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クレヨン王国のこと

クレヨン王国と出会ったのは何歳だったか……。たしか小学校の3年生辺りだったと思うのですが、姉が買ってもらっていた『クレヨン王国の12ヶ月』、シリーズ一作目をまず読んだのが出会いです。

大人なのにわがままなシルバー王妃、結構しっかり者のユカちゃんのコンビが楽しくて面白くて。夜中に目を覚ましたらクレヨンが会議しているというのも子供心をくすぐる設定ですよね。とにかく大好きで何度も読み返したのを覚えています。
色々とダメな癖を持つ王妃に辟易した王様が、その癖を直さないと帰らない!と言って家出してしまうのですが、王様がいないと世界から色が無くなってしまうというとんでもない事態におちいるのです。そこで慌てて王様を探しに旅に出る王妃。たまたまクレヨンたちの会議を見てしまった縁から一緒に旅をすることになるユカ。王妃の悪い癖は12個あり、1月の町から12月の町までを旅しながら王妃は自分の悪い癖を直していくことになる、というストーリー。
王妃の癖というのが「ほしがりぐせ」「ちらかしぐせ」「おねぼう」「偏食」などなど子供なら心当たりのあることばかり。私も偏食、寝坊、意地っ張り、ちらかしぐせ辺りがぐさぐさ突き刺さりました(笑)。
でも説教臭いところは全然なくて、とっても面白い!すっかりハマってしまい、シリーズを揃えてもらい、新刊も出るたび買ってもらいました。
クレヨン王国の魅力は一作ごとに雰囲気の違った物語が楽しめることです。
『12ヶ月』はユーモアたっぷりの女の子の成長譚、『花うさぎ』はハラハラドキドキの冒険譚、長編となった『月のたまご』は壮大なラブストーリーといった風に。
私が好きなのは『クレヨン王国からきたお嫁さん』、『クレヨン王国7つの森』、『クレヨン王国のパトロール隊長』。
まず『クレヨン王国からきたお嫁さん』。

このお話は設定がすごい。なぜか殴られまくる電車に乗ってしまった亜有子と夏江子。夏江子は初めてではないらしく、亜有子は夏江子に連れられてカフェテラスクレヨン王国へ。そこでは自分の頭の中に来てくれる“およめさん”のメニューがあり、というなんだそれなお話。
ところがところが、こんなよくわからない設定にもかかわらずしっかり面白い。福永先生の頭の中を覗いてみたいぐらいです。ちなみに作中にでてくるクレープがめっちゃおいしそうです。
『クレヨン王国7つの森』は小学6年生の子供たちが嫌いなことをなくすという課題を抱えて合宿をすることになった自然観察クラブのメンバーたち7人。7つの木でできた7つの森の中でそれぞれがクレヨン王国の住人と出会い嫌いなことを無くすヒントをもらうというお話。

きもだめしオリエンテーリングという道具立ても子供心をくすぐります。姉と妹に挟まれた中間子の私は、なんとなく妹が苦手、というお姉ちゃんの話が好きでした。わかるわぁ、となりながら読んだのを覚えています。
『クレヨン王国のパトロール隊長』はこの3作の中では一番シリアスな作品です。

家族にも学校にも居場所のない孤独な少年ノブオ。彼が遊びで飛ばした帽子を追いかけて妹は交通事故にあい失明してしまったのです。妹を轢いた車の運転手も死んでしまい、深い罪悪感を持つノブオ。そのことがきっかけで父母との関係もぎくしゃくしていて、さらにはなぜかノブオを嫌う担任の右田先生の存在がさらに追い打ちをかけます。多感な年ごろの少年に向けられる大人の悪意。それは彼の心に憎しみを生み孤独へと追いやっていきます。かなり重たいテーマです。そんな彼が星座観察の夜にクレヨン王国に迷い込みパトロール隊長になるのです。そしてクレヨン王国で様々な孤独や悲しみ、怒りや争いに触れることで自らを省みるようになり周囲の人の心を思いやれるように成長していくという物語。
ノブオが迷い込むクレヨン王国は火の精と水の精が争っていて、優しくノブオの心を癒してくれるわけではないのですが、自分を犠牲にして小ブナたちを助けようとしているフナや、真っ赤に燃えながら争いを憎むワレモコウと出会うことでノブオの心に変化が生まれてくるのです。憎しみの青い筋が入ったノブオの心臓から青い筋が消える日は来るのか。涙しながら読んだ作品です。
大好きなクレヨン王国シリーズ。
結局月のたまごの8作目あたりまでは追いかけていたかな?中学に入ったころには一般書やラノベの方に関心が移ってしまい、新しいものは何作か読んでいないものもあるのですが、こうして思い出しているとまた読みたくなりますね。
 こんど実家に帰ったら引っ張り出してみようと思います!


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