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ホラー小説集

22
ホラーに分類した小説をまとめています。
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#短編小説

白麗

 雪女、という妖怪をご存じだろうか。  小泉八雲で有名かもしれないが、雪山に現れて男を助…

水瀬 文祐
12日前
107

ボーカルトラック

 人生で初めて、一人カラオケなるものに挑戦してみた。  大勢で来たことはある。この辺は夜…

水瀬 文祐
1か月前
95

祭囃子

 雨の音にまじって祭囃子の音が聞こえる。  布団から起き上がり、窓を開けるとその先には黒…

水瀬 文祐
1か月前
119

白い街路(かげみぼう第2話)

■前回の話はこちら■本編 砂川とは彼女の郷里で落ち合うことになった。  日光駅前からバス…

水瀬 文祐
2か月前
100

かげみぼう(第1話)

■あらすじ大学時代の後輩、砂川楓に招かれて栃木県日光市にやってきた水瀬。彼女は「白い街路…

水瀬 文祐
2か月前
141

夢の扉

 雨が降る。音もなく、漂うように。  タケルは傘を差すことも忘れ、駅前のロータリーに立ち…

水瀬 文祐
2か月前
137

蟹壺(第3話)

■これまでの話 僕は和室の扉に手をかけ、開けるか、と悩んだ。開けるべきではない、という警報を、僕の好奇心は上回ってしまっていた。蟹の行方が、どうしても気になった。蟹はたまたま和室に入り込んだのではない。何らかの意図をもって和室に入って行った。とすれば、いずみの秘密はこの和室の中にある。  それを確かめたい。確かめずにはおれない。いずみも、僕に和室の中を見せるために、わざと外に出たのではないだろうか。いや、それは都合よく解釈しすぎか。ああ、見たい。この中を。見るためなら、この身

蟹壺(第2話)

■これまでの話■本編 大学の屋上で、遥か彼方に見える海を眺めながら煙草をふかした。  い…

水瀬 文祐
2か月前
98

play dead

 もういやだ。おれは死ぬ。  三番目に目覚めた男は、何人目かの女が目覚めると、そう言って…

水瀬 文祐
2か月前
128

ある殺人犯の告白

 やあ、あなたが私の話を聞きたいという酔狂な人だね。  誰もが知りたがっている?  ああ、…

水瀬 文祐
3か月前
140

幽世電車

 智臣は走っていた。  真夏のアスファルトの上を、息を切らし、頬を伝って流れる汗を拭いな…

水瀬 文祐
3か月前
122

ぜい肉くん

 まず驚いたのが、我が家のドアチャイムが鳴ったということだ。思わずぜい肉だらけの体を揺す…

水瀬 文祐
4か月前
128

エクストラクト

 砂塵の向こうに霞む街が見える。  男は立ち止まっているとずぶずぶとブーツが沈んでいく流…

水瀬 文祐
4か月前
141

グルーブ・ドレジング

 第三次世界大戦は阻止された。だがそれは、けっして人類が望んだ方法によってではなかった。  大戦の火蓋が切って落とされようとしたまさにそのとき、世界各国の空に竜が現れて、都市を、街を焼き払った。それは白銀に輝く、飛行機ほどもある竜だった。その竜が無数に、夕刻の雁の群れのように空を悠然と泳ぎながら、口から熱線を放射して世界を焼き尽くしたのだ。  各国は大戦のために備えていた軍備を竜に向けた。皮肉なことに、竜という脅威が大戦を止めただけではなく、国同士の繋がりを強化した。団結した