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魔法の使える人間――魔術師が存在すると公に認められている現代日本。 大学二年生の清水…
なにかのはじまりを告げるように、強く風が吹いていた。 その日の講義を終え、ひとり構内…
あれから、一週間が経とうとしていた。 亮は、区立図書館で借りた本を広げながら大学へと…
首輪を再びつける巷一の顔から、ゆっくりと表情が抜け落ちていく。 「どっちでもいい。片手…
『柏木蓮人:今日って予定ある?』 そんなメッセージが届いたのは、五月の大型連休中のこと…
長期連休、最終日。 自宅アパートでパソコンや数冊の本と向かい合っていた亮は、不意に、…
長期連休明けの昼下がりは、雲一つない、文句のつけようのない晴れだった。 「ありがとうございましたー」 有楽町線東池袋駅沿いにある、高速道路高架下の商店街。その中にある飲食店から出てきた男は、見送りの声を無視して裾長のジャケットを羽織り、ワイシャツのポケットに手を突っ込んだ。煙草を取り出し、口にくわえようとしたところで、その手を止める。 丸渕眼鏡の奥にある鋭い垂れ目をすっと細めて、見つめる視線の先。 二人の男子大学生が、車道を挟んで向こう側の歩道で談笑している。それだけ
「あれは……古夜さんの残滓だね」 言うが早いか、蓮人はわずかな『山吹色』に近づき、屈み…
「絶っ対に嫌だね!」 亮の声が、大学のとある教室内に響き渡る。 「なんで俺が主役なのさ?…
「……で、清水くんはそこから逃げてきたんだね」 大学附属図書館の、社会科学に関する資料…
亮が笹原と大学附属図書館で会った、その数日後。 風が強く吹き渡る中を、亮は大学に向か…
梅雨入り宣言のされた日。 蓮人は降りしきる雨の中、黒い傘をさして大学へと向かいながら…
その頃、大学構内のとある空き教室で、海弥はドラマ撮影の準備をしていた。鉛筆でこつこつと…
六月中旬。 大学附属図書館で基礎心理学に関する本を手に取っていた蓮人は、腕に抱えた本の重さに辟易したようにため息をひとつ落とした。周囲に人がいないことを確認して抱えた本に手をかざすと、『黄色』の光がわずかに本を持ち上げる。蓮人は重さを感じなくなった腕にほっと一息ついて、本を抱えたまま――正確には魔法で宙に浮かび続けている本を抱えているかのように見せながら――自動貸出機のある場所へと向かい、本をそっと机に下ろした。 席に着き、窓の外をちらりと見やる。 外はざあざあと雨が