断言しないといけないとき
ある統合失調症の人との会話。
「昔は世界が楽しかったのに、今は怖くて……」
「楽しい世界を取り戻すことを、僕たちの目標にましょう。幻聴はなくなったけど世界が怖いままというより、幻聴は残ってるけど世界の楽しみが戻るほうが、目標として良くないですか?」
「できますかね……?」
「できます」
そんなふうに「できます」なんて断言しないほうが良いのでは? と言う人もいるかもしれない。
しかし、この場面では、断言しないといけないのだ。
統合失調症をはじめ、精神科での治療の多くは「この医師とやってみよう」「この人のところに通い続けよう」と思ってもらうことが重要だ。
この状況で「できると良いですね」「できるよう全力を尽くします」とお茶を濁すことしか言えないような精神科医ではありたくない。
「いや、そういう率直な医師のところにこそ通いたい」と言う人だっているだろう。でもそれは、この文章を読めるくらいには健康な人が空想することだ。実際に病気で心身ともに弱って疲れて病院に行って、医師からそういう返しかたをされると、感じかたはまったく違うはずだ。
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