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システム子会社について考える2

はじめに

この記事を読む前に、前回の記事を読んでいただくと幸いである。要約すると、システム子会社を分類してどのような特性があるか考えてみる。

1. 外販率が高く、内製化率が高い。
2. 外販率が高く、内製化率が低い。
3. 外販率が低く、内製化率が高い。
4. 外販率が低く、内製化率が低い。

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なお、これは四象限の図がかっこよくて描いたものである。特に意味はない。

外販率が低い-高いとは?

外販率とは「親会社やグループ会社以外からの売り上げの割合」を指す場合が一般的である。つまり「外販率が高い」というのは、親会社やグループ会社以外からのシステム開発の受注やソフトウェアの売り上げの比率が高いことを指し、「外販率が低い」はその逆で親会社やグループ会社からの売り上げに依存している。

「外販率が低い=悪?」

インターネットではまことしやかに「外販率が高い = 良い企業」とされている。確かに外販率が高いというのは、親会社やグループ会社への依存度が低くくなり、それらの業績に左右されにくくなるというメリットがある。また、他の企業のシステム開発で得たナレッジを、親会社のシステム開発に水平展開することで開発効率向上が期待できる。

となると、「外販率が低い」というのはこのメリットが完全に裏返るということになる。つまり親会社やグループ会社からの利益に依存しているため、それらの業績が悪くなると必然的に売り上げに影響が出てくる。
(※一般的な事業部会社は、売上の1%をIT投資に回すとされている。なので売り上げが低くなると必然的にこの金額は減る。また、業績が厳しくなるとITに回す金は真っ先に削られる)

正直、「外販率が低い = 悪」という図式でこきおろす記事は沢山ある。ここではあえて「外販率が低い」という事を擁護してみる。「外販率が低い」という事を簡単にイメージするために「外販率0%」のA社を想定してみる。A社はとある大手事業部会社B社を親会社に持ち、システム開発・運用・保守を行うシステム子会社だ。

1. 蓄積したナレッジが無駄になりにくい。
  長年使われてきた業務システムというのはとにかくデカい。そして複雑怪奇。顧客の業務や修正に至った過程を熟知していないと、いかにCSの知識があろうとシステムへの理解は難航するであろう。しかもグーグル先生はほとんど助けにならない。

  そのようなシステムは1年、2年携わったところで完全に理解することはできない。それこそ、腰を据えて長い年月をかけて理解していく必要がある。
(そんなFatなシステムにすること自体がおかしいという意見もあるだろうが、それはまた別の議論である)

  しかし、ようやく業務を覚えた矢先「外販率が高い」企業の場合は、全く別のシステム開発に配置転換されるリスクがある。もちろん、それまでのナレッジを活用できるところにおいてくれるように会社も動いてくれるだろうが、私が今まで見てきた事例ではかなり畑違いの開発現場に飛ばされる人もいたので正直運に左右される。

この点においてA社はかなり安心だ。B社のシステムを見ていれば良いので、培ってきた業務知識が無駄になることはかなり少ない。

2. 人間関係の再構築が少なくて済む
当たり前だが、システム開発には多くの人々が携わる。例えば、
・自社のメンバー(一般社員、PL、PM、営業) 
・顧客の情シス担当者(一般社員、情シス部長、CTO)
・協力会社社員(BP, プロダクトベンダー)

などなど。しかし担当するシステムが変わるという事は、これらの人間関係も一から再構築する必要がある。個人的にはこっちのキャッチアップの方が難しいと思う。ほかの職種の事は知らないがITではたまに大変気難しい人がいる。さらに悪いことにその人がキーマンだったりするので、その人と信頼関係を築けない場合、仕事が前に進まなかったりする。少しずつ信頼という石を積んでいくしかない。

ここにおいてもA社は有利である。一度作った人間関係を再利用し続けれられるのだ。(もちろん信頼関係構築に失敗したら、、、)

内製化率が低い-高いとは?

