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【読書】上半期の収穫と7月以降の展望

こんにちは。6月26日(日)13:40です。昨日から、日中は危険なくらいの暑さになりました。気をつけたいですね。

今回のnoteは、今日行われるオンライン読書会での報告のために作成しました(掲示はしませんが)。今月度の振り返りと、来月以降の展望等をシェアする会です。テキストが指定されていない分、参加の敷居が低いかと思いますので、clubhouseまでお越しくださいますとうれしいです。どうぞよろしくお願いします。

上半期は、読書会と「100分de名著を語ろう」のために読んだものが12冊、それ以外が19冊の都合31冊でした。このペースが維持できるといいなと思っています。

1月(6冊)

人新世の資本論(斎藤幸平)

2021年中に読み終えたかったが、間に合わなかった。晩期マルクスの達成を経由して、脱成長コミュニズムこそが、猛威をふるい、地球規模での環境と民主主義の危機を招いている元凶たる資本主義を克服できるとする「希望の書」。☆5.0。

読書からはじまる(長田弘)

他の方が主催される読書会でのテキストが、長田さんの『最初の質問』という絵本だった。それが縁となって手にした著作。今年はこれ1冊しか読めなかったとしても、もう後悔することはないだろうと思う。できることなら、生前にお会いして、「先生」と呼ばせていただきたかった。うまくコメントできないが、お許し願いたい。☆5.0。

流転の海読本(堀井憲一郎)

人物名鑑部分は手を付けず、あらすじ部分を読んで「読了」扱いとした。宮本氏本人を模している伸仁とは、ちょうど入れ替わるようにぼくが生まれてきているので親近感が湧いている。伸仁が20歳になるまでの昭和史を描いた長編のよきガイドブックであると思う。☆4.0。
※本編を読み始めたのに際して、名鑑部分を少しずつ読むことにした。

100分de名著テキスト『金子みすゞ詩集』(松本侑子)

「100分de名著」を見るようになってしばらくになるが、年明けの第一作としてふさわしいのかと訝しく思っていたが、読み進めたり、録画を見ているうちに、それはただの懸念でさえもなかったことがわかってきた。松本さんの筆致や、番組でのコメントがすばらしい。人ひとりが生きているということが、かくもすばらしいものであるのかということを、思い知らされたようであった。☆3.5。

本の読み方(平野啓一郎)

新書版で出ていたものに追記されて文庫に収められたもの。大半を読んだまま放り出していたので、今年の読了本として扱うのは、心苦しい。最後のフーコー『性の歴史』の章のみを読んだ。裏返すと、こういう風に仕組んで文章は書くといいと言われているようにも思われた。☆3.3。

金子みすゞ名詩集(金子みすゞ)

Kindle Unlimitedにて。平易な言葉遣いながら、鮮烈な印象を与えてくれた。「100分de名著」で取り上げられたのにちなんで手にしたもので、松本侑子さんの「名」解説に手助けられながらの読了。何人かの方々と「音読」したのがよかったのだと思う。様々なバージョンがあるようで、それぞれの編集意図についても読んでみたいと思った。☆3.5。

2月(4冊)

100分de名著テキスト「日蓮の手紙」(植木雅俊)

剛毅で大胆にして、繊細な日蓮の「人間像」と「人間観」に迫った好著と思われます。100分de名著シリーズには、同著者の『法華経』も収めれられているので、併読されることをお勧めいたします。☆4.0。

いのっちの手紙(斎藤環/坂口恭平)

坂口恭平さんの本は、どれを取っても、どう「評価」していいのか、よくわからないでいる。というか、そもそも、「評価」ということができるのかがわからないのである。不思議な文章だ。しかし、よく「わかる」ことも事実なのだ。☆4.5。

まんが やってみたくなるオープンダイアローグ(斎藤環ほか)

「やってみたくなる」は、誇張ではなかった。確かに、これはやってみたくなるものだ。「他者」との、よき関係を築けている自分でありたいという願望が、ぼくには強いのだなと感じた。この方法は、取り立てて「疾患」を持っている人たちだけを対象とするものではなく、もっと日常的な場面においても応用が効くものと思われた。☆4.5。

