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問題発見・解決の肝は「仮説思考」だよ!

本の紹介

以前記事にした「コンサルティング会社完全サバイバルマニュアル」でメン獄氏が、コンサルタントの必読書として紹介していた「仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法 内田和成著」を読みました。

内田氏は、ボストンコンサルティングで日本代表を務めた方で、コンサルタントのプロ中のプロって感じです。

本書では、仮説思考の効用、仮説・検証・分析の具体的方法、鍛え方などが実例とともに説明されています。本書から得たたくさんの学びから2つのトピックをメモしていきます。

まず、仮説ありき

コンサルタントの仕事が速いのは、一般的なイメージだと思いますし、自身の経験としても感じます。仕事を速く進められる要因が「仮説思考」です。

問題に対する解決策や戦略まで踏み込んで、全体のストーリーをつくってしまう。そうすると、ごく一部の証拠は揃っているけれども、大半は証拠がない状態になり、そこから証拠集めを開始することになる。その場合は、自分がつくったストーリー、つまり仮説を検証するために必要な証拠だけをあつめればいいので、無駄な分析や情報収集の必要がなくなり、非常に効率がよくなる。

P.46より引用

まず仮説を立てて、それを証明する情報を収集・分析し、検証して結果を観察する。分析、検証の段階で誤りだと気付けば、また別の仮説を繰り返し試していくやり方ですね。

一般的なイメージとして、出来るだけ網羅的に情報を集めて、複数の視点で分析し、たくさんの問題点と解決策を出せる方が良いように感じるかもしれません。本書では「仮説思考」との対比で「網羅思考」といってます。

業務資料でも、すべての課題をリストアップし、いくつもの解決策を明示している場合があります。

重大事項を漏らさないように、間違った施策を打たないようにと思ってたくさん挙げたくなる気持ちはわかります。

「いろいろな可能性が考えられる段階で、大胆にひとつのストーリーをつくり上げたりしたら、重大なことを見逃し、間違ったストーリーを作ってしまうのではないか」と心配する人がいる。だが、それは杞憂だ。そのような場合には、ストーリーの正しさを証明するために、証拠集めを始めた段階で、仮説を肯定するような証拠がなかなか集まらない。
(中略)
初期段階で間違いに気づくので、余裕をもって軌道修正することが可能だ。

P.46より引用

仮説の間違いはすぐに気付けるので大丈夫ってことですね。

網羅思考が問題なのは、情報を集めるのも、問題点・解決策を考えるのも、実際に施策を打つのも、すべて時間と資源が足りなくなるところにあります。

例えば

  • 全体像が見えた頃には時間切れ
    情報、問題点、解決策を積み上げていくので全体像が見えるのは終盤

  • 間違いに気づいた時には、手遅れ
    情報収集、問題点、解決策を何個も積み上げてストーリーをつくるので、一度でも間違えた解決策をつくると、以降の解決策すべてが間違ったものになる。

  • 理屈先行で意思決定に時間がかかる
    情報がたくさんあればあるほど意思決定は難しくなる。

  • 批判やあら探しされやすい
    「全部網羅できているか」が観点になってしまい、あら探しされてしまう。

まず、仮説を立てましょう。

仮説を立てるための頭の使い方

では、実際に仮説を立てる際にどのように考えていけばいいのか、本書では3つの方法を紹介しています。

人は誰でも知らず知らずのうちに決まったモノの見方をしている。自分の得意なものの見方で思考してしまう。それが新しい仮説を生みだす阻害要因になることがある。そこで意識的に頭の使い方を変えるのだ。するといままで見えていなかったものが見え、仮説がひらめくようになる。
頭の使い方を変えるとは、一言でいえば普段より幅広く使うことに尽きる。幅広く考える方法として、ここでは①反対側から見る、②両極端に振って考える、③ゼロベースで考える、の三つを紹介しておく。

P.126より引用

方法1 反対側から見る

「反対側から見る」は利害関係者の視点で考えてみることです。例として下記3つの視点があります。

  1. 顧客・消費者の視点
    顧客はどんな人であり、なぜ自社のサービスを使っているのかを考えてみます。顧客になりきってみて、顧客は本当は何を感じているのかを理解することで、新しい仮説が生まれます。

  2. 現場の視点
    机の上で考えるのではなく、実際に現場に行って、具体的な事実を経験し観察してみましょう。そうすることで、新しい仮説が生まれます。

  3. 競争相手の視点
    もし自分が競合相手の社員だったら、自分の会社をどのように見るかを考えます。競合から見て自社の弱みはどこか、強みはどこか、弱みを突いていくのが効果的か、強みに対して正面突破するかなどを考え、それに備える施策から新しい仮説が生まれます。

方法2 両極端に振って考える

物事を両極端に振って考えてみます。例えば、「戦争」の代わりに「平和」を追求したらどうなるか、「攻撃」の代わりに「防御」を徹底的にやるとどうなるか、などです。

ビジネスの現場で例えると、自社の製品が「価格」を理由に買われている場合、値下げと値上げを考えてみます。

価格が理由だと他社と比較して安くないと買ってもらえません。なのでそこまで値下げできるかを考えます。

逆に値上げするには価格ではないところで選んでもらう必要があります。ブランド化したりアフターサービスを充実したりなどの施策を考えます。

方法3 ゼロベースで考える

既存の枠組みにとらわれず白紙の段階から考えるやり方です。既存の枠組みで考えると過去の事例や規制の存在によって思考が狭まります。

「作業依頼件数を2割減らす」という命令に対して既存の枠組みで考えると、マニュアルを整備して1件当たりの処理時間を短くするとか、仕事を外注して安くするなどの施策が浮かびます。

それを「作業依頼をゼロにする」「作業依頼が今の100倍になっても同じ体制で対処できるようにする」と命令されたとしたら全く異なる発想が必要になります。

依頼受領から作業完了までを自動化する、依頼元で作業できるようツールや手順を作って業務移管するなどが浮かびます。

ゼロベースから考えた方が効果の大きい仮説が思いつきやすいです。

という訳で、仮説思考の重要性と仮説を考える際の頭の使い方の2つを紹介しました。本当に勉強になります。

本書では、他にも有効な方法論を、実際のコンサルティング事例に基づいて紹介しています。おすすめですので是非。

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