走る本屋さん高久書店

本屋の無い町の子どもたちを中心に、本を届ける活動をしています。 地方でも常に立っている…

走る本屋さん高久書店

本屋の無い町の子どもたちを中心に、本を届ける活動をしています。 地方でも常に立っていることの出来る本屋作りを目指して、日々の挑戦を綴ってみようと思います。 令和2年2月に、街の本屋を静岡県掛川市に開店しました。

最近の記事

田舎で~本屋営業日記R5.10.5

「うわぁぁ、ここベーゴマ売ってる!」と店内で一人の少年が歓喜した。 レジに持って来て、「200円安っ、2つ下さい」と言った。 今どき、ベーゴマでこんなに喜ぶ子どもを見たことが無いし、正直に言うとベーゴマが売れたのは1年ぶりだった・・・。 ちょっとだけ高久書店の読書部屋には、昭和懐かしい玩具や駄菓子を置いている。 駄菓子はさておき、なぜ、静岡県で最も小スペースの書店に昭和玩具を置いているかというと、それはたぶん私の記憶の中にある「町の本屋の原風景」がそうだったからに他ならな

    • 田舎で~本屋営業日記R5.9.27

      今朝、X(旧Twitter)でこんな投稿をした。 「フォロワーの皆さま感謝です。9,000人(涙)13年間こつこつ本と本屋の投稿をしてきました。投稿を見て来てくれるお客様がいかに多いか身に沁みています。静岡で最も小さな10坪弱の新刊書店がやってこれたのも、一つはSNSのお陰です。ボールを投げ続けます。今後とも宜しくお願い致します。」 私がTwitter(SNS)を始めたのは、2010年5月のことになる。 当時Twitterを始める書店員が全国には結構いて、横断的な情報交換や

      • 田舎で~本屋営業日記R5.6.15

        町の本屋に転身して3年半、あっという間の時が過ぎていく。元気でやってます。久しぶりのnote投稿は、本屋における税制改革はどんな影響が出るのか雑感を書いてみた。 インボイスという言葉をご存じだろうか? 今年10月からの導入が決まっており、一般消費者は直接的な影響はないものの、事業者は大きな影響が出る可能性もある消費税制度である。 3月のインボイス登録申請から2カ月あまり、名古屋国税局より「適格請求書発行事業者」登録完了の通知が届いた。 つまり、当店はインボイス発行事業者に

        • 田舎で~本屋営業日記R4.11.3

          2022年11月3日(木)高久書店をオープンしてちょうど1000日を迎えた。 ひとえに当店をご愛顧下さる皆さまのお陰と感謝を申し上げたい。 3年ほど前、書店企業・会社員としての書店員を辞め、敢えて地方で小さな本屋を営もうとしたとき、業界周辺で『無謀だよ』『失敗するよ』と囁く声も聞こえてきた。 それは近年の書店事情を鑑みれば、私自身も当然のことと捉えていたし、それでも持続可能な町の本屋像への挑戦(どうしたら町で本屋を続けられるのか?)は、やはりそこに身を投じてみなければ分か

        田舎で~本屋営業日記R5.10.5

          田舎で~本屋営業日記 R4.2.19

          小さな本屋を始めて2年が過ぎた。 改めて『私は本屋なんだな』と、今更ながら実感している。 感覚としては、本屋≒(ニアイコール)書店員といったところだろうか。 公私ともに、生き方としての「本屋道」を歩ませてもらっている。 個人書店を開いてから、お客様(読者)の要望はオールタイム承るようになった。企業書店員の頃なら、○○書店という店舗に向いていたお客様の視線が、営業時間などは関係なく、直接、私に向けられることが増えたということなのだろう。 電話やFAX、メールは言うまでもなく、

          田舎で~本屋営業日記 R4.2.19

          田舎で~本屋営業日記 R4.2.6

          街の本屋を始めて、丸二年を迎える。時の経過表現として「一寸の光陰」とはよく言ったものだが、本当に、開業したのがつい昨日のことのように感じてしまう。まだ、何もやっていないし、やれていない、これからというのが実感である。 悪い時に始めたものだねと、慰めや励ましの言葉も頂いたように、開店直後からのコロナ禍が、2年も経つ、今なお続いているなどとは想像だにしていなかった。コロナが終わったらああしよう、こうしよう・・・そんな望みを持ちながらも、今できる一所懸命を積み上げた2年間だったと

          田舎で~本屋営業日記 R4.2.6

          田舎で~本屋営業日記 R4.1.14

          今日は日記を書かずに帰ろうと思っていたけれど、受験生たちを心から応援したい気持ちになる日だった。 というのも昼過ぎに、高校3年の男子生徒たちが本屋を訪れて、「挨拶に来ました。明日の共通テスト頑張ってきます。いつも、居させてくれて有難う御座います。」と伝えてきた。 あまりの礼儀正しさに呆気にとられてしまった。 私の本屋は、高等学校のすぐ近くにある所為か、下校時に立ち寄ってくれる高校生も結構いる。 店の奥には読書部屋があり、狭いけれど昭和古民家の屋根裏二階は、子どもたちが自

          田舎で~本屋営業日記 R4.1.14

          田舎で~本屋営業日記 R4.1.13

          「僕のことを覚えているんですか?」驚いたように青年は聞き返してきた。 「もちろんです。」 ひと月ほど前、筒井康隆の著書でお勧めを尋ねてきた彼は、私が紹介した本の中から「旅のラゴス」(新潮文庫)を購入して帰った。 「あの本、凄くよかったです。」と言いながら、二度目の来店となった今日、身の上などをポツリポツリと話してくれた。16歳であるということ。杜氏を目指し、岡山から単身この地にやって来たこと。そして、本が好きであるということ・・・。 杜氏になれたら、作ってみたい目標の酒を

