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「おーい!落語の神様ッ」

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創作大賞2024応募用の作品です。落語に少しでも興味を持って貰えたら嬉しいという思いで書きました。
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記事一覧

おーい!落語の神様ッ 第七話

 師匠宅へ行くのは正月以来だった。その時の咲太は師匠とはろくに話さず、挨拶が済んだらさっ…

おーい!落語の神様ッ 第六話

 咲太は自分の体内時計が狂ってしまったことにショックを受けていた。落語家になって十三年。…

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おーい!落語の神様ッ 第五話

 夏風亭とんびが国民的演芸番組『芸点』を降板すること、その理由が、まだ幼く難病の愛娘のた…

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おーい!落語の神様ッ 第四話

 せっかく禁酒を始めたばかりなのに台無しになるといけないので、咲太は爺さんと一杯やりたい…

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おーい!落語の神様ッ 第三話

 咲太があの爺さんに会ってから一週間が経とうとしていた。日本で唯一の演芸専門誌、東京瓦版…

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おーい!落語の神様ツ 第二話

 自宅から歩いて5分もかからない場所にある居酒屋『いつきや』の暖簾をくぐると、いつものよ…

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おーい!落語の神様ッ 第一話

 紋付羽織袴姿の男が深夜の浅草を千鳥足で歩いている。この街の人達は気にもとめない。「どうせまたどっかのバカが飲み過ぎたんだろう」と見て見ぬふりをしてくれる。  どっかのバカの正体は、この秋二ツ目から真打に昇進が決まっている落語家の紅葉家咲太、三十四歳。落語の世界ではまだまだひよっこの若手だ。なけなしの金をパチンコで擦って、ツケでやけ酒を飲んだ帰りだった。 「ちくしょう。死んでやる。死んでやるぞ」  咲太はガラスに映る自分に向かって、吐き捨てるように言った。 「真打昇進の晴れの