都市を少しでも涼しく クリマアトラス

こんにちは、うちです。

「日が出ると暑い。風の通りさえよければもっと気持ちがいいのに。」
みたいに思ったことはないでしょうか。

海に近いと「海風が入ってくるのは場所柄、当然だ」と感じられるかと思いますが、ちょっと内陸に入っても風を感じられる都市と感じられない都市というものがあるかと思います。

その違いを我々人間が生み出せるとしたら、正直頑張ってほしいですよね。


生み出せます。

もちろん一個人の頑張りでは無理です。残念ですが。
でも、その考え方はもう30年前から試みられていて、
様々な方が取り組んでおられます。


そう言った都市で計画の際に参考になっているのが
「クリマアトラス」です。
ただ、あまりメジャーではない代物かと思いますので、まずは紹介から。

クリマアトラスとは

クリマアトラスは日本語では「都市環境気候図」と訳されます。
簡単に言うと都市全体の気流性状や温熱環境などを地図上に示して、現状の都市の大気質や温熱環境を把握し、今後の計画の根拠にするなどの活用方法が考えられます。
都市と一口に言っても、各々の都市で置かれている状況は異なりますから、都市ごとにクリマアトラスが作成されることが望ましいです。
クリマアトラス(Klimaatlas)は主にドイツで作成されている例が多く、最初に提案されたのもドイツがはじめでした。
単語自体もドイツ語で気候を表す“クリマ(Klima)”と地図集を意味する“アトラス(Atlas)”を組み合わせて表現されています。

ドイツでのクリマアトラス

画像1

参考:Amt fuer Umweltschutz und Nachbarschaftsverband Stuttgart: Umweltatlas Klima Stuttgart, Klima-analyse und Hinweise fuer die Planung, Nachbar-schaftsverband Stuttgart (Stand 1991)


クリマアトラスの代表格として知られているのが、シュトゥットガルト(Stuttgart)を対象としたものです。(上図)

内陸都市でもあるシュトゥットガルトは当時、大気汚染の問題が大きく取り上げられており、都市を形成する際にも風の通りをよくする都市計画が強く求められていました。そこでクリマアトラスを作成したのが、Wilhelm Kuttler先生です。
(一度、学会でお会いした際に、食事の席でもご一緒させていただきましたが、たいへん熱心に研究者としてあるべき姿について語ってくださいました。とても良い思い出です。)
クリマアトラスが作成されたおかげで、無秩序に建物が立ち並ぶことは食い止められ、空気質の改善とともにクリマアトラスの有用性が認知されるようになりました。

日本のクリマアトラス


日本でもクリマアトラスは作成されています。
誰が作成しているかというと、先ほどのKuttler先生もメンバーである、ドイツの都市気候研究グループと連携を密にしている日本の研究グループがあります。

その先生方を中心に、仙台や長野、神戸など各地でクリマアトラスの作成及び、そのクリマアトラスを基にした計画の提案等が行われています。
ドイツとの違いというと、現在の日本では大気汚染については問題となっている地域は少ないので、都市の温熱分布や気流分布の把握という面が強いように感じられます。

また、クリマアトラスという名前は用いていませんが、地球温暖化にともなう将来の都市気候予測の研究も進められていますので、建物や都市の設計もそれらをベースに立案されるような動きにつながるといいなと個人的には考えています。

地球温暖化とヒートアイランド現象

地球温暖化はある意味で止めることはできません。省エネルギーといわれていますが、根本は石炭や石油をどれだけ使わないかという点です。研究開発は日夜行われておりますが、急に解決するような代物ではありません。

対して、ヒートアイランド現象はまだ直接的に『緩和』することが可能です。そして、現象を『緩和』するためには、まず相手のことをよく知るところから始まります。

そのため、『緩和』に非常に効果を発揮できるのが、このクリマアトラスだと信じています。
今後も都市計画や街区の設計の際にはこのクリマアトラスが活用され、
クリマアトラスが現在ない地域の場合は作成した上で
多くの議論がなされることを強く望みます。

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