          田舎で~本屋営業日記 R4.1.13

          田舎で~本屋営業日記 R4.1.12

          本屋を開店する前から、2年ほど使ってきた店のパソコンに不調が表れたのは昨年11月のことだった。自分で改善できないものかと、何度か試行錯誤をしたものの無理と判断し、サポート修理に出すことにした。 街の小さな本屋とはいえ、今の本屋を営む上でパソコン(タブレット)、或いはネット環境の整備は必要不可欠になっている。企業書店員時代もそうだったが、パソコン一つ壊れれば滞る仕事は山と積まれていくし、なにより、それまでのサービスをお客様に提供できなくなるのはとても痛いことだった。 自分の

          田舎で~本屋営業日記 R4.1.12

          田舎で~本屋営業日記 R4.1.11

          ずいぶん長いことnoteを放置してしまい、少し反省をしている。最後の更新が21年4月とあるから、実に8か月ぶりに記事を書いている。 言い訳がましいが、一人本屋の日々は何気に忙しくて、ご縁が広がれば広がるほどにやりたいことは増え、その一方で時間は足りなくなっていく。 掛川の地に街の本屋(高久書店)を開店して、ふと我に返れば、間もなく2年の時が経とうとしている。時の流れの早さに、ただ驚くばかりである。 開店直後のコロナ禍で、平常とはなんぞや?といった具合に始まった日々は、店舗に

          田舎で~本屋営業日記 R4.1.11

          田舎で~本屋営業日記⑨

          田舎で~本屋営業日記⑨ 昨年の今ごろは、全国的な緊急事態宣言下で、掛川の町は閑散としていた。 幼稚園や各学校も休園休校だったから、当然のこととして子どもたちの声は こだま しない。 レジに座り、いつ来るかも分からないお客様を何十分も何時間も待ち続ける日々を送っていた。 休校で、書店が賑わってるらしい。コロナ需要で本が売れているらしい。そんなニュースも飛び込んで来る。 不安を通り越して、諦めのような心境も沸々と湧いてくるのだった。 そんな時でも、購入が目的ではなくても、理由

          田舎で~本屋営業日記⑨

          田舎で~本屋営業日記⑧

          お陰様で、なんとか開店一周年を迎えることが出来た。 偏に、ご愛顧下さった皆さま、応援して下さった皆さま全てに感謝を申し上げたい。 振り返れば、開店直後に発生したコロナ禍緊急事態宣言下での船出だった。 計画していたイベントや、走る本屋さんの活動はことごとく中止となり、正直なことろ途方に暮れる営業スタートであった。 人生とは、ままならないものである。 それでもこの一年、町の本屋として、自身が想像できうる限りの良かれを重ね、試行錯誤を重ね、一人一人のお客様(読者)を大切にする

          田舎で~本屋営業日記⑧

          田舎で~本屋営業日記⑦

          早いもので、固定の店舗を始めて10カ月が過ぎようとしている。 決して劇的なことは起こらないけれど、町の本屋としてやるべきことをコツコツ積み上げる日々を送っている。 先日、そんな「走る本屋さんの10カ月」を静岡放送(SBSテレビ)が取材し、放送してくれた。最近の高久書店の様子は確かにこんな感じなのだが、YouTubeで視聴ができるので、ご興味がある方はご覧頂きたい。 https://www.youtube.com/watch?v=WkJeXdZqSLA この一年を振り返る

          田舎で~本屋営業日記⑦

          田舎で~本屋営業日記⑥

          先日、静岡で最大の書店が閉店した。 世の栄枯盛衰と諸行無常、そして一抹の寂しさを感じている。 もともと私は、その書店グループの一員であった。フランチャイズの書店員として5年目を迎えた年に、静岡駅北口に旧長崎屋のビルに入店する形で1000坪という巨大な書店が誕生することとなった。 当時、菊川市で150坪の店を任されていた私に、直営本部から(軌道に乗るまで間)力を貸して欲しいと、逆出向の形で声がかかったのはその時のことだった。 前例のない召喚には驚いたけれど、一書店員として、

          田舎で~本屋営業日記⑥

          田舎で~本屋営業日記⑤

          走る本屋さん高久書店の固定店をオープンして3カ月が過ぎ、私の中で、これまでの感覚や書店員としての在り方が大きく変わりつつある。 オープンした2月、たしかにそのお爺ちゃんは毎週のようにお店に足を運んでは、本との出会いや、私との語らいを楽しんでくれていた。 ところが3月になると、お爺ちゃんはぷっつりと姿を見せなくなった。 心配とともに、何か不快なことをしてしまったのだろうか・・・自身の対応を顧みていた。 ある日、公衆電話から一本の電話があって「入院してしまったので、残念だ

          田舎で~本屋営業日記⑤

          田舎で~本屋営業日記④

          「悪い時に開業したもんだねぇ」 そんな風に声をかけてくれるお客様が何人もおられました。 勿論、気遣いからの励ましのお言葉です。 「本当にそうですねぇ」と照れ笑いで答え乍ら、さほど気にしていない私がいたりします。 (お客様の善意で寄せられた軒下無料古本) それは、私の書店員人生は決して順風でなかった事に起因します。酸いも甘いもあざなえる縄のごとしと思っているのです。 会社主導で出店した初管理者としての店は当初から売上が厳しく、複数社員を予定された配置は初年度から一人きりの

          田舎で~本屋営業日記④