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ジェーン・スー『ひとまず上出来』は上出来

今日で緊急入院してちょうど1ヶ月。入院生活でできた時間を読書に使うことも多々。今まで出会ったことがないような本をお見舞いがてら送ってくれる人もいるし、私にリクエストを聞いて本を送ってくれる人もいますが、私がその言葉に甘えてズケズケと遠慮なくリクエストした本はジェーン・スーさんの『ひとまず上出来』(文藝春秋刊)。

ジェーン・スーさんのことは『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ文庫刊)を2013年に読んで衝撃、というか抱腹並びに共感して以来、シングル中年の先輩としてその背中を見続けてきました。

最近ではTBSラジオ「相談は踊る」ポッドキャスト「OVER THE SUN」など、耳でも楽しませてもらっていて私の娯楽の多くをスーさんが占めています。(ちなみに最初に聴いたラジオはVOGUEの番組で、スーさんのイメージと違っていて疑問を抱いたものでしたが、上記2番組はスーさん色が強くて好きです。いや、VOGUEのスーさんが嫌いなわけじゃないですよ、違和感あるだけで。興味のある方はSpotifyで検索してみてください。)

さて、ひと月前に突然宣告された急性骨髄性白血病

寛解導入療法と呼ばれる1回目の抗がん剤治療も終盤戦を迎え、今週末か来週には一時退院(といっても1泊ですが…)できるような安定した体調になってきています。なので読書も捗るというものです。

『ひとまず上出来』は、そこに収められているどのエッセイも上出来(ライトで笑えるけどほんのり深い)なのですが、その中で私がひとつ取り上げるなら「ていねいな暮らしオブセッション2021」です。

皆さんは「今日の140字ごはん」という人気のTwitterアカウントをご存じなのでしょうか?私は知りません。

なので調べた。なるほど、140字に収まっている。そしてなんか気の利いたメニューである。しかし料理を知っている人にしかうまく作りこなせなさそうなザックリ感。果たして私に美味しく作れるかどうかトライしてみたいところですが、入院してるのでそうもいきません。

このアカウントの主、寿木けいさんの『レシピとよぶほどでもない わたしのごちそう365』(河出書房刊)という書籍の中からスーさんが引用している文章がコチラ。

《空腹を満たす素敵な食べ物なら街じゅうにある。私は弱いから、ラクなほうに流されてしまうかもしれない。でも、作ることと食べることを誰かの手に委ねてしまったら、取り返しのつかないことになる。だから踏みとどまって、自分を奮い立たせ包丁をもち火に向かってきました。それはたとえば二日酔いの朝でも味噌汁だけはちゃんと作ることだったり、前晩の残りを器に盛りつけ直して食卓を整えることだったり。腰をあげる前は正直しんどいけれど、食べ終わる頃には充足感に包まれる。だから料理を続けられるのだと思います。》

スーさんにはこれが共感できない。なぜなら料理に対する思い入れはないから。だったら何に置き換えたら自分にしっくりくるだろう。そう考えて出したスーさんの回答はコチラ。

私は弱いから、ラクなほうに流されてしまうかもしれない。でも、働くことと稼ぐことを誰かの手に委ねてしまったら、取り返しのつかないことになる。だから踏みとどまって、自分を奮い立たせ鞄をもち仕事場に向かってきました。》

なるほど、仕事人間スーさんらしい回答である。

じゃあ私は一体何に置き換えたらしっくりくるだろう?