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NJPWアンプラグド

無観客で開催された「NEW JAPAN CUP 2020 USA」の一回戦です。見る前は「KENTAとカール・フレドリックスの試合だけでいいや」と思っていましたが、全て面白かったです。柴田選手も言っていましたが、きっちりとしたレスリングが展開されていたのです。

ここでいうレスリングとは、グラウンドの攻防や互いの関節を極め合うことに限りません。安易な反則や客を沸かせるためだけの派手な動きに頼らず、各々の選手が各々の肉体のみを使って勝利を目指す闘いです。一点集中などの自分のペースに持ち込むための緻密な組み立てを含め、磨き上げられた技術と鍛え上げられたパワーを感じ取れる重厚なプロレスを楽しめました。

特に普段はタッグで活動しているタマ・トンガとタンガ・ロアが素晴らしかったです。無観客というのが大きかったのでしょう。バレットクラブだから、ヒールだから、ファンに嫌われないといけないから、などの演出上の縛りから解き放たれた彼らの本質的なレスリングスキルには目を見張るものがありました。まるでMTVアンプラグドです。無観客試合は音響システムや演出に頼らないアコースティックギターの弾き語りライブに似ています。そこで「こんなにギター上手いんだ」と評価を上げる人もいれば、化けの皮がはがれる人もいるのです。

正直「これを日本でやられたら、バレットクラブにEVILの居場所なくなるぞ」と思いました。もうテーブルクラッシュとか椅子とか急所攻撃とか飽きました。頑固に貫くか柔軟に考えを変えるかはケース・バイ・ケースですが、EVILも神宮ではクリーン・ファイトで強さを見せないとまずいでしょう。そもそも凶器や乱入だけがファンに嫌われる方法ではありません。憎らしいほど強い、頼むから負けてくれというヒールもいるのです。IWGPを連続防衛していた頃のオカダ・カズチカ選手は(立ち位置こそ正統派でしたが)、まさにそういう存在でした。

「人気があるから正義」でも「勝ったから正義」でもなく「強さこそ正義」。それが新日本プロレスのストロングスタイルだと思っています。少なくともオカダ選手はすでにその方向へ舵を切っています。だからフィニッシュを絞め技であるコブラクラッチにしたのです。レフェリーに見逃してもらって急所を蹴って勝っても強さの証明にはなりません。むしろ逆です。よく「プロレスは強い者が勝つんじゃない。勝った者が強いんだ」と言います。一理あります。でも「キング・オブ・スポーツ」を掲げる新日本にはそうであって欲しくない。海外とは違う、力道山から続く日本ならではのプロレスの醍醐味を新日本だけは守るべきです。勝ったという結果が出たから強いのではない。大切なのは勝ち方というプロセス。うまくいかないことが続いても諦めずに何度でも立ち上がり、自分の力で勝利をつかむ。その生き様こそが強さの証なのです。昨日のYOSHI-HASHI選手を見てもらえればわかります。本当の強さを感じました。

神宮ではEVILのアコースティックライブを堪能したいです。あとYOSHI-HASHI選手おめでとう。そしてありがとう。カッコつけない魂の叫びが胸に響きました。まさしくアンプラグド。私も私の道で闘い、必ず勝利をつかみます。何かが変わるとき、そう、ものごとが変わるのは一瞬だ!!!

作家として面白い本や文章を書くことでお返し致します。大切に使わせていただきます。感謝!!!