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システム子会社について考える

システム子会社とはなんだろうか。

「システム子会社」- IT業界以外の人々はその言葉すら知らないであろう。しかし当方もこの会社群を他業種の人に正しく説明しろと言われても自信がない。「ある会社のシステム開発運用を担う仕事でー、でも情シス部門とは違っててー」みたいな、聞き手になんの価値もない話をさらしておしまいになる。

このシステム子会社、「日本のIT業界」を語る際に頻繁に登場する存在でもある。しかしその文脈は褒めそやす文脈や肯定的なものではなく、なんとなく小馬鹿にされたり揶揄の対象になったり。挙げ句の果てには「日本IT業界の問題点」のように取り上げられることもある。日本にジョブズが現れないのは彼らのせいなのか。

一方、私は現職でさまざまなシステム子会社の人と話す機会をいただくことがある。そして、もちろんだが会社ごとに特色や強みがある。そんな彼らが上記のような根拠なきマイナスイメージを持たれているのは側から見ていて、なんというか非常に「損」しているという印象を受けてしまう。ATMが稼働し続けるのも、コンビニからマイナンバーカードで住民票を印刷できるのも、病院でナースコールのボタンを押したら看護師が駆けつけてくれるのも、彼らの下支えなくしてはあり得ないのに。

思いを馳せる

ただ、ここで証拠もなく彼らを持ち上げすぎてもそれはそれで嘘くさい。そこで、システム子会社に対して自分なりの考察をしてみたい。仕事には全く役には立たないが、少しこの業界に対しての見え方が変わると思う。

システム子会社の定義

「システム子会社」または「情報子会社」とは何だろうか。ググってみると、このような定義がされている。

ユーザー企業の子会社で、主に情報システムの開発・保守・運用を手がける企業のこと。

https://sp.otsuka-shokai.co.jp/words/system-subsidiary-company.html

出典: 大塚商会

上記の出典先はシステム子会社の誕生の経緯や課題、近年の傾向などが細かく書いてあり、正直これで十分じゃんという気がしてくるが、ここで止めるのもつまらないのでもう少し掘ってみる。

まず「システム子会社」という言葉の成り立ちに関して考えてみる。まず「子会社」という言葉。「親会社の出資比率が50%を超える被支配会社」と言う定義があるが、どうやらこの限りではないらしい。

例えば、出資比率が50%を超えない場合でも、「その会社の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること」が認められたりすると子会社に認定される。

次に「システム」の方だが、これはそのまま捉えるより「システム開発会社」という言葉が省略、変化したものと考えた方がわかりやすいと思う。

つまり「システム子会社」とは、「親会社の出資比率が50%を超えるシステム開発会社」や「その会社の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在するシステム開発会社」と定義できる。

逆に言えば、上記以外にシステム子会社をくくれるものはない。つまり「親会社であるユーザー企業のシステム開発、運用、保守をしなければならない」なんて要件は存在しないのだ、定義上は。

子会社の出自

システム子会社設立の経緯に「親会社や情報システム部門が独立」、「コストセンターからプロフィットセンターへの転換のために子会社化」など親会社から分離したものが一般的かのように挙げられている。ストーリーとしても納得しやすいものだ。

ただ、以下のようなケースもある。
1. YJK Solutions
富士通と日本郵船を出資先にもつシステム開発会社。公式サイトの「沿革」をみるとこう書いてある。

日本郵船株式会社及び同関連会社郵船コンピューターシステム株式会社(現郵船コーディアルサービス株式会社)両社の出資により払込資本金2,000万円にて郵船情報開発株式会社を設立。

合弁会社、いわゆるジョイントベンチャーみたいなものだろうか。情報システム部門から独立したとは少し毛色が違うようだ。

2. DACS
NTTデータとりそな銀行を出資先にもつシステム開発会社。公式サイトの「沿革」をみるとこう書いてある。

株式会社大和銀行(現株式会社りそな銀行)と株式会社構造計画研究所の共同出資で「株式会社総合システム研究所」を設立(大阪市東区(現中央区)安土町)

こちらも、共同出資によるジョイントベンチャーだったようだ。ちなみに、NTTデータ×りそなという組み合わせの出資先をもつシステム子会社として「NTTデータソフィア」というものもあるが、こちらはあさひ銀行の流れを汲むため出自がやや異なる。また厳密に書くとDACSは「りそな銀行」が出資しているが、ソフィアの方は「りそなHD」が出資している。この違いが何を示しているのか、今の私には推測することすらかなわない。

3. デジタルプロセス
今では富士通から100%出資をうけているが、「沿革」を見ると、もともとは日産自動車のシステム開発会社「日産システム開発」として誕生。2000年ぐらいに富士通が全株式を取得したそうだ。

このように富士通や日立、NTTデータ、IBMなどにシステム子会社を売却してるケースもそこそこある。このような動きは、なんとなくだが、2000年代前半に流行ってるように思える。

なお日産関連のシステム開発会社として「東京日産コンピュータシステム」もある。こちらはより日産との関係が強いと思われるが、その実態の把握はwebサイトからでは限界がある。

外販について

外販とシステム子会社は切っても切り離せない。つまり、システム開発・運用に関するノウハウを他の会社に提供すると言うことだ。しかし、親会社と関係のある業界のみを顧客にする必要はない。銀行系のシステム子会社が製造業にいったり、流通業のシステム子会社が流通業の会社をターゲットにしても良いのだ。

外販「率」について

企業の売り上げ、利益のうち企業・グループ外からの売り上げの比率をあらわす。会社によって公表してたりしてなかったりする。「外販率○○%」とググったところで出てこない。企業の戦略に関わるところなのである程度は仕方がないのか。効率的な調査方法を知ってる人がいたら、是非教えて欲しい。

システム子会社の開発について

開発手法・体制こそ会社どころか、それこそプロジェクトによってさまざまだろう。一つにくくって考えること自体、非常に乱暴な試みである。それらを承知の上で、開発手法を以下の二つに大別できると仮定してみる。

1. 設計-実装-運用全てを自社で賄う手法
2. 上流以外の工程を別会社に委託する手法

繰り返しになるが、開発手法・体制はプロジェクトごとによってそれぞれ色がある。1と2のプロジェクトが両存する会社もあるだろう。(というか、大多数か)また、あるシステムを開発する際にコア技術は自分たちで一気通貫で携わり、サブシステムはアウトソーシングするなどの方法も考えられる。

わたしがここで言いたいのは、プロジェクトが1、2の手法を選択する場合、それらは成果物を効率よく作るための技術的観点から選択しているのではなく、経営方針や戦略が大きく関わっているのではないかという事だ。

分類してみる

以上の論から、システム子会社を4つに分類してみる。なお、便宜上上記二つの開発手法のうち、1を「内製化率が高い」、2を「内製化率が低い」と表現する。
1. 外販率が高く、内製化率が高い。
2. 外販率が高く、内製化率が低い。
3. 外販率が低く、内製化率が高い。
4. 外販率が低く、内製化率が低い。

正直、この分類が現実を明確に把握するために有益なのかという確証はどこにもないが、間違っていたところで私が恥をかくだけなのでご容赦いただきたい。また、偉人の言葉を歪曲して借りれば、「間違った方法を発見した」ということで、0.01ミリぐらい人生にとって有益なのかもしれない。

なおこれらについては、次回の記事にて考察を深める。

おわりに

4象限のグラフをカッコよく描くソフトってなんでしょうね。エクセル?パワポ?

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