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デブラ・ウィンガーを探して

『グランブルー』のロザンナ・アークエットが、女優として、女として、そして妻や母という立場に関して、素直な疑問を他の女優たちにぶつけてインタビューしたドキュメンタリー、『デブラ・ウィンガーを探して』。
インタビューを受けるのは錚錚たる面々です。ジェーン・フォンダ、ロビン・ライト・ペン、ウーピー・ゴールドバーグ、エマニュエル・ベアール、メグ・ライアン、ホリー・ハンターetc…。
タイトルになっているデブラ・ウィンガーもインタビューに答えています。
デブラ・ウィンガーの引退を受けてロザンナ・アークエットの中に生まれた女優業と家庭は両立できるのか?という疑問から始まって、40代になると急に仕事が減るという映画界で女優としてどう生きるのかなどなど、たくさんの女優達が赤裸々に語っています。
う~ん、こんな華々しい世界でも働く女性の悩みは同じなのか、という印象。家庭のこと、仕事のこと、年齢を重ねるということ、容姿の変化etc…。
個人的にはウーピー・ゴールドバーグの明るい語りが好きでした。「ある日自分の尻をみていうの。このデカイのは何!」「乳が言うの。落ちる!!」大笑いしながらその通り!と膝を打ちました。もういろんな所が重力に逆らわなくなりますからね、歳とともに。若い頃は油断して多少太っても全体が張るって感じですが、30前になってくるとたる~ん、てろ~んと部分的に弛み肉が付くって感じの太り方になってきて…。ある日二の腕見て言うわけですよ、「なんだこの肉は!!」って。そんな容姿の事も含めて歳をとるってことをどう受け止めるか、女としてどう生きていくかってことを考えさせられます。
彼女達はもちろん女優だから一般のその年代からすれば綺麗だし若々しいんですが、ハリウッドではそうもいかない。「整形はすごい誘惑よ。簡単に変えられるんだもの。」という言葉はとっても重いし複雑です。だって彼女達は美しくあり続けることも“仕事”なんですもんねぇ。でも私達の魅力はそれだけじゃない、“女優として”素晴らしい仕事をしたいんだという切実な思いが伝わってきます。若くて綺麗な女優達を使い捨てて、大人が満足する映画を作らないハリウッドへの不満も語られています。
私がまだ子供を持っていないのでどうしても年齢を重ねていくという部分に注目してしまいますが、子育てという部分もなかなか興味深いです。多くの女優達が子供の為に年に1本と仕事をセーブしているし、ジェーン・フォンダは子育ての問題をお金で解決してしまい、子供と向き合ってこなかったことを後悔しています。
ロビン・ライト・ペンの言葉が印象的。「家庭は何より大切で、優先すべき事よ。けれどとてもいい仕事を断った時、後悔はしないけれど残念に思うの。後悔ではないけど、いい役を逃したという思いは何年たっても残るの。」
それって結局後悔じゃないの?なんて思う人もいるかもしれませんが、子供を優先する、という自分の選択自体には彼女は後悔してないし、家庭を持ったことも後悔していないんですよね、きっと。でも女優として、仕事をする女として、自分が捨てざるをえなかった物への思いはどうしても残ってしまうんだろうなぁ…。後悔と言うよりはジェーン・フォンダも使っていた言葉、未練の方がしっくりくるのかもしれません。
メモも取らずに見てしまったので、どの女優のエピソードか忘れてしまったんですが、とってもいい役だけどアフリカでの長期ロケで、子供のことを考えて断ろうとした時に父親に言われたという言葉はとっても重いです。
「働く女は仕事をしなきゃ。女優だからとかそういう事じゃないんだよ。女はいつだって上手くやらなきゃ。」
そうですよね。仕事をすることは自分で決めたことだし、子供を持つこともそう。そのどちらにも責任があるし、だけど自分をパンクさせない為には一人で抱え込むんじゃなくて上手に立ち回らなくちゃいけない。それは本当に難しいことだけど、でも自分のした選択だから常に向き合っていかなきゃならない。
どんな立場の女性でも悩みは同じで尽きないんだなぁ、とつくづく思います。けど彼女達はそれぞれにパワフルでとっても魅力的。
女性による女性のためのドキュメンタリー映画、という感じですね。答えは結局出てはいない気はしますが、でもその局面局面で自分にとってベストな選択をしていくことの大切さ、妥協ではなく悩むことを面倒がらずに生きていく覚悟というものを語ってくれているような気がしました。
そしてもちろん美しく魅力的に歳を重ねていくためにどう生きていくかということも。
見た後になんとなく元気になれる気がしました。


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