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黒猫とさち くまの紳士との内緒話

久しぶりに晴れて気持ちいい
散歩に行こう

レモンティーをみどり色の水筒に注ぐと
さちは赤い帽子をかぶって玄関をでた

さぁてどっちに行こうかな

その時
目の前を黒猫が横切った
振り返った黒猫と目があった
綺麗なラベンダー色の瞳
瞳の色と同じラベンダー色のリボンを首に着けている
ちょっと古風だけど豪華なリボン
どこかの飼い猫だろうな
毛艶も良いし

「にゃおーん」
ついておいで美味しい物が食べられるよ
そう言われた気がした


さちは黒猫を追いかけて歩き始めた
いつのまにか街外れの林の中にいた
白くて細くて高い木々の間から木洩れ日がさし
心地よい風が吹いている

おや?

クマが空色の木の椅子に座っていた
「お嬢さんもお掛けなさい。」
クマに言われたとおり
さちもクマの隣りの空色の木の椅子に座った
大きな椅子だから、さちは足をぶらんぶらんさせてる
クマはさちよりずいぶん大きいのにやっぱり足をぶらんぶらんさせてる
椅子が高すぎるのか
もしかしたらクマの足が短いのかもしれないと失礼な事を考えた
怖くはないけどちょっと変わったクマさん
だってね
クマのくせに眼鏡をかけている
黒い縁の丸眼鏡
丸眼鏡のせいか愛嬌ある顔に見える
まるで紳士のように澄まして椅子に腰掛けている
さちは笑いだしたいけど、紳士を笑うのは失礼だと思うから我慢した
あんまりジロジロ見ないように時折りチラッと見たら、、、
あんまり驚いてさちの目はまん丸になった
クマがさちを襲おうとしてたわけじゃない
あまりにも意外な物をクマが持っているから
何だと思う?

抱えていたのはバタール
そうフランスパンのちょっと短めで太いタイプ
美味しそうな匂いもしてる
その時、さちのお腹がぐぅ〜となった
クマがさちに向かって言ったのだ
「お嬢さんよかったらご一緒に食べませんか?
リスのパン屋のフランスパンは絶品なんです。
さっき焼き上がったばかりだからまだ温かいんですよ。」

さちは恥ずかしくてどこかに消えてしまいたかったけど
リスのパン屋さんのパンを食べてみたくて「ありがとうございます、いただいても良いのでしょうか?」クマの紳士に尋ねると「もちろん、可愛いお嬢さんと一緒に食べたらいつもよりもっと美味しいでしょう♪さあ、どうぞ!」
クマの紳士はそう言いながら半分に千切ったバタールをさちに差し出した
まだほんのり温かいそのパンはパリッと香ばしく中はふっくらしてあっというまに食べてしまった

そういえばレモンティーを持ってきてたんだ
「クマさんレモンティーはいかがでしょうか?
パンに合うと思います。」

「これはこれはありがとうございます。」

「あー美味しい。」「レモンティーとリスのパン屋のバタールがこんなに合うとは!2人だけの内緒にしておきましょう。」
ニコニコクマの紳士はつぶやいた

「ニャン」
黒猫の声がした
さあ、帰ろう。

さちは黒猫の方を見たと思ったら家の前にいた
爽やかな風が吹いていた
さちの水筒には澄ました顔して眼鏡をかけたクマの絵が描かれていた

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