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【本077】『始まりの木』

著者:夏川草介 出版社:小学館

ふらりと立ち寄った本屋さん。この前、『クスノキの番人』を読んでて、「木か〜」と表紙を見て手に取ったのがこの本です。私は、本を「ジャケ買い」をする方。この方が、物語との不思議な出会いがあるから面白いです。

この本は、癖のある民俗学者・古屋と院生・千佳が、日本の各地を巡りながら、日本古来の神を探す物語。古屋の嫌味たっぷりの言葉に最初はドギマギしたけど、それをリズミカルに返す千佳にうまいなーと感心したりしました。

そんな口の悪い古屋ではあるけれど、旅先で出会う神々について、深く語っていきます。人と神のつながり、自然と神のつながり、私たちがあたり前のように自然のなかに感じてきた畏敬の念をもう一度、思い起こさてくれます。

古屋の旧友の住職の言葉に、

「大切なのは理屈じゃない。大事なことをしっかりと感じ取る心だ。」

というのがあります。

「大事か大事でないか」という視点ではなく、「効率的か効率的でないか」「コストがかかるかかからないか」という数字で表現できる視点で物事を決断する時代。でも、本当に大切にすべきこと、守らなければならないことは、非効率で時間がかかることの中に潜んでいるんだと思います。

大木がゆっくりと年輪を重ねるように、私たちもゆっくりと歩むことを恐れずにいたい。そんなことを思いました。

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