見出し画像

【本074】『もの食う人びと』

著者:辺見庸 出版社:角川文庫

1年ほど前に友人に紹介されて手にした本。なかなか読めなくて...ついに先週、1ページ目を開きました。そしたら、ぐいぐいとその世界に引き込まれてあっという間に読了。

食をめぐるルポルタージュ。マニラの人魚伝説、ウィーンの大観覧車での食事など楽しいルポもあるが、バングラディシュ、ソマリア、ウガンダ、ロシアなど、悲しみや嘆きに包まれたルポも多い。

ウガンダのエイズ村。子に危うい母乳を飲ませてでもいまを生かすしか選択肢のない母親。

「世界にはこんな食の瞬間もある。ほんとうに静かだ。」

チェルノブイリで立ち入り禁止区域になっている地区。そこに住み、汚染された森でキノコや果物をとり、スープを作り食す人々。

「危険地帯の老人たちは、それでも、ものを食う。食べてその日の命を紡ぐ。」

食は命とつながり、食は文化とつながる。
食から世界を見ると、その土地に住む人々の喜びや悲しみや嘆きが聞こえてくる。あがらうことのできない静かな時間がながれている。

マクロで世界を見ることも大切だが、ひとりひとりの声を聞き共に食すことも世界を知る手立てとなる。いま、世界で起こっていること、もっと丁寧にみていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?