まんが世界の歴史(16)第二次世界大戦(小学館版)

ヒトラー、スターリン、ルーズベルト、チャーチルといった、「人物」のドラマとして全体が構成されている。わかりやすいものの、やや表層的な印象を受けた。☆3.0

3月(8冊)

まんが日本の歴史・別巻 近現代史①(KADOKAWA版)

よくできた「快作」であると言ってよかろう。第一次大戦以降、第二次大戦前夜までをまとめている、三分冊中の一冊目。学習まんが、侮りがたし。☆3.5。

まんが日本の歴史・別巻 近現代史②(KADOKAWA版)

第一次大戦から平成までを三分冊でマンガ化したものの第2巻。内容については過不足なくまとめられていると感心した。こうした本を足がかりとして、詳述されたものに進むのがいいと思う。盧溝橋(ルーコウチアオ)、板門店(パンムンジョム)等とルビを振ってあるのは、評価してよいだろう。☆3.8。

まんが日本の歴史・別巻 近現代史③(KADOKAWA版)

少なくとも「快作」「力作」レベル。全三巻で、第一次大戦から令和の幕開けまでを収めている。内容も、おそらく過不足はない。ここを起点として、より詳述された著作に進むのがよいと思う。監修の山本博文さんは、惜しくも亡くなられているが、たいへん良いお仕事をなさったと感じ入っている。紙の本で書い直しても良いかもしれない。☆3.8。

まんが世界の歴史① 人類誕生と古代の王国(KADOKAWA版)

学校で学んだ「世界史」から、表記や発音等が、ずいぶんと変わっていることが興味深かった。各地の「古代」文明の概観を、手堅くまとめている印象がある。全20巻を通読してもよいという感触を得た。☆3.2。

名著の話(伊集院光)

Eテレ「100分de名著」で取り上げられた『変身』『遠野物語』『生きがいについて』を、番組での解説担当者と伊集院光さんが語り合った著作。伊集院さんが、収録後にそれらを読み返して、再度聞いてみたくなったことを、担当者に聞いたのだという。番組を実際に見ていれば、一層楽しめたことと思うが、この本単独でも、十分に楽しい。特に、『生きがいについて』(若松英輔さん)に関する対談がよかった。☆3.3。

黒猫(エドガー・アラン・ポー)

2022年3月度「100分de名著」ポースペシャルで取り上げられていたので読んだ。引き締まった文章。物腰柔らかい、動物好きな男性が、酒におぼれて愛猫を殺害してしまう。その後に彼を襲う不幸。ラストの段で、畳み掛けるように記されているくだりが見事。☆3.7。

100分de名著テキスト:エドガー・アラン・ポー・スペシャル(巽孝之)

録画を視聴してからテキストを読むとの順番が確立したように思える。今日(3/30)は『モルグ街の殺人』の回を見、読んだのだが、テキスト解説の後半部分が、番組では割愛されていたのは残念。☆3.3。

モルグ街の殺人(エドガー・アラン・ポー)

【ネタバレあり】まさかの「大猩々」。猩々が、オランウータンなのがわかってたのは、番組を見ていたからなのと、『もののけ姫』から。ただし、これを読んだからとて、ポーの他作を読むかと言うと難しいし、いわゆる推理小説に関心を持てたかというと、そうでもなかった。☆3.0。

4月(4冊)

マンガでやさしくわかるアサーション(平木典子ほか)

新しい環境での対人関係の話を知人としていて、不意に推薦してしまった手前、自分でも読むことになったもの。かなりいい本だと思う。「アサーション権」という概念は有効。また、アサーションはすべてを解決する「万能薬」ではないと述べているところは好感が持てる。自分の対人関係の「技法」を見直すのに役立った。☆4.0。

100分de名著テキスト『存在と時間』(戸谷洋志)

