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今週、読み終えた本 『発達「障害」でなくなる日』 『目の見えないアスリートの身体論』 『高学歴難民』 『発達障害の子どもたちは世界をどう見ているのか』 『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法』

発達障害の切実な話がいくつかあるが、診察室ではここに書いてあるようなことよりもっと多種多様かつ深刻な話も多い。
それはともかくとして、幼い子どもを残して家を出て、他の男と暮らして、また家に戻って「今は娘とはいい関係」という話があるが、これにはとてもじゃないが共感できなかった。本書を読む限り、その行動は障害とは関係なさそうだ。それに、たとえ障害が要因の一つであったとしても、それが免罪符にはならないこともある、というのも大切な考えじゃないかな。


わりとあっさり読み終えるが、内容は面白かった。盲目アスリートの世界を知ることで得られる新たな視点、という心地よさ。


私自身、超就職氷河期の1999年に九大を卒業し、「学歴不問の職場で勝負したい!」と意気込んでブックオフという当時まだ知名度も高くないベンチャー企業に就職し、ブラック環境に打ちのめされて一年で退職してしまい、「地元に帰るのは負け犬と思われそうで嫌。ホームレスになるほうがいい」というちっぽけなプライドから埼玉に留まり、危うく高学歴難民になりかけた。
だから、本書を読んで当時の自分を思い出しつつ、「高学歴難民」の気持ちが分かる部分も多かったが、「この人たち、生きかたがちょっとルーズすぎない?」という感想も抱いた。
そういうちょっと極端で、共感されにくい事例が多かった気がする。


一般向けとして分かりやすい本だし、精神科以外の医療者が読んでもためになるし、精神科の医療者なら8割以上は知っていて当たり前ながら残り2割は自分の中の抜けている部分を埋める材料になる良書だった。


同著者の『選択の科学』が素晴らしかったのでかなり期待して読んだが、期待しすぎていたのか、前著ほどの興奮は得られなかった。
うまく入り込めなかったのは、今の自分の「市中病院の精神科医」という立場が、イノベーションとはやや離れたところにある、あるいはそう思い込んでいるからかもしれない。
多忙な臨床には活かしにくく、プライベートで何か新しいものを生み出したいと考えているわけでもないので、この知識は宝の持ち腐れになりそう。病院運営・経営の中で使う場面があれば……。

10年前に読んだが、とてもいい本だった。

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