し得ない、幻想的な雰囲気の絵本に仕上がっていると思います。

舞台は小さな港町、主人公のセッピーは七番めの息子。“これはずっとむかし、女たちは、ショールをかけ、男たちは、頭巾をかぶり、さきのとがった靴をはき、耳がいたいときには、焼いた玉葱を耳につめてなおしていたころのお話です。”

はるか遠い昔、遠い国のエッセンスがちりばめられた優れた創作にふれることは、自分の生きている現実の世界の範囲をほんの少しだけ押し広げてくれるように、わたしには思えます。空想の取り入る余地があるということは、得がたい豊かさだと思う。
何か創作にふれたいなと思ったとき、手に取るにふさわしい一冊だと思うことをここに記しておきます。

ただいま期間・数量限定でzine「なにかよむもの」のみのご注文も受け付けています。

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