「20世紀最大の哲学書」と称えられながらも、自らのナチス関与のため、激しい批判にさらされた、難解をもって知られる名著である。戸谷氏の鮮やかな解説によって、「近しさ」をここに得た。「存在」の本質を見極めることを通して、人間がその「本来性」を回復するための筋道を考察した解説書であった。☆4.3。

才能も気力もないけど、やりたいことをぜんぶ実現する方法(ゆうきゆう)

「選択肢を2つに絞り込んだ上での決断を促す」というメソッドは採用。あとはあまり記憶にとどまっていない感じです。☆2.8。

キミは、「怒る」以外の方法を知らないだけなんだ(森瀬繁智)

読み始めた頃の印象がよかったので、☆4。ただし、読み進めるにつれて、若干「ありふれてる」印象になっていった。広い意味で、「アンガーマネジメント」の本だと思う。☆3.5。

5月(6冊)

はじめての利他学(若松英輔)

若松さんの本にしては、正直なところ、期待外れだった。幾多の先人の、宝物のような言葉を散りばめてはあるが、それは「パッチワーク」以上のものではない。繰り返し語られている、「行」「実践」への架け橋をどう架けていくのかは、読んだ個々人に課せられた課題ではある。☆2.8。

すべてきみに宛てた手紙(長田弘)

詩と手紙と散文との境目が消失した名編。論ずることの不毛と、「引く(=引用)」ことのゆたかさを教えてくれている。これは、「体験」する本である。☆4.2。

コミック版:戦争は女の顔をしていない③(アレクシエーヴィチほか)

「ねえ あんた 一つは憎しみのための心 もう一つは愛情のための心ってことはありえないんだよ 人間には心が一つしかない」☆4.0。

しつれいですが、魔女さんですか?(エミリー・ホーンほか)

clubhouse内の絵本クラブでご紹介いただいたもの。すてきな紹介だったので、実物を手にしたいと図書館に手配。江國香織さんの訳もよい。☆3.5。

100分de名著テキスト『ニコマコス倫理学』(山本芳久)

全ての行為や決断は、善を目的とし、最高の善とは「幸福」であることを説く。さらにそれは、「徳」すなわち、本来的にあり得た可能性を体現し、顕現する「力」であり「機能」だとされていると読んだ。最終章で、名著とは、常に「出会い直し」を求め続けるものであるとしているのは、感動的であった。☆3.7。

ほんとうのリーダーのみつけかた・増補版(梨木香歩)

単行本の時に一度読んでいるものの、増補部分と若松英輔さんの解説を読みたくて購入。数時間で読了できた。人間は、群れを成して生きている動物なので、群れ(=集団)に属したい欲求があるものだし、属していないと不安になるようにできているとしている。問題は、属する集団が意に沿わない場合だったときで、その際には「内なるリーダー」の声を聞くとよいとする。まず、個人であることを大切にしたいという、若い世代へ向けたエールであった。☆3.2。

6月(3冊)

フェミニズムがひらいた道(上野千鶴子)

フェミニズムの進展の歴史と、上野の個人史を重ね合わせ、かつ、コンパクトのまとめた好企画。「弱者が弱者のままで尊重されることを求めて当然」「ちがっていても差別されない権利を求める思想と実践」で結ばれているのは、感動的でさえある。☆3.8。

あのころはフリードリヒがいた(リヒター)

再読したくて、読書会テキストとして採用したもの。見送らず、このタイミングで読んでおいてよかった。しかしながら、一度読んでいるはずだが、その記憶が見当たらない。衝撃で封印されてしまったのか。読み終えて、ただただ痛切な思いしかない。戦争を起こさない・起こさせないこともまた、「責任」の果たし方かもしれない。☆4.2。

100分de名著テキスト『砂の女』(ヤマザキマリ)

原テキストは読めていないものの、遡って読みたいと思わせるに足る、達意の文章だった。「漂流」と「定着」の二項対立を定立させることで終わるのではなく、その対立を超えたところまでの言及に成功している。☆3.5。

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31件もあると、5000文字になっちゃうんですね。来月から、毎月「まとめ」をします。今回は以上といたします。お読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!










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