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髪を切り、花を編み、なんでも作る。「職業わたし」な生き方、人をつなぐものづくり【ZINE『9 -cue-』vol.2 本文サンプル】

2024/5/19 文学フリマ東京38 出展作品】
美容師、花飾り作家、旅人、肩書きほか多数……。「職業わたし」吉田篤人。
作れそうなものはなんでも自作。かかわる人をつなげ、巻き込み、好転させる、パワースポットのような存在である。
多分野の活動それぞれの切り口から彼を紐解き、カメラマン・Camerinaの写真とともに一冊のZINEへ収録。

本記事では、ZINE『9 -cue-』vol.2の一部を抜粋し、お試し読みとして掲載します。
ピックアップしたのは、花材を用いたヘアセットやフラワーアートの活動「Hanakaza」にまつわるお話です。

『9 -cue-』vol.2 書影

*『9 -cue-』(キュー)とは?
アーティストインタビューZINE。本note運営が制作しています。


【以下、本誌より抜粋】

──私たちの出会いは、共通の知人・hikariちゃん(*)によるフラワーブーケのワークショップでしたね。吉田さんの興味の幅には驚くばかりです。お花の道に目覚めたきっかけはなんですか?

(*)hikari
花屋『body』名義で活動。ポップアップショップやWSを随時開催している。『9 -cue-』vol.0でも紹介。
Instagram

お花は以前から好きで、通っているお花屋さんもありました。ある時、人伝に聞いたエピソードに衝撃を受けて、そこからお花の作品も制作し始めた感じです。

──衝撃を受けたエピソード、とは。

とあるお花屋さんに来たお客様が、「ハレの日のヘアセットで生花を取り入れたい」と相談を持ちかけたそうで。そのお店の方は、できる範囲の提案をしつつも、「ヘアセットのことはわからないので、サロンで相談してみてください」と回答したとのこと。そのお客様は、勧め通り今度はヘアサロンに行って同じ相談をします。ところが、「それはお花屋さんに聞いてください」と言われ、たらい回しに遭ってしまったのです。
この話を聞いて、私の気持ちは大きく揺さぶられました。お花の髪飾りの依頼先にサロンが挙がりづらい現状へのやるせなさ、生花のヘアセットに必要な技術をすでに有していたのに積極的な働きかけをしてこなかった自分自身への憤り。
「同じような場面で残念な思いをした方がきっとたくさんいる。一人でも多くの方を喜ばせたい」と、花好きの美容師として使命感に駆られました。そこから生花を用いたヘアセットの研究が始まり、現在のフラワーアートの活動「Hanakaza」に繋がります。

「Hanakaza」作品(本人撮影)

──その時は怒りに突き動かされて、ということですが、吉田さんの制作の原動力はなんでしょうか。負の感情も多いですか?

始まりとしては負の感情もありますが、それだけでものづくりを行うと、仕上がりが濁る気がします。何よりも、私のモチベーションは「誰かのために」ということだと思います。自分にしか関係のないことではなく、目の前の相手のために何ができるかを真剣に考えるから、よいものが生まれる。誰に向けて・どんなシーンに合わせて作るのか決まっているほうが、イメージのとっかかりにもなりやすいですし。

──今日もお花を飾られていますね。「atsutoyoshida」はいつお邪魔しても植物があって心が和みます。

そうですね。今日はユーカリとアルストロメリア。ちょっと花飾りのデモンストレーションをしてみましょうか。

オンラインのインタビュー中、ヘアシザーで花の髪飾りを作り始める。

──突然ハサミが出てきて驚きました。そして手際がよすぎる……!あっという間に飾りができてしまいました。

はい。これを、わりと高い位置に正面からも見やすいように着けると南国旅行のような雰囲気になり、耳の後ろから下の方に着けると品もありつつ色っぽい印象になります。

実際にヘアアレンジに使う際は、花材が一日元気に保たれるよう、保水方法も工夫しているそう。

──たしかに!実際に見るとよくわかりました。手を動かしながら形を決めてくのですか?

それもありますが、市場で花材を目にした時から、花飾りが頭の中で出来上がりますね。「これとこれ組み合わせればできるじゃん」みたいな感じで。ブーケやリース、アレンジメントも積極的に研究していますが、「餅は餅屋」的な気持ちもあるのです。

──吉田さんがお花屋さんをリスペクトするように、生花を用いたヘアアレンジは美容師に相談してほしいというお花屋さんの気持ちもわかります。ご自身の本領以外のことも理解するからこそ、美容師として誰かの役に立てるのですね。

イベントでの作品販売の様子(本人撮影)

【featuring artist】
Atsuto Yoshida 吉田 篤人
美容師『atsutoyoshida』店主、花飾職人『Hanakaza』企画
プライベートサロンを営みながら、あらゆる創作活動を精力的に行う。2023年、個展『なぞかわいいものたち、』開催。『Hanakaza』の屋号でポップアップショップやWS等も行う。屋外で花材と戯れる『お花遊びの会』を開き、場作りも研究中。好きな音楽はEDMで、制作作業は踊りながら。星読み修行中。おいしいものに縁がある食いしん坊の相アリ。
Instagram @atsutoyoshida_

【photography】
Camerina 小林 利那
写真家、映像作家
『きゃめりな』の愛称でダンサーのアーティスト写真や宣材写真を中心に撮影。自身もコンテンポラリーダンサーとして活動しているため、被写体から溢れる躍動感やエネルギーをカメラに収めることを得意とする。
Works
Instagram @camerina1016

【edit】
sakiho node / 書肆ネリネ
ライター/デザイナー、ZINE『9 -cue-』企画・編集
「自分で本を作りたい」という想いで本誌を企画。
会社員のかたわら、印刷物やロゴなど各種デザイン制作をおこなう。『書肆ネリネ』名義で文筆活動も開始。好きなものは読書とダンス。
宣伝会議編集・ライター養成講座第48期生。
X @m23d12
Instagram @books_nerine


文学フリマ東京38 出展情報】
出店名:書肆ネリネ
場所:第一展示場P-25

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