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読者の未来をめくる日々 vol.15

前回のvol.14で綴ったMさんとお会いしたとき、「営業」に関する話は深くまで及びました。
2人の場合は「書店営業」というニッチな領域の文脈の上ですが、Mさんの営業に対する考え方は大変学びになりましたし、シンプルだけど容易にできないことをごく自然にされていらっしゃるな、と感じたので少し掘り下げてみます。


書店の入口をまたげなかった過去

Mさんは営業を始めた当初、書店の入口まで足が向くものの、恐怖や不安でそこから一歩を踏み出せなかった時期があったそうです。
書店員の方に話しかけられず、店内の柱の陰に隠れて、そのまま何もせず退転していた過去の自分と重なり、どことなくシンパシーを感じました。

そんなMさんが変われたのは、数字目標や会社から課された役割を一旦脇に追いやって、「とにかく書店さんのお困りごとを親身になって聴く。そして、何でも良いから力になる。」という1点だけにフォーカスするようになったことがきっかけでした。

どんなかたちでもいい。目の前にいる人の力になりたい。

ご本人談

自社のソリューションでそれが叶わなくても、まずはひたすら相手の困りごとや課題をヒアリングして、少しでもプラスになる情報提供や提案をし続けたそう。
次第にたくさんの書店さんと信頼関係を育めるようになり、店長クラスの方からも店舗全体としての困りごとを相談されるまでになったとか。
かなり話を端折った説明になりましたが、相手への価値提供に徹しきったからこそ、Mさんはそのような景色を見ることができたのですね。

自分の外にベクトルを向けきった状態が強い

エゴそっちのけで、「読者にこの本を届けたい」「書店さんの売上に貢献したい」と夢中に動けたときが、結果的に一番本の売上が伸びるという経験。
私にも少なからずありましたが、Mさんほど徹しきれる自信はないですし、一営業としてすごく勉強になりました。

ともすると、私は心の内側にベクトルが向きやすい傾向があるので、定期的に自分のメンタルや行動を客観的に観察するようにして、戒めています。

「あー、お前また自分のことばっかり考えてたろ」
とツッコみをいれるような感じです。

誰かのために。
その目的こそいちばんエネルギーが湧いてくるし、それがもっとも強い。
頭ではわかっているつもりでも、呼吸をするように体現しているMさんに頭が下がる夜でした。

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