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【#04 起立 気をつけ 今から本屋を始めます】本屋になったら給食食べられないのは寂しいかも
2024.6.6(木)
数ヶ月前に悲しい事故が起きて以来、うずらの卵が給食に登場するたびに放送が入る。
「ピンポンパンポン──今日の給食にはうずらの卵が入っています。よく噛んで食べましょう───」
事故が起きたばかりの頃は、朝一番に
「うずらの卵が入っているからよく噛んで食べて」と確認した。食べる直前にも
「うずらの卵が入っているからよく噛んで食べて」と伝えた。さらに、食事中にはスピーカーからも
「うずらの卵が入っているからよく噛んで食べて」というアナウンスが流れ、ごちそうさまを言う際には担任が
「うずらの卵が入っていましたがよく噛んで食べましたか」と締めくくった。結果、多くの子どもがうずらの卵を残すという本当に残念な現象が起きた。
今日の給食にも、うずらの卵が入っていた。
「ピンポンパンポン────」この放送も、今日で4回目くらいだろうか。放送をきちんと子どもに聞かせるのも私の仕事のひとつだ。すかさず「静かに」と叫ぶ。すぐに子どもたちは静まり返った。
「今日の給食にはうずらの卵が入っています──」放送を担当する四十を越えた男性教諭の声が、やけにはずんで、やけに早口に聞こえた。事故から4ヶ月を経過してもいまだにうずらの卵だけを危険食物として扱うこの放送。いったい、誰に向かって流れているのだろう。
「よく噛んで食べましょう────」静かにしているのに、誰も聞いていないように見える、不思議な風景が広がっていた。うずらの卵を何度も咀嚼する音と食器の音だけが響きわたる静かな教室を、ここにはいない誰かを意識した、子供向けを装った大人の言葉がビュンと通り抜けていった。
既にスピーカーは「Bling-Bang-Bang-Born」を流している。ご機嫌になった子どもたちを見ながら、うずらの卵をよく噛んで飲み込んだ。白身に弾力がある、とても美味しいうずらの卵だった。
つづく
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