野口健がどのような人かわかる本。「さよなら、野口健」
今日は面白い本を読みました。アルピニストとして有名な野口健さんを題材とした本です。「詳しく知りたければ本を読む」というのは調べものの基本中の基本ですが、この本はその中でもど真ん中を射抜いた本でした。おそらく本人を目にするよりも、この本を読んだ方が野口健という人を知ることが出来るはずです。
著者は野口健さんを支えたマネージャーさん。店主は事前情報をなにも目にせず読み始めましたが、とにかく面白かった。野口健という男を美化せず、だからといって蹴落とすこともなく、事実を伝え、なおかつ著者の素直な目線で語られた言葉にただただ惹きつけられました。
第一章では野口さんの生い立ちが紹介されていおり、そこでグイグイと引き込まれ、第二章で野口さんの普段見せない姿を知ることとなり、最後の第三章は著者と野口さんのそれぞれの迷走や苦しみが紹介されています。月並みな表現となりますがページをめくる手が止まりませんでした。
「この本を読めば野口健がどのような人かわかります」
この本を紹介するならこの一言に集約されます。野口健はとてつもなく魅力的な人物であり、考えるよりも行動する人。しかしその逆に人間的な弱さも時折覗かせ、計算高い一面も併せ持つ。そして嘘つきでもあり、自分には嘘をつけない正直な人間でもある。さらに、実は専門家からは3.5流と酷評される登山家にも関わらず、世界的な影響力を持つアルピニストである。
つまりイメージの世界に生きる野口健という人間と、事実の世界に生きる野口健という人間は別物なのです。そして事実の世界に生きる野口健本人でさえも、イメージの世界を重視して生きている。ゆえに実力以上の力を発揮できることもありますが、理想に執着し、そのギャップに苦しむこともある。
そしてこの本を読んで登山について店主も知識を得ることとなりました。「エベレスト登頂」や「七大陸最高峰世界最年少登頂の記録」というものが思っていたほど凄いことではないということを知り驚きましたし、逆に抽象的な知識として知っている山で人が死ぬという恐怖を改めて身近に感じました。
そして最後に店主としては、現代社会に生きる我々も野口健のような能力が必要だと考えました。それはスポンサーを募って資金を集めるための行動力であり、自己のブランドを高めるための演技力であり、人の注目を集めるための計算高い自己PR力などです。
一見、栄華を極めているように見える野口健でさえ成功者とは程遠い生き方をしており、しかもそれに苦しんでいる。努力が足りない我々庶民が自分の人生を振り返って弱弱しく嘆くのはおこがましい話かもしれません。そんなことを考えたところで今日のブログを終わります。