#178 佐藤航陽『未来に先回りする思考法』読書アウトプット

つい先日、社内イベントの講義だったかVoicyだったかで紹介された本を読んだアウトプット。
佐藤航陽さんの『未来に先回りする思考法』という本です。
テクノロジーの進化の話から始まり、社会システムの話、そしてタイトルにある未来に先回りする話が綴られています。
肝心の未来に先回りする話はまだピンと来ないのですが、それまでの話で印象に残った部分と感想を書き残しておきます。

日本で選挙システムが導入されたのは明治時代の頃。もう、100年以上も前のことです。そして、そのときから、そのシステムはほとんど更新されていません。
明治時代と現代では、社会的な状況がまったく異なります。ネットが情報収集と発信のベースになっている現代の若い人たちにとっては、特定の時間に特定の場所へ紙の投票用紙に名前を書きに行く行為に疑問を感じない方が難しいのです。
私は、投票率が低下しているのは若者が怠慢になっているからではないと考えています。

環境や状況が変われば、問題解決のための手段も変わります。既存のプロセスを通さなくても従来の政治の目的は達成可能な時代になりつつある時代に「投票率を上げよう!」と叫び、他の選択肢を検討しないのは、思考停止とさえいえるでしょう。
本当に考えなければいけないのは、どのようなシステムであれば民意をスムーズに汲み取れるか、社会の課題を効率的に解決できるかです。惰性だけで従来のやり方を踏襲し続けることに意味はありません。今考えるべきは投票率を上げる方法ではなく、時代に合致しなくなったシステムに代わる新しい仕組みの方でしょう。

P128「投票率が低いことは悪なのか」

澤さんの深夜の福音ラジオでもルールについて似たような話がありました。
そのルールが決められたときから環境や条件が変わっていても、未だにルールが変わらない。
人間は変化を嫌うものだとは思いますが、変化しないと退化はしても進化はしないでしょうし、思考停止したままだと、失われた30年が、40年にも50年にもなってしまいそうです。
自分の仕事も新しいやり方を取り入れず、慣れたやりやすいやり方をしていると、多少スピードは上がってもあくまで経験値によるだけのもので効率化にはならないと思います。
「今までこうだったから」でなく「今まではこうだったけど」と環境や条件の変化に柔軟に対応できる思考に切り替えていきたいです。

民主主義の目的は、民意を汲み取り、利害を調整し人々の不満を解消すること、と表現できます。議会や選挙は、あくまでもその手段にすぎません。
しかし、時が経つにつれ、いつの間にか手段である議会や選挙のほうに重点が置かれ、派閥が生まれ、未来の目的が形骸化してしまいます。価値を生み出すための手段にすぎなかった資本が、自己増殖を目的化してしまうプロセスもこれと近いものです。
あるシステムでは、社会に浸透してしばらく時間が経つと「どんな必要性を満たすために生まれたのか」という目的の部分がかすんでしまい、そのシステム自体を維持することに目的がすり変わってしまうというのも、繰り返し見られるパターンです。だからこそ私たちは、定期的に原点に立ち返ることが必要になります。

P143「目的への回帰」

これは私が仕事でもやってしまっていることです。
ある目的を達成するための手段として作業しているのに、いつの間にかその作業を完了することが目的になっていることが多々あります。
本来は、お客様により良いサービスを提供する目的のために事案の承認を得るはずが、いつの間にか承認を得ることが目的になり、さらにはその説明資料を作り上げることが目的になってしまいます。
原点を見失うと、本来の目的が作業にすり替わってしまい、こちらが伝えたいことと相手が聞きたいこととがズレてしまうなんてことが起こりがちです。
原点回帰は意識しているものの100%はできていません。
時間に追われても目的は見失わないよう意識し続けたいです。

Googleのマネージャーがおもしろい話を聞かせてくれました。Googleには有名な「20%ルール」が存在します。就業時間の20%は、会社から指示された業務以外の自分の好きなプロジェクトなりアイデアに時間を費やしてよいというルールです。外部からは、このルールはGoogleが社員に与えた太っ腹な福利厚生のように捉えられがちです。たしかに、創造性に溢れた社員を引きつけるための戦略としてはとても優れているように思います。
しかし、私がその点について確認したところ、そのマネージャーは意外な答えを返してくれました。
この仕組みは「リスクヘッジ」のためのものなのだ、と。

Googleを率いるような優れた経営者も、いつも正しい決断をし続けられるとは限りません。企業が大きくなればなるほど、創業者たちでさえすべての市場を正しく把握することは難しくなってきます。ネットの市場は変化が速いので、トップが意思決定をひとつでも間違えば、途端に時代に乗り遅れるリスクがあります。
「だから、数万人いる社員の業務時間の20%をそのリスクヘッジに充てているんだ」と、彼は話してくれました。もし仮に創業者の意思決定が間違っていたとしても、数万人の社員の20%の時間を費やしたプロジェクトの中に正しい選択があれば、企業は存続できます。企業の80%のリソースを経営陣の意思決定どおりの仕事に費やし、残りの20%のリソースを社員の意思決定に任せる。これにより、企業全体がおかしな方向にならないようにバランスをとっているのです。
この仕組みは、Googleの経営陣ですらも常に正しい意志決定をすることは不可能だ、という前提に立ってつくられています。どれだけ多くの経験を積んでも、この世界の「不確実性」からは逃れることができないのならば、いっそのことそのリスクも理解した上で組織をつくるという理詰めの選択の結果が、あの「20%ルール」なのです。この話には衝撃を受けました。

P183 -P185「パーソラナイズの誤謬」

ここ数年、20%ルールを取り入れている企業が増えているようです。
私が勤める会社でも取り入れており、私自身も20%の稼働を使って他の組織の業務に参画しています。
「なぜ20%なんだろう?」「2:8の法則で20%?」と思っていたのですが、Googleを参考にしていることは間違いなさそう。
しかし「20%のリソースを社員の意思決定に任せる」という経営のリスクヘッジではなく、社員のキャリアアップや組織の活性化が目的とされているところが違います。
そして、Googleでは非常に視座の高いところから生まれたルールだと知ることができました。
誰もが使うサービスを生み出すのもすごいですが、他者が真似するルールを生み出すのもすごいですね。


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