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第167回 直木賞・芥川賞の候補作が発表✨女性作家が多いと話題です

こんにちは。

日本文学振興会は6月17日、第167回芥川賞と直木賞の候補作を発表しました。あわせて10名中9名が女性作家による作品と女性作家の活躍ぶりが話題となっています。

・芥川賞→創設以来初のすべて女性作家の作品
・直木賞→5人中 4人が女性作家の作品
・選考会は7月20日、東京・築地の料亭「新喜楽」で

「女性作家つよい!」「また話題づくりかな(´_ゝ`)」「アファーマティブアクション?」「小説は性別関係のない実力の世界では?(´・ω・`)」などと多様な意見が聞かれます。皆さんはどう感じましたか?

また、一部で「性別を公開していない作家さんが女性と断定されてしまった問題」が発生してしまっているようで、話題を事欠かない候補作の発表となりました。

それでは、各賞候補作の詳細をチェック!(敬称略)

第167回 芥川龍之介賞 候補作

「家庭用安心坑夫」と聞くと、どうしてもANZEN漫才のみやぞんさんの顔を思い浮かべてしまうのは僕だけでしょうか。作品とぜんぜん関係なくて申し訳ございません。

小砂川チト「家庭用安心坑夫」(「群像」6月号

小砂川(こさがわ)チト先生は1990年岩手県生まれ。盛岡市で中学生活を送り高校進学に伴い上京。慶応義塾大学文学部を卒業後、慶応大大学院の社会学研究科心理学専攻修了。

2022年6月には本作「家庭用安心坑夫」で新人作家の登竜門とされる第65回 群像新人文学賞(講談社主催)を受賞しています!

日本橋三越の柱に、幼いころ実家に貼ったシールがあるのを見つけたところから物語は始まる。狂気と現実世界が互いに浸食し合い、新人らしからぬ圧倒的筆致とスピード感で我々を思わぬところへ運んでいく。
第65回群像新人文学賞受賞作(選評より)
語り手、そして読む人の立つ足下が揺るがされる――柴崎友香
絶望的成長小説である――町田康
最も文章の水準、小説技術の水準の高い作品だった――松浦理英子


鈴木涼美「ギフテッド」(「文学界」6月号

鈴木涼美(すずきすずみ)先生は元日本経済新聞社の記者で、退社後は元AV女優という異色の経歴。慶應義塾大学環境情報学部卒業、東京大学大学院学際情報学府の修士課程を修了。

2014年の著書「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」は「ミッドナイトスワン」の内田英治監督により映画化されました。

↓古舘伊知郎さんのインタビューを受ける鈴木涼美先生。古舘さんを感動させた深い洞察をどうぞ。

芥川賞にノミネートされた「ギフテッド」は文學界 2022年6月号に掲載されています。

単行本は7月12日に出版予定。(予約受付中)

第167回芥川賞候補作にして、『「AV女優」の社会学』『体を売ったらサヨウナラ』などで知られる鈴木涼美の、衝撃的なデビュー中編。
歓楽街の片隅のビルに暮らすホステスの「私」は、重い病に侵された母を引き取り看病し始める。母はシングルのまま「私」を産み育てるかたわら数冊の詩集を出すが、成功を収めることはなかった。濃厚な死の匂いの立ち込める中、「私」の脳裏をよぎるのは、少し前に自ら命を絶った女友達のことだった――「夜の街」の住人たちの圧倒的なリアリティ。そして限りなく端正な文章。新世代の日本文学が誕生した。

引用:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163915722


高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」(「群像」1月号)

高瀬隼子先生は1988年愛媛県新居浜市生まれ。立命館大学部文学部卒業。2019年「犬のかたちをしているもの」で第43回すばる文学賞を受賞しデビュー。著書に「犬のかたちをしているもの」「水たまりで息をする」(ともに集英社)。

「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。ままならない人間関係を、食べものを通して描く傑作です。

引用:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000363638


年森瑛「N/A」(「文学界」5月号)

