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一読の夢~短編小説集~

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ジャンル問わず、全短編をまとめたものです。 更新は不定期。小説を読みたい方はぜひ読んでみてください。
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2024年8月の記事一覧

天使、来店

 書店で働いていると、本当に色々なお客が来る。  私はアルバイト時代から含めて、今年で勤…

水瀬 文祐
1か月前
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彼女の創世

 朝目覚めたら、知らない男が部屋にいた。  男は六十代後半くらいの、光の当たり方で銀にも…

水瀬 文祐
1か月前
142

泥棒税施行条例

 泥棒税施行条例 第1条 この条例は憲法94条の規定を無視し、すべての憲法及び法等に優先す…

水瀬 文祐
1か月前
115

白麗

 雪女、という妖怪をご存じだろうか。  小泉八雲で有名かもしれないが、雪山に現れて男を助…

水瀬 文祐
1か月前
120

雷火

 昨日裏庭の古木に雷が落ちた。  古木は二股に分かれた幹の分かれ目から発火し、瞬く間に枝…

水瀬 文祐
1か月前
109

泳ぐ鳥

 大学時代、暇さえあれば喫茶店に行っていた。  彼女と僕とは腐れ縁というか、高校一年のと…

水瀬 文祐
1か月前
116

水晶の馬

 本棚があるとするだろ?  そこから一冊抜き取ると、さてどうなる。  そうさな。一冊分のスペースができる。そして右か左か知らないが、どちらかにある本がことりと倒れて、隙間は直角三角形の形になるわけだ。  そこの隙間にはな、馬が住むんだ。本一冊よりも小さいが、まあ、じゃがいもよりは大きいかな。そんな馬が住んでいる。  だからな、たあ坊。お前さんが本屋で本を買おうとするときには、その本を抜いた後でどういう隙間ができるか考えなくちゃいけねえ。必ず、直角三角形だ。二等辺三角形でも、平

手紙

 彼女が最後に残した手紙を読み返し、丁寧に折り畳んで封筒にしまうと、机の引き出しに入れた…

水瀬 文祐
1か月前
120

燃える空の向こうに

 夜の河川敷は人でごった返していた。  花火の火の玉が尾をたなびかせて空に舞い上がり、弾…

水瀬 文祐
2か月前
132

感情中毒

 人間は感情を失った。  この世には娯楽が溢れている。本を読むことは時間の浪費である、と…

水瀬 文祐
2か月前
112

真剣勝負

 少年は拳を握りしめ、右足をわずかに引いて体を半身開いた。  握りしめた拳には、必要以上…

水瀬 文祐
2か月前
108

真実のひとひら

 初め、野原には一輪の花だけがあった。誰も名前を知らない、赤い花だった。  花はやがて風…

水瀬 文祐
2か月前
132

ボーカルトラック

 人生で初めて、一人カラオケなるものに挑戦してみた。  大勢で来たことはある。この辺は夜…

水瀬 文祐
2か月前
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