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【BONUS TRACKインタビューvol.10】 下北沢に香る「台湾」の匂いとカルチャー。大浪漫商店(BIG ROMANTIC STORE)寺尾さん

2020年4月にオープンした『BONUS TRACK』は、“あたらしい商店街” をテーマに、飲食店や本屋さん、ヴィンテージショップにレコード屋さんなど、さまざまなお店がつらなる複合型施設です。

ここでは、そんなBONUS TRACKに出店しているそれぞれのお店をインタビュー形式でご紹介。個性あふれるお店がずらりと並ぶBONUS TRACKの魅力を、ぜひお楽しみください。

魯肉飯(ルーローハン)に台湾ビール、レコード。台湾のカルチャーが集うお店

ーーBONUS TRACKインタビュー、第十弾。今回は、BONUS TRACKに新たな「台湾カルチャー」の風を吹かせるお店『大浪漫商店(BIG ROMANTIC STORE)』の店主・寺尾さんです。よろしくお願いします!

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寺尾さん:よろしくお願いします!

ーーまずはじめに、大浪漫商店さんについてのお話から聞かせてください!

寺尾さん:『大浪漫商店(BIG ROMANTIC STORE)』は、2020年7月末にオープンした、台湾のソウルフード「魯肉飯(ルーローハン)」専門スタンドです。魯肉飯(ルーローハン)とは、日本でも少しブームになった食べもの。お米の上に豚のバラ肉やお野菜、ゆで卵などが乗った丼です。

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寺尾さん:また、魯肉飯の他にも、台湾のビールやジュース、デザートなどもご用意しています。それに加えて、自社の音楽レーベル『BIG ROMANTIC RECORDS』が出しているCDやレコード、Tシャツなどのグッズも販売しています。いわゆる「台湾のカルチャー」に触れていただけるお店ですね。

ーー元々、寺尾さんは台湾に住まれていたんですか……?

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寺尾さん:そうですね。音楽関係の仕事で台湾に7年ほど住んでいたんですよ。現地で音楽レーベルを『BIG ROMANTIC RECORDS』を立ち上げたり、日本発のインディーズバンドのライブを開催したり、フェスなどのイベントを打ち出したりと、「オーガナイザー」としての仕事をしていて。それらを通じて、台湾の文化に長く親しんできました。

「人に喜んでもらいたい」という強い思いと、「仕事」としての音楽

ーーこれまで音楽関連の仕事に関わってきたとのことですが、ちなみに、どういった経緯で「音楽」を仕事にされたんでしょうか?

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寺尾さん:元々、兄の影響で音楽に興味を持ったんです。小学校の頃に初めて自分でCDを買って、それをずっと聴いていて。「米米CLUB」のCDですね。懐かしいな(笑)。中学校に入ったタイミングで、兄から教えてもらった「THE BLUE HEARTS」の音楽を聴いたときに、(これなら俺にもできるんじゃないか……?)と思ってギターを始めました。

ーーそれは、どのように「仕事」へつながっていくんですか……?

寺尾さん:正直、「プレイヤー」としての仕事には繋がりませんでした。高校生の頃も、大学生の頃も、大学を卒業し就職してからもずっとバンドを続けていたのですが、「ミュージシャン」としての仕事はしていなくて。

その当時お世話になっていた先輩が、青山の『月見ル君想フ』というライブハウスで制作の仕事をしていたのですが、そこにお誘いしてくださったんです。アーティストのオーガナイズから、イベントの企画・運営まで、実際の演奏以外の仕事はなんでもやりました。それこそが、正式に音楽が「仕事」になった瞬間ですね。

ーー1人のバンドマンからオーガナイザーになるにあたって、心境の変化はありましたか?

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寺尾さん:心境の変化はかなり大きかったです。もともと「趣味」だった音楽が、ひとつの「仕事」になったわけですからね。月に10本も20本もイベントを打っていた時は、正直もう、自分でも何をやっているのか分からないぐらいに忙しかった(笑)。

でも、楽しかったんです。根っこには「人に喜んでもらいたい」という気持ちが強くて。仕事の99%は辛いことでしたが、残り1%の喜びはとっても大きかったですね。お客さんが喜んでくれて、アーティストのCDを買ってくれた時なんかは、心の底から嬉しかったです。すごく大きな「やりがい」だったように思えます。今の仕事にも、その考えは通じているような気もしますね。

BONUS TRACKに「台湾のお店」を出すまで

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ーーそもそものお話になってしまうのですが、台湾カルチャーのお店を出すにいたった経緯はどういったものなのでしょうか……?

寺尾さん:僕が関わっていたライブハウス『月見ル君想フ』が、台湾に店舗を出したんです。青山のライブハウスで働いたのちに独立し、自分がそのお店のオーナーになって。その後、台湾にてビジネスの準備をしつつ、現地に会社を立ち上げ、台北に『台北月見ル君想フ』をオープンしました。

そこは、一階にレストランがあり、地下にライブハウスがあるような形態で。日本のアーティストを呼んでアコースティックライブを行ったり、映画を上映したりしながら、「台湾と日本の文化交流」をテーマに活動していました。

ライブハウスでは、自社のレーベルである『BIG ROMANTIC RECORDS』の作品も販売していたのですが、もっとしっかりとレーベルのグッズなどを販売できる「場」があると面白いよなぁとは思っていて。

ーーそれは、日本にですか?

