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チェ 28歳の革命 チェ 39歳別れの手紙

スティーブン・ソダーバーグ監督の2部作、『チェ 28歳の革命』、『チェ 39歳 別れの手紙』。この作品は公開当時、映画館で見ました。

とりあえず感想としては、素っ気ない映画という感じです。けなしているわけではなく。『28歳の革命』の方では一応本編前にゲバラってこんな人、という簡単な説明がありましたが、本編ではほとんど説明的なシーンは無く、ゲバラやキューバ、中南米の当時の状況といった予備知識無しに見たら多分死ぬほど退屈だと思います。それぐらい削ぎ落としたドキュメンタリタッチの映画でした。
ほぼゲリラ戦の様子で台詞も簡潔、ゲバラ自身が残した台詞がほとんどで、心情の吐露とかそういうのもほとんどありません。それを良しとするかどうかは受け手次第という感じでしょうか。
ただ私はDVD待ちするつもりだったのを変更して劇場で見て良かったと思います。多分一緒にその場に立ち、一緒に走り、まるで戦場カメラマンが撮ったようなカメラワークで、ゲバラ達革命の志士と共にいるかのような感覚になる映像で、これはやっぱりスクリーンで見る醍醐味かな、と思います。
映画全編を通して見ると、ソダーバーグがタイトルをゲバラにせずに親しみを込めた呼称である“チェ”にしたのがすごく効いてるな、と思います。
ソダーバーグが描きたかったのは、ゲバラがどう考えたかよりも、ゲバラがどう革命を生きたか、だったんだと思います。言葉を尽くして彼の思想を描くよりも、彼の戦いを見、そして感じることをなによりも大切にしたんじゃないでしょうか。綺麗事かもしれない、理想主義かもしれない、けれど彼の「人間を信じる」という言葉の美しさ、鮮烈さは忘れてはならないんじゃないかと思います。
人が人から奪うことに素直に憤りを感じ、人が人を支配、搾取することの無い世界を信じ作ろうとした彼の純粋さが今なお人を引き付ける彼の魅力なんでしょう。政治的な主義がどうこうでなく、自分自身が目にした状況に対して素直に憤りと疑問を感じ、そしてそれを変えるベく革命に身を投じ革命に散っていったゲバラ。彼の鮮烈さを感じれば感じるほど『別れの手紙』のボリビアでの苦戦と農民の理解を得られないことが切なくて苦しくて歯痒くて…。このあたりは『モーターサイクル・ダイアリーズ』を見ていたのでよけい感じたのかもしれません。
息苦しくなるほどのゲバラの短くも濃い戦いの日々を感じる映画でした。

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