本屋

本の顔をつくる(小説編集者の「先生には言えない話」③)

編集者にとって、書店は戦場だ。


数多くの本の中から、担当作を選んでもらわないといけない。
なにしろ大型書店になると1店舗の蔵書数は100万冊にも及ぶ。
だから第一印象となる表紙を作る仕事は重要なのである。

ちなみに、最近表紙買いした本はこちらです。


どれも素敵……!

本の顔となる表紙だが、デザイナー、イラストレーターまたは写真家を誰にお願いするかを考えるのは編集者だ。

そして作家と相談しながら、具体的にどんな表紙にするかも決める。つまりアートディレクションもできる。
僕はこの仕事がとても好きだ。

そして、表紙は内容に合ったものでなくてはいけない。
だから写真を使うときは、ありものの写真ではなく、新規で撮影するようにしている。

今でも恥ずかしい思い出がある。ある青春小説の表紙を作った時のことだ。


「光溢れる教室で女子中学生がたたずんでいる」という写真にしたいと考えた。

まずは撮影場所だ。教室のようなスタジオが見つからず、母校に交渉する。
当時の教師が残っておらず難航するが、何とかOKをもらった。


モデルは女性誌にいる同期に紹介してもらう。


問題は衣装の制服だった。


女友達に借りようとするも、個性的すぎるデザインで断念。
仕方がないので買うことにする。調べると高島屋にあるようだ。

お店に入った瞬間、「まずい」と気づいた。
店内は女子中高生ばかり。視線が痛い。
険しい顔をした店員が光の速さで声をかけてくる。


「何かお探しですか」
「いや、制服を」
しどろもどろになってしまう。制服を買おうとする男はまあ不審者である。


「どんな制服をお探しですか?」
「じょ、女子中学生が着るようなものを」
完全に変質者である。


「ええと、どのような目的で?」
「えっ、着せて撮影しようと思いまして」
完全に性癖の曝露である。


途中で名刺を出すことを思いついたので事なきを得た(?)ものの、もう少しで別室行きだったと思う。
これも編集者の仕事だ。と書こうとしたものの、これは相当レアな仕事だと思う……。

(第3回おわり)※第4回更新は5月1日です。令和元年になる日ですね!

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