選考会で異例の満場一致!第127回文學界新人賞受賞作
松井まどか、高校2年生。うみちゃんと付き合って3か月。体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。――「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。優しさと気遣いの定型句に苛立ち、肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビュー作。
文學界新人賞・全選考委員激賞!!
ここには誰のおすみつきももらえない、肉体から絞り出した言葉の生々しい手触りがある。――青山七恵
安易なマイノリティ表現への違和感の表明であり、同時にそのような表明の安易さへの批判でもあるという点で、まさにいま求められる文学なのではないか。――東浩紀
本作には紛うことなき現代を生きる人間が、そして現代がぶち当たっている壁が克明に描かれている。——金原ひとみ
世界が傷つくとみなす事項に対する、最初からの「傷ついてなさ」が、ぐっとくるのだ。――長嶋有
満場一致の受賞となり、今後の活躍を楽しみにしている。――中村文則
主人公にとって、また小説にとって、とても重要なもの、安易に言語化できないものたちが、物語の力によって、この小説の中に確かに存在している。――村田沙耶香

引用:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163915623


山下紘加「あくてえ」(「文芸」夏号)

山下紘加(やましたひろか)先生は1994年東京都生まれ。2015年に「ドール」で第52回文藝賞を受賞しデビュー。著書に「クロス」「エラー」など。

タイトルのあくてえは「悪態」とか「悪口」の甲州弁。作品の冒頭で説明されています。いまにも悪態をつきそうな少女のイラストに興味津々です。

あたしの本当の人生はこれから始まる。小説家志望のゆめは90歳の憎たらしいばばあと母親と3人暮らし。ままならなさを悪態に変え奮い立つ、19歳のヘヴィな日常。第167回芥川賞候補作。

引用:https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309030630/


第167回 直木三十五賞 候補作

直木賞 候補作はこちら!


河崎秋子「絞め殺しの樹」(小学館)

あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ

北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。しかし、吉岡家出入りの薬売りに見込まれて、札幌の薬問屋で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、そして長女の幼すぎる死。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの人生の道のりを辿ろうとする。数々の文学賞に輝いた俊英が圧倒的筆力で贈る、北の女の一代記。

「なんで、死んだんですか。母は。癌とはこの間、聞きましたが、どこの癌だったんですか」
今まで疑問にも思わなかったことが、端的に口をついた。聞いてもどうしようもないことなのに、知りたいという欲が泡のように浮かんでしまった。
「乳癌だったの。発見が遅くて、切除しても間に合わなくてね。ミサエさん、ぎりぎりまで保健婦として仕事して、ぎりぎりまで、普段通りの生活を送りながらあれこれ片付けて、病院に入ってからはすぐ。あの人らしかった」(本文より)

【編集担当からのおすすめ情報】
絡み付いてね。栄養を奪いながら、芯にある木を締め付けていく。最後には締め付けて締め付けて、元の木を殺してしまう。その頃には、芯となる木がなくても蔓が自立するほどに太くなっているから、芯が枯れて朽ち果てて、中心に空洞ができるの。それが菩提樹。別名をシメゴロシノキ。

引用:https://amzn.to/3bcbZch


窪美澄「夜に星を放つ」(文芸春秋)

かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。

コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。


呉勝浩「爆弾」(講談社)

東京、炎上。正義は、守れるのか。
些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。警察は爆発を止めることができるのか。爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。

永井紗耶子「女人入眼」(中央公論新社)

大河ドラマの影響もあって、永井紗耶子先生の「女人入眼」(中央公論新社)が気になる方も多いのではないでしょうか。

鎌倉幕府最大の失策と呼ばれる謎多き事件 大姫入内。背後には政治の実権をめぐる女たちの戦いとわかり合えない母娘の物語があった。 「商う狼」で新田次郎賞。注目の作家が紡ぐ女性たちの物語。


深緑野分「スタッフロール」(文芸春秋)

戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。脚光を浴びながら、自身の才能を信じ切れず葛藤する、現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアン。CGの嵐が吹き荒れるなか、映画に魅せられた2人の魂が、時を越えて共鳴する。
特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。その愛と真実の物語。


それでは皆さん、7月20日の選考会をお楽しみに!

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