この記事において「内製」とはコーディングやテスト・監視など下流工程を自社のリソースでまかなうことを指す。すなわち、「内製化率が高い」は自社で手を動かして作る割合が高いことを指す。

「内製化率が低い」はその逆で手を動かして作る割合が低いことを指す。この場合、実装の部分は二次請として別の会社に外注するなどの方法をとる。

「内製化率が低い=悪?」

外販率とは異なり文脈にも依存するのだが、昨今の風潮では「内製化率が低い = 悪」とされることが多い。

「手を動かさない、システムのソースすら読めないエンジニアなんてナンセンスだ!」という理屈なのだろう。たしかに外注先から渡されたコードを碌にレビューすらできないような惨状であるならば、内製化でもして下流技術を再取得するべきと考えるのはある種自然なことである。

ただ「会社が戦略的に制御した上で」というエクスキューズこそ入るが、内製化率が低い自体は悪い事では無い。マネジメントや上流工程ができる人材はなんだかんだで単価が高いし潰しが効く。なのでプロパーをそのような人材でかためて、下流は外注するというのは真っ当な企業戦略である。

このような企業は上記の『風潮』に直面した時、どのような態度をとるのだろうか?自分を貫くにせよ、方針をかえるにせよ長期的な目線で物事を考えて欲しいものだ。(なにさま)

四分類の特徴

上記の推測をもとに四分類の特徴をそれぞれ考えてみる。

1. 外販率が高く、内製化率が高い。
 一番優秀そうに見えるが、中途半端なレベルだと独自の強みが見出しづらい種類でもある。また顧客の種類および職種の種類からして、最もキャリアのギャップが出やすいパターンでもある。
2. 外販率が高く、内製化率が低い。
 およそ数年前までの大手SIerを想起させる、会社としては安定しやすいパターンではないだろうか。優秀な外注先と信頼関係を結べるかが大事になる。現在は行き過ぎた効率化を『反省』し、徐々に内製化を高める態度を取る会社もある。この『反省』の結果によっては1にシフトする可能性もあるかもしれない。
3. 外販率が低く、内製化率が高い。
 このパターンは少し注意する必要がある。というのも、この状態はあくまで一時的なものである可能性があるからだ。つまり会社が「得意の技術力を活かして、他の会社にシステムを売り込む」1のパターンに向かったり、「上流特化」のために4のパターンに移行する。
4. 外販率が低く、内製化率が低い。
 上流工程やベンダーコントロールに特化できる。また、業務ドメインも親会社の分野のみなのでナレッジが無駄になりにくい。「扱う範囲の狭さ」×「手を動かさない」の合わせ技で1番揶揄される分類でもある。どうか気弱にならずに自信を持って日々の業務に取り組んでいただきたい。(なにさま)

おわりに

あたりまえの話だが、この四分類のうちどこで働くべきかは個人の性向とマッチする所が大きい。

そのような会社を見つけるには自己分析および企業研究が基本になることは言うまでもない。

また、今回挙げた2つの指標はHPに載ってないことが多い。機会が有れば是非会社説明を受けて逆質問をしよう。

最後に上記の分類を炙り出すために効果的?な逆質問を羅列してこの記事を終わる。使っていただければ幸いである。

外販率に関して
 ・(ストレートに)外販率をご教示ください。
 ・グループ会社以外のお客様としてはどのような業界が多いでしょうか。
 ・貴社では一つのお客様の所で長く働く事になりますか?もしくは2.3年程度の間隔で様々お客様のシステムに携わることになりますか?

内製化率に関して
 
・貴社のエンジニア職種の一般的なキャリアプランをご教示ください。
 ・貴社で長く働くにあたって最も必要なスキルはなんでしょうか?
 ・システム開発の際、プロパーがコードを触る機会はありますか?
 ・技術者としてずっと働いていきたいと考えています。スペシャリストとして貴社で長く貢献する道はありますでしょうか?

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