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セロトニン

著者 ミシェル・ウェルベック
訳 関口 涼子
出版 河出書房新社 2019/09/20 初版

代表作『素粒子』(1998年)や『地図の領土』(2010年ゴンクール賞)で現代ヨーロッパ文学を代表する作家、ミシェル・ウェルベック。
2018年にはかなり年下の中国系女性と結婚し話題にもなった。

現代社会における自由と、資本主義的であったり刹那的な欲望と現実の間で引き裂かれる人間の矛盾を描き続けるウェルベックは、僕が今年のノーベル賞に少し期待した作家でもある。

少し前に読了した彼の最近の作品である本書『セロトニン』では、身近な人間関係〜社会に対して無関心でいた為に自分の身にそれらが『孤立感』として返ってきたブルジョワジーな中年男の憂鬱が描かれている。

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あらすじ
愛の不在に真っ向から立ち向かったり耐えて自身を充実させるというのではなく、自暴自棄に全てからの孤立へと向かう主人公フロラン。
恋人である日本人女性ユズは資本主義と愛の不在の代名詞的な女性であった。
フロランはユズ含めて全て関わってきた人間の現実を間接的にしか知ろうとしない。
🍀

執拗にフロランはセックスにこだわり続けるが、それは、彼が人間と人間との交わり、温もりを渇望しているかのようにも見える。
無関心という個人の自由に身を委ねた結果、他者との交わりがない現代社会の構造をよく表している。

エーリッヒ・フロムの言う通り、人間の愛の形は如実に社会構造を反映しているなと思いながら感想を書いていた。

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