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レティシア書房店長日誌

バス・ドゥヴォス監督「ゴースト・トロピック」
 
 
ベルギーの大都会ブリュッセルで、大きなビルの清掃婦をしているハディージャは、仕事に疲れて帰路の最終電車で眠ってしまい、終点まで行ってしまう。タクシーで帰ろうにも、手持ちのお金がない。仕方なく、彼女は家まで歩くことを決める。

 映画は、そんな彼女の一晩を描きます。特にドラマチックな事件や、夜の都会の危機が迫るわけではありませんが、予期せぬ人たちとの出会いなどを通して、小さな旅路が、遠回りになってゆきます。
 村上春樹だったか、吉田篤弘だったか、安西水丸だったか、それとも片岡義男だったかの小説で、「私は一晩歩くことにする」という主人公が大都会の夜をさまよう短編小説を読んだ記憶がありますが、そんな世界がこの映画にはありました。
 観ている最中に、あれ、どこかで感じた何か懐かしい感覚、気分が出てきました。大学時代、8mm映画を作るサークルにいた時に、撮影していた映画の雰囲気なのです。彼女の歩く道を照らす街灯、遠くのビルやマンションについている照明器具の光、あるいはポツンと開いている食料品の店等々が印象的に切り取られています。人々の生活の温もりのような、人生の哀愁のようなものがそこにありました。
 私も、帰宅のサラリーマンで満員の阪急電車や、淀川にかかる橋の向こうに沈む太陽、電車のヘッドライトなどで構成された映画を作ったことを思い出しました。確か、5分ぐらいの作品でしたが、有名なフォークシンガーの曲を使ったMTVみたいなものでした。

 2014年に長編映画第1作を発表して、ヨーロッパの映画祭で注目を浴びるベルギーのバス・ドゥヴォスの3作目にあたる本作は、昔ながらのオーソドックスな16フィルムで、ブリュッセルの夜の姿を淡い色彩感覚で描き出し、そこで生きる人たちの物語を浮かび上がらせます。ただ、ラストシーンの意味は何だったのでしょうか?あのトロピカルな風景が映画のタイトル「ゴーストトロピック」を象徴しているのでしょうか?観た方、どなたか教えてください。


レティシア書房ギャラリー案内

3/13(水)〜3/24(日)北岡広子銅版画展
3/27(水)~4/7(日)tataguti作品展「手描友禅と微生物」
4/10(水)〜4/21(日)下森きよみ 絵ことば 「やまもみどりか」展

⭐️入荷ご案内モノ・ホーミー「貝がら千話7」(2100円)
平川克美「ひとが詩人になるとき」(2090円)
石川美子「山と言葉のあいだ」(2860円)
文雲てん「Lamplight poem」(1800円)
「雑居雑感vol1~3」(各1000円)
「NEKKO issue3働く」(1200円)
ジョンとポール「いいなアメリカ」(1430円)
坂巻弓華「寓話集」(2420円)
「コトノネvol49/職場はもっと自由になれる」(1100円)
「410視点の見本帳」創刊号(2500円)
_RITA MAGAZINE「テクノロジーに利他はあるのか?」(2640円)
福島聡「明日、ぼくは店の棚からヘイト本を外せるだろうか」(3300円)
飯沢耕太郎「トリロジー」(2420円)
北田博充編「本屋のミライとカタチ」(1870円)
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