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スイミング・プール

見る人に何通りもの解釈をさせるミステリアスな映画、フランソワ・オゾン監督の『スイミング・プール』。

新作の執筆が進まないイギリスの人気ミステリー作家のサラは、出版社の社長ジョンに勧められて、彼が所有する南仏の別荘で執筆をすることにします。サラはジョンにあなたも来るのかと尋ねますが、週末は娘がいるからと断られます。静かな土地と自然に囲まれ、新作に取り組むサラでしたが、そこにジョンの娘と名乗るジュリーが突然やってきます。夜な夜な違う男を連れ込むジュリーに最初は辟易したサラでしたが、彼女の奔放な魅力に注目し、ジュリーを題材にした物語を書くことにします。そしてある日殺人事件が起こり……といったあらすじ。

これまたなんとも言えない少し意地悪な女への視線を感じる作品になっています。語られ映し出される部分の外にもストーリーを置くあたりがいかにもフランス映画っぽいというか。
1回見ただけだと、「え?!」ってなってしまう結末なので、好き嫌いが別れそうな感じです。
でもやっぱり映像は綺麗だし、さんさんと明るい南仏の太陽と対照的にじっとりと暗く粘っこい視線を見せるシャーロット・ランプリングの存在感が凄いです。『愛の嵐』で見せた相手を冷淡に突き放すようなクールな視線は健在です。それでいてなおどこか動物的な臭いを漂わせる彼女独特の魅力は歳を重ねても色褪せないですね。
若さへの嫉妬と羨望、暗い欲求、そんな感情がじっとリュディヴィーヌ・サニエを見つめる視線にこもっていてじわじわとした怖さを感じさせます。またリュディヴィーヌ・サニエが美しくて挑発的で!瑞々しい若さと奔放さがほんとに眩しいぐらい。
観察される女と観察する女、混じりあう現実と虚構、知らず知らずの内に見る者もその交錯した世界に嵌まりこんで何が現実だったのか、何が虚構なのか曖昧になって不可思議な感覚に陥っていきます。
この作品もミステリではあるんですが、やはり面白さはミステリとしての部分ではなく、女の暗い欲求や感情、衝動といった所にあるように思います。年齢を重ねた女なら誰しもが少なからず感じたことがあるであろう若さへの暗い感情。それを視線一つで感じさせるランプリングの圧倒的なのしかかるような存在感が素晴らしい。かつての瑞々しさは失われているものの、十分に官能的で美しい肢体にも注目です!
ラストは謎が謎のままで、そもそもどこまでが現実でどこからが空想なのかも曖昧です。見た人がそれぞれに解釈するだけの手掛かりはちりばめられているように思えるのですが、これという正解は見えてきません。
見る人の数だけ結末がある、そんな感じの映画です。
でも、これはこういう意味があってだからこうなるの!っていう明快さを求める人にはお勧めしない映画ですね。ミステリとしては穴だらけな気もしますし。
そういうことより怖いもの見たさ的な感覚で見る方が面白いかな?
女は幾つになっても女、女って怖いって感じで見るのもいいかもしれません。

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