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今週、読み終えた本 『やめる力』 『黒い海』 『刑事たちの挽歌』

経済学部3年生のとき、退学しようと思ったことがある。母から「やめ癖がつくから卒業だけはしなさい」と言われ思いとどまった。
故郷を遠く離れたブックオフに就職したが1年で退職した。このときは「やめ癖」云々は言われなかった。
医学部受験の浪人中、自信をなくしかけて薬学部に変更しようと思ったが、母から「せっかく勉強するんだから目標は変えるな」と言われ踏みこたえた。
結果、今は医師として働き、看護師だった妻と巡り会い、4人の子の父として生きている。「あのときやめていたら」「あのときやめていなかったら」の先にある人生を想像することもある。
私の楽天的な性格上、たとえどんな人生を歩んでいても、「あのとき、あの選択をしたから今がある」と考えて満足している気がする。
「やめること」「やめないこと」に良いも悪いもない。それは本書でも繰り返し語られる。ただ、本書で突き詰めていることと私の意見とは異なっている。
私は、「やめたこと」「やめなかったこと」の評価は、すべて「いま」にかかっていると考えている。正確には「いま、自身の人生や生活をどう感じているか」だ。私のように、楽天的で「いまが幸せ」と思う人は、過去の「やめたこと」「やめなかったこと」のすべてが正解で、「なにかに導かれた」ような気さえするのに対して、悲観的で現状に満足することがない人は「いつもなにかに邪魔される」ように感じるのではなかろうか。
だから、本書の副題にあるような「戦略的にやめる」ということには、あまり価値を見いだせない。
読みやすくて、面白い本ではあったが、それ以上のものではなかった。


骨太のノンフィクションで、読み手の集中力をそらすことなく、グイグイと引き込んでいく。そして、そのできごとを知るだけでなく、感情を揺さぶり、問題を意識させる。こんなすごい本にはなかなか出会えない。
Audibleだと、朗読も非常に良かった。


ルーシー・ブラックマン事件に関するノンフィクション。いわゆるニュージャーナリズムで、登場する刑事たちのセリフや心情も描写される。本書に登場した刑事たちの執念に感謝。

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