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第8編 「本と珈琲と椅子」 振り返り

前置きとなりますが、第7編までの振り返りに関しては、
以前作成したポートフォリオよりの引用となっており、
それぞれイベント開催からある程度時間が経ってから
振り返ってみた所存を書き連ねたものでございます。

今回より、イベント直後にしっかりと
振り返りを残していきますので、
是非一読していただければと思います。

第8編「本と珈琲と椅子」
出店.
(本)カクナミ リュウマ (上富良野町)
(珈琲)KINUBARI COFFEE (上川町)
(椅子)nan ca deal (遠軽町)
場所.
KINUBARI COFFEE ROASTERS
〒078-1753 北海道上川郡上川町南町1058


出店者の皆様
(左)nan ca deal 店主 長瀬さん
(中央)KINUBARI COFFEE 絹張さん
(右)カクナミ リュウマさん

今回の主題は「椅子」。
椅子の発祥は日本では弥生時代、海外では古代エジプト時代とされ、
人が座るためのものという道具としてだけでなく、
その人の身分や建物の品格を表す象徴としての
役割を担うものでもあります。
とても身近な存在の椅子ではありますが、その奥深さには底がないのです。

曲線美。
手が触れるところには味のある
擦れなどが残る。
接合部。この独特な意匠も絶妙。
脚が並ぶ。
長瀬さんお気に入りのハイチェア。
ちょっと調和の取れていない感じが
なんとも愛らしい。
長瀬さんによる、上の椅子の紹介文。
“僕は背もたれが低くて、脚が太くて、
不恰好かもしれないけど、
上を向いて目一杯、
座面を高く立ち続けるんだ。
僕にだってきっと
輝ける場所があるはずだから。”
愛でる感じが伝わってくる。

木工作家で、nan ca deal 店主でもある長瀬さん。
家具の中でも椅子が特にお好きということで、
長瀬さんの思う「椅子」とはどのようなものでしょうか。

nan ca deal 店主 長瀬さん

椅子は、帰る場所、ほっとする場所、安心できる場所。
自分だけの居場所であり、自分だけの小さな世界。
そして、何かが生まれる場所。

自分だけの小さな世界。

忙しない日常の中では、デスクのパソコンの画面と睨めっこしたり、
友人とカフェでお喋りしたり、美味しい食事にありついたりと、
椅子は必ずしも外界と自分遮断するためのものでは決してありません。
しかしながら、「椅子に座る」ということを意識してみると、
確かにそこには自分だけの小さな世界があるように思えます。

椅子同士が会話しているようにも見えるし、
人の抜殻が残っているようにも見える。

複数人での集合にせよ、自分世界への没入にせよ、
誰かが座った後の椅子には、
そこにあった小さな世界が、まるで抜け殻のように落ちているかのよう。


本の中の世界に入っていく時間も素敵なものですが、
部屋の中にそっと置いてある本もまた可愛さがあります。
普段さまざまな生業をされているカクナミ リュウマさんですが、
今回が初めての「本屋」としての出店だそうです。
椅子に腰掛けて読むのに合う本をお願いしたところ、
「なんとなくなんらかの救いになりそう」をテーマに
選書してくださいました。

カクナミ リュウマさん

見やすいとか、買ってもらいたいとかそんな感じじゃなくて、生花みたいに並べようと思ってるから。

美しい本の装丁。ハナがあります。
裏で本を支えているのは、瓶ビールの空き瓶。

普段部屋に置いてある本、
書店に並ぶように本棚に整然と置かれているところは、
もちろん綺麗でありますが、
その人の脳内がぽろっと落ちているような積読が聳えているところも、
とても愛らしい。

本を読むことも、没入という意味では椅子に近しいものを感じます。
本も椅子も、自分の世界に入り込むための「装置」なのかもしれません。


珈琲を飲むという行為も、そのもの自体を意識してみると、
自分の世界に入り込むのには欠かせないものであります。
KINUBARI COFFEE の絹張さんは、
この会に合わせて、珈琲と椅子の関係性についての
エッセイを執筆してくださいました。

KINUBARI COFFEE の絹張さん。

どんなものにも「似合う」在り方というものがある。
きっと飲み物にだってそれはある。

たとえば、ビールは風呂上がりに立ったまま、
腰に手を当てて飲むのが似合う。
抹茶は畳の上に座布団を敷いて、座って飲むのが似合う。
麦茶は真夏の縁側で、汗だくになりながら飲むのが似合う。
水は砂漠でラクダの上に乗りながら、ガブガブ飲むのが似合う。
みたいな感じだ。
共感できる人もいればそうじゃない人もいると思う。それでいい。

コーヒーはどうだろう。
やっぱりコーヒーは、静かな喫茶店でタバコの煙を燻らせながら、
椅子に座って飲むのが似合う。
そこに1冊の本が添えられていたりすれば尚更収まりが良い。

でも、コーヒーを淹れる時はどうだろうか。
座ったままドリップするのは難しいし、立って淹れる方が似合う。
じっくりと焦らず、丁寧にコーヒーを抽出していると
たまに息をするの忘れていることがある。
最後の注ぎが終わった瞬間、思い出したように
口から「すぅー」っと深く息を吸い込む。

淹れたてのコーヒーをカップに注ぎ、
こぼさないよう気をつけながら席まで運ぶ。
椅子に深く腰かけ、一度テーブルに置いたカップを再び手に取る。
両手で大事に持ったカップからは
少しずつコーヒーの温もりが伝わってくる。

顔を近づけ、鼻から「すぅー」っと深く息を吸い込む。
芳ばしくてほんのり甘いコーヒーの香りで満たされる。
背もたれに背中を預け、少し遠くを見つめながら
今度は「ふぅー」っと深く息を吐く。

やっぱりコーヒーは椅子に座って飲むのが似合う。

本と珈琲を携えて椅子に腰掛ける。
読書好きの方であれば日常かもしれません。

本も、珈琲も、椅子も、暮らしの中にそっと存在する、
ちょっぴり素敵な事象たちです。
たまにはそんなそっとしたものを、意識する時間を作って、
自分の世界に浸ってみてはいかがでしょうか?

本と珈琲と〇〇という連続イベント企画は、
自分にとっては、
道内の様々な方と一緒に何かをする
機会をつくるということと、
お客様にとっては、
このイベントをきっかけに色々な地域へ
足を運ぶ機会になればと考えながら開催しています。

今回の上川町でのイベントでは、
「初めて上川町にきた」という方もお見かけ致しまして、
企画者冥利に尽きる2日間となりました。
ご購入された品々が、お客様の暮らしの中で
素敵な時間をもたらしてくれることを願っております。

ご来場いただいた皆様、出店者の御三方、誠にありがとうございました。

また、この本と珈琲と椅子の回を踏まえて、
今後もより一層、空間演出にこだわりを持って、
よりニッチな会を開催できればと、思いを新たに致しました。
趣のある場を作り上げていこうと考えておりますので、
是非是非、お立ち寄りいただければ幸いでございます。

本と珈琲と〇〇のinstagramにて
イベント告知などをしておりますので、
フォローしていただけるとこの上なき幸せでございます。
何卒よろしくお願いいたします。

本と珈琲と〇〇 企画 タサキ アツヤ







photo by Atsuya Tasaki

本と珈琲と〇〇 instagram


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