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オンライン読書会 開催報告 (6月18日)

5月の読書会では、初めて「女性の生き方」というテーマのようなものを設定して開催予定だったのですが、参加予定の方の急なご都合の変更などで結局開催とならず…改めて6月にリベンジとなった次第です。
というわけで、今回の推し本のテーマも引き続き「女性の生き方」について。 

今回の開催日をポストしたところ、リピーターのHさんより「洋書でも良い?読書会って日本語限定?」などの質問を頂いたので、もしかしたら洋書で素敵な女性が大活躍するような本を紹介してくれるのかな、と期待していたのですが、予想にたがわずとっても魅力的な本をご紹介いただきました!

ご紹介いただいた推し本はこちら。
「The Measure of My Powers: A memoir of Food, Misery, and Pari」by Jackie Kai Ellis

(Amazon.comではこちら)

https://www.amazon.com/Measure-My-Powers-Memoir-Misery/dp/0147530393

著者の Jackie Kai Ellisさんは、バンクーバーに住むChinese Canadianの女性。
そして彼女、この本とHさんの出会いには、運命的なドラマがあったのです。

あるとき、バンクーバーを訪れ、とてもオシャレで可愛いカフェに立ち寄ったHさん。そのカフェの美味しいクロワッサンに感動! 
パリ通の彼女をうならせたクロワッサンに感激してお店のカードを貰ったところ、ショップカードもカフェと同じくとってもオシャレ。デザイン関係のHさん、すぐにピンときました。「このお店、デザイナーの手によるものでは…?」

バンクーバーから帰ってからすぐに調べてみると、このお店のオーナーはやはり元デザイナーでフレンチベーキングの世界へ飛び込んだ女性、Jackie Kai Ellisさんであるということが分かりました。
(ちなみに、そのお店の名はBeaucoup Bakery & Café、現在は他の方がオーナーとなっています。)

Jackieについてさらに調べてみると、SNSでの発信やパリ旅行ツアーのオーガナイザーなど、彼女自身の「好き」がいっぱい詰まった情報がたくさん!そうして調べていく中で、この自伝に出会ったのでした。

デザイナーとしてクリエイティブ・ディレクターまで昇りつめたJackieの、華麗な転身についてのキラッキラ・キャリアチェンジ!な本かと思いきや……実はうまくいかなかった結婚生活、ストレスによるうつ病、自分が何をやりたいのか分からない…ずっと光の差さない闇の中でもがいていたような人生の中で、彼女をほんのひと時でも慰めてくれたのが「食べもの」だった、というなかなかヘヴィな物語だったのです。 

自分のキャリアのすべてだったデザイナーの職を辞し、パリへパティシエ修行に出た時、著者のJackie はすでに30歳を越えており、その転身にはかなりの勇気と決断力が必要だったと思います。
そんな中でも、彼女を慰め、勇気づけたのは、食べものとそれにまつわる思い出たち。

そんな彼女の半生に詰まった思い出と、そのレシピまで載っている素敵な本のご紹介でした。HさんはJackieさんの大ファンとなり、著書にサインをもらいに行くまでになったそうです。

Hさん曰く、この本は表紙からも一見華やかでキラキラに見えるけれど、Jackie がゴールを失い、人生がうまくいかずにもがき続ける部分は非常に暗く、読んでいるほうが苦しくなるくらい、とのこと。それでも自分の「好き」を見失わず、新しい夢を追い続けた彼女の姿は、読んでいて心にグッとくるものがあるはず。


さて、華やかなパリの風吹くHさんの推し本の次に、私が持ってきた推し本はこちら。彼女もすごいぞぅ。
「職業は武装解除」by 瀬谷ルミ子

「世界が尊敬する日本人25人」(2011年・Newsweek日本版)、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2012」(2011年・日経WOMAN)、「International Leaders Programme」(2015年・イギリス政府)に選出。
2015年、「戦後70年談話」の有識者懇談会メンバーに最年少で抜擢された著者による自伝的エッセイです。

彼女の専門は、DDR、すなわち、兵士の武装解除(Disarmament)・動員解除(Demobilization)・社会再統合(Reintegration)。
紛争のあった地域での治安回復のためのSSR (Security Sector Reform=紛争後の復興、平和構築、治安改善)の一分野だそうです。
この単語を見ているだけでも、命の危険と隣り合わせの職業だということが分かりますよね。

日本人の女性で紛争地帯に関連する専門家ということから、小さなころから特別正義感の強い、視野の広い方だったのかと思っていたのですが、さにあらず。

群馬の田舎で、海外渡航とは縁のない家族と、普通につつましく暮らしていた学生生活。高校卒業後の進路はどうしようか、なんて考えていた彼女の人生は、高校3年生の春に新聞で目にした一枚の写真によって大きく変わります。

ルワンダで起こった紛争により、難民となった親子。コレラで死にかけている母親を、泣きながら起こそうとしている3歳くらいの小さな子供が涙を流しながらカメラを見つめる姿。

その写真を見た瞬間、彼女は強い衝撃を受けます。
「私と彼女たちの間になるのは、カメラのレンズひとつ。」「高校三年生の私は、お菓子を食べながら、死にゆく彼女を眺めていた。」

紛争地帯で、自分のせいではないのに、権力のあるものに翻弄されるがままの人生を送る人々と、努力さえすれば状況を変えられる社会に生きている私―。そこから、紛争地帯であの難民母子のような人々を助けるための職業に就くにはどうすればいいか、彼女の試行錯誤が始まります。

彼女の凄いところは、どうなりたいか、何をしたいかのビジョンがとても明確なことと、そこへ近づくためのアプローチがしっかり練られていること。非常な戦略家でもあり、かつ強い意志力があるところに道が開けていくのだな、と感動を覚えます。 

難しい武装解除の例や手に汗を握る交渉術、武器を捨ててもらうための理不尽としか言いようのない駆け引きなど、紛争地帯のエピソードだけではなく、彼女自身の経験談やキャリア論も詰まっており、日本とは全く違う世界の現実を垣間見ることができます。そして、その国際的な平和構築支援の中で、日本がどのような役割を果たせるかも。

この本は広く読まれるべきだと思っていたら、学校の教科書にも載っているそうです。これからの世界平和を担う人材の心に、火が灯っていることを願わずにはいられません。

今回も少人数だったので、たっぷりと本の話ができた会でした。
しかもどちらの著者も、女性として自分の足で立って、人生を切り拓いてきた方たち。
短い時間でしたが、素晴らしく胸が熱くなるような本たちでございました!


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