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寺尾さん:そうですね。ただ、台湾にいた当時から日本の物件を探してはいたものの、なかなか見つからなくて。探しても探しても、見つからない。そうしたタイミングで、現地では「旧正月」の季節がやってきたんです。2月の頭ぐらいですね。

そこでまとまったお休みが取れたので、日本に戻ってきていざ物件を本気で探そう、と思って。そうしたところ、3月末、新型コロナウィルスが流行ってしまったんです。当然台湾には戻れず、現地で予定されていたイベントなどもすべてキャンセル。しかも、日本に戻ってきたは良いものの、青山の『月見ル君想フ』も営業ストップでした。

ーーかなり苦しい状況ですよね……。

寺尾さん:正直、かなり苦しかったですね。しかも、そのタイミングで一人のスタッフがライブハウスを離れてしまうことになって。その方にお話を聞いたところ、何やら下北沢の『BONUS TRACK』というところに勤めることになった、と。

ーーえ、偶然ですか!?

寺尾さん:……まさに偶然ですね。そのスタッフからお話を聞いて、BONUS TRACKの方にすぐお話を聞き、結果、僕らが作りたかった “レーベルのグッズなどを販売できる「場」” をこのBONUS TRACKにオープンすることになったんです。

ーーライブハウスの経営が苦しいなか、そのような「場」を作ることに踏み切ったのは、どのような思いだったのでしょうか……?

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寺尾さん:もともと「お店を出したい」という気持ちは強かったですし、正直ライブハウスはすごく大変な時期ではありましたが、それをカバーできるような幅広い事業展開をしなくては、と思っていました。台湾で学んだ「とりあえず動かなくちゃ!!」というマインドが活きたように思います(笑)。

ポジティブな「文化の違い」を楽しむ、ということ

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寺尾さん:実は僕、お店で出している「魯肉飯(ルーローハン)」、BONUS TRACKにお店を出すまで作ったことなかったんですよ。

ーーえっ!? そうなんですか……!?

寺尾さん:いまお店で出している魯肉飯は、BOUNS TRACKに出店するためにオリジナルで開発したんです。

台北のライブハウス『月見ル君想フ』の上にあったレストランは、実はスパイスカレー屋さんだったんですよ。なので、お店で魯肉飯(ルーローハン)を提供したことはそれまで一度もありませんでした。でも、台湾に住んでいた7年間で、誰にも負けないぐらいの数の魯肉飯(ルーローハン)を食べてきた自信があります。本当、日本中の誰よりも食べてきたんじゃないかな。

そんな人が作っている魯肉飯(ルーローハン)なんだよ、という突然の宣伝でした(笑)。あれは、「台湾の文化」をみなさんに知ってもらいたくて作ったメニューなんです。ぜひみなさんにも食べてもらいたいですね。

ーーちょっと話はズレてしまうかもしれないのですが、BONUS TRACKに出店した際、きっと苦労したことも多かったのでは……?

寺尾さん:魯肉飯(ルーローハン)を作ることには自信があったので、まったく苦ではなかったですが(笑)、ひとつありました。

言葉が適切かは分からないですが、台湾には「なんでもアリ」といった雰囲気があったように感じます。たとえば飲食店。『キッチンを入り口にドーンと作って、お店の中には食べるための席だけを用意しよう!』なんていうことがザラにあるんです。日本だと、そうは行かない。もちろん法律で許されませんよね。

これは「どっちが良くて、どっちが悪い」という話ではないのですが、たとえば、日本にお店を出す際には、事前に色々なことを調べ、悩み、やっと確認できてからいよいよ実行に移す、という流れが普通だと思います。

それが、台湾だと、やりたいことがあれば何より先に「実行」してしまうんです。技術的な問題やその先の目標などは後で考える、ぐらいの気持ちで。とにかく目標に向かって真っ直ぐ突き進むんです。

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それは、「文化の違い」なんだと思っています。日本にお店を出す際に苦労した、までは行かないですが、その違いは結構面白いなぁとは感じますね。

ーーなるほど。文化が少し違うからこそ、それをポジティブに楽しめるというか。「文化の違い」で言えば、きっとBONUS TRACKに来てくれたお客さんたちも、「台湾のカルチャー」を紹介してくれる大浪漫商店さんを楽しんでくれていると思います。

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寺尾さん:あくまで大浪漫商店は、「日本と台湾の文化交流」を目指していきたいですね。新型コロナウィルスが流行した今はちょっと実現できないですが、ゆくゆくは、台湾のアーティストをBONUS TRACKに呼んでライブをしてもらったり、BONUS TRACK内で『台湾フェス』のようなものを企画してみたりするのもきっと面白いですよね。これからも、台湾の文化をみなさんに楽しんでいただけるような取り組みをどんどんやっていきたいなと思います。


今回のインタビューはyoutubeで公開配信をしたものの一部を抜粋しています。全体のお話については下記のyoutubeよりご覧いただけます。
https://youtu.be/U7GUZLTDFvQ
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取材・撮影/平井 萌 文/三浦 希

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