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【本078】『モンテレッジォ小さな村の旅する本屋の物語』

著者:内田洋子 出版社:方丈社

はじまりは、ヴェネツィアのとある古書店との出会いから。その店主は、適確に相手が欲しい本を選書する「本のソムリエ」。街の人は彼に会いに集まってきます。その魅力はなんだろう。筆者はやがて店主の先祖がモンテレッジォの本の行商人であったことに興味を持ち、今では30人程度の小さな村・モンテレッジォに通い始めます。

歴史を紐解いていくと、村人たちは、何世紀にもわたり、産物である石と栗を背負って山を越え行商にでかけ、帰りは空っぽの籠に道中で預かり受けた本を詰め、売り歩きながら帰路を辿ったという。

やがて、街のいたるところでモンテレッジォの行商人が運ぶ本を心待ちにする人たちが増え、それがモンテレッジォの誇りとなり、文化の担い手としての使命感を持つようになるのです。

「本は、世の中の酸素だ。皆で手分けして、漏れなく本を売り歩こう。」

村人たちは、本売りの魂を子どもたちに教えるようになり、やがて、村の行商人が歩いた先々にたくさんの書店が生まれていきます。

「誰もが入ることができ、誰もが学べる。知識を身近に。」

今でも、ビエッラにあるジョヴァンナッチ書店は、村の行商人の信条を守り、未来の入り口として書店を営んでいます。

この本は、まるで壮大な歴史物語をみているようです。写真も豊富なので筆者と一緒に時空を超えた旅に出かけた気持ちになります。本を愛するすべての人に読んでもらいたい一冊です。

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