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読むのが勿体ない!海外SF短編集【たんぽぽ娘】

こんにちは、レイです。

海外の小説を読んでみたいけど、なんだかハードルが高そうだな。
それに、英語で書かれている内容を翻訳してるから、作者が本当に伝えたかった意図や物語が理解できないかも。

そんなことを思っているのであれば、ぜひこの短編集を手に取ってほしい。中身は全部で13編からなる物語です。この物語はどれもSFチックで、面白い。その発想や、海外の作品独自の表現など。

読んで感じてみれば分かる、新しい魅力に気が付ける。


内容

未来から来たという女のたんぽぽ色の髪が風に舞う。「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」……甘く美しい永遠の名作「たんぽぽ娘」を伊藤典夫の名訳で収録するヤング傑作選。全13編収録。

たんぽぽ娘

「たんぽぽ娘」を読むポイント

たんぽぽ娘を読んで楽しむためには、いくつもの障害があります。その障害は、基本的には「海外文学作品である」ということです。言葉の表現、言い回し、使い方が違います。そして、原文が英語でありその訳し方も、人によって異なるのです。
これが不思議で、すごく面白いのです。ただ、自分の納得できないエンドだと、ついつい「原本は?」と気になり探求してしまうのです。
これも、海外文芸ならではの面白さですね。

この本を読む時に、最大限楽しむ為には「SF作品の魅力」「海外文芸にみられる面白さ」「短編集の魅力」という個所を意識してみましょう。
この視点を持って読むと、一見すると「物足りない」と感じる物語でも最高の物語だったのかと気が付くことができます。

SF作品としての魅力

たんぽぽ娘の中には、多くの短編が収録されています。その短編の多くが、SFがテーマになっている。「タイムトラベル」「宇宙」などの要素が盛り込まれており、中には「SFロマンス作品」もある。

当時は、どの作品も独自の世界観でした。今ならば、似たような作品があります。しかし、その伝え方や描写はとても秀逸で、今の作品と比較しても見劣りすることはありません。

特にタイムトラベル作品でもある、「たんぽぽ娘」は非常に奥深い作品です。訳し方でその印象はかなり変わります。しかし、その最後は考えることが多く、様々な考察が行われています。

その他、「第一次火星ミッション」「失われし時のかたみ」「最後の地球人、愛を求めて彷徨す」「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」などといった、様々なSFの世界を堪能することができます。

海外作品の楽しみ方

海外作品だからという理由で避けているのであれば、本当に勿体ない。海外作品は、日本の文学では堪能できない魅力がある。その日本人にはない発想は当然として、海外作品独自の言い回し、言葉選びを堪能できます。

何が違うのか、それは読んでみればわかります。読んでいて違和感を感じるし、気になって読んでみると「訳」がしっかりと書いてある。それだけ、独特な表現と、言葉の使い方があります。それに、日本にはないような言葉もあるので、読んでみると新しい発見があります。

そして何より、日本語訳された文章は美しい。きれいに書かれた日本語は、もともと美しい言葉で書かれた作品により彩を与えてくれます。踊りだすような言葉に導かれ、本の世界に浸ると読み終わるのが勿体なく感じます。


短編の面白さ

短編であるということも非常に面白いところです。日本の現代作品では、短編でも、設定などが細かくわかるようになっています。でも、昔の海外作品であるこの短編集の物語は、少し物足りなさを感じる。だが、それがいいのです。

ある意味で、「受け取り方は君たちに任せるよ」というスタンス。答えは読んできて育まれた自分の心の中にあります。そして重要なのは、そこに答えはない、ということ。

それは、短編中の表現から自分の中で想像を広げていきます。常に想像力が刺激され、読書会に使用されるほどに奥深い。重要なのは、読んで考えることですが、短編でこんなにも考えさせられる作品が集まっているのは、非常に珍しいです。

読むときには、この短編はどんなことを言っているのだろう?何を感じ取れるのだろう?書かれていない背景はどんなことがあったのか?そんなことを考えて読んでみると、非常に面白い。短編で少し語り不足を感じる程度だからこそ、そうした表現力や想像力を刺激されると思うと、短編の底力を見せられたような気がします。


たんぽぽ娘の感想

この短編集を読んで初めに感じた感想は、「13編とも奥が深い」ということでした。奥深いという言葉でくくると簡単に聞こえますが、どの短編も考えることが多いのです。

例えば、「河を下る旅」という短編では自分の人生を多く見返すようになります。特に、夢と現実の境目がドンドン曖昧になっていく感じは、この作品以外では見られません。最後の最後で一変する物語の結末には、スッキリする感じがする。人間の生への執着などを意識すると、さらに感じ方が変わり、潔さもあって面白い。

様々な本を題材にした小説などで紹介されているが、読んでみて納得の内容でした。奥深く考えさせられるだけではなく、その受け取り方も人によって違う。その訳し方によって、受け取る印象が少し変わってくるのも面白い。

本当は多くの日本語訳の文章を堪能するべきなんだろうが、僕は二冊目にして英語版を手にしました。自分で翻訳してみると、また全然違う文章になるのだから不思議です。始まり方も終わり方も、展開もそこまで大きく変わらないのに、途中の言葉選びで全然印象が違いました。

基本的にはすべての物語がハッピーエンドなのに、僕が自分で翻訳すると少しバットエンドな印象を受ける作品もありました。英語力の不足なのか、翻訳家はすごいなと驚くばかり。

日本語版で気軽に堪能できることのありがたみを、あたらめて実感しました。

もしもあなたが、気軽に日本語訳された物語を短編で堪能したければ、お勧めしたい一冊です。

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