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とるにたらないこと2022/01/16

その日は朝早くから幼なじみの裕介仮称と筋肉トレーニングをし、西友に寄ってペンネを買って自宅へと昼前に戻った。

 僕のミッションは2つあった。
・昼ごはんを作ること
・妻のシモーヌ仮称大佐に村上春樹の羊をめぐる冒険を音読すること

特に二つ目のミッションは筋力と声帯がキーワードとなる。筋力というのは、主に上腕二頭筋と首から肩甲骨あたりだ。以前、クララとお日さま、騎士団長殺しを読み聞かせした際、僕は僕の筋力のなさに思い知らされている。
 だから今回はストレッチ代わりに早朝、入念なトレーニングを行い、その日のミッションを円滑に進める準備に余念がなかった。
 そして、何よりも、十分な栄養を身体の隅々まで行き渡らせておく必要もある。

 そのため僕はその栄養を補うために、昼、牛挽肉のニンニクの効いたスパイシーなペンネ・アラビアータを作ることにしたのだ。

 ニンニク、唐辛子、マッシュルーム、エリンギ、舞茸をかなり適当にスライスする。

 バター少量でニンニクと唐辛子を先にフライパンで軽く炒め、そのあとにきのこ類を手早く炒める。

そこへ33匹の牛たちの中で星の紋章、少し詳しくいうと、射手座εと獅子座なのだが、を持つ牛の挽肉を混ぜる。

ペンネをバリ硬に、たっぷりのお湯で塩茹でして、星の紋章の挽肉入りソースへ投入だ。最後の飾り付けとして、僕が育て上げたバジルを添えれば完成だ。

「シモーヌちゃん、さっき俺が置いといたバジルどこ?」

僕は一階のキッチンから二階にいるであろう我がボスにバジルの在処を叫び尋ねた。

僕のすぐ隣で遊ぶ娘のリサ仮称少尉が目でこう言った。
「ママは、この時間いつも逆立ちしてるから、人と話せないと思う」

仕方なく、僕はリサ少尉をリビングに移動させ、二階へ行き、シモーヌ大佐のいるはずの寝室のドアをノックした。

「ご飯できた?」
運良く、大佐は逆立ちを終えたところだったらしく、人と話すことができた。
「俺置いといたバジル知らん?さっき摘んできたやつ」
「わからないな」
僕は少しだけ自分を恥じた。僕は大佐がバジルをつまみ食いしたと目論んでいたのだった。
「まあ、ええわ、できたから下りてきて」
ペンネ・アラビアータを2人分皿に盛りつけ、辛いものがまだ食べられない少尉用に作ったトマトソースペンネを小さな器によそった。僕はリビングでバナナとスパーリング中の少尉に視線を変えた。
少尉はスパーリングしながら緑の何かを口にしている。

僕はそっと少尉の口からその緑のものを抜き取り、代わりにラッパのおもちゃを咥えさせた。

緑を大佐の皿に盛りつけ、完了だ。

こうして無事にひとつ目のミッションをこなし、午後からの声帯トレーニングに向けて、僕たちはペンネ・アラビアータを平らげたのだった。

#散文
#お父さんの昼ごはん
#男の料理

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