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【詩】コウモリ

9月の始め
暑さも薄らぎ落日も速くなった夕方

妻と出かけた
散歩がてらの買い物帰り

通りかかった工場の緑地横
その敷地内から
幾つかの黒い影が飛び出しては
敷地の中に戻ってを繰り返す

真上を見ると
黄金と濃い青を混ぜたような空に
コウモリが羽ばたいている

こんなところにもいたんだ!

僕の心は
少年時代に存在した
だだ広い空き地に戻って
空を見上げている

今よりも大きな黄金色の空に
今よりも無数のコウモリが飛び
あちこちで声を響かせていた

夕餉の香りがして
遠くで野良犬が鳴いて
絶対的な安心に包まれていた

心は現在にもどったが
古い友人に会ったような喜びは
胸に残った

食材の入ったバッグを掛けた僕らは
オナカスイタと声上げる子の待つ家に
足早に帰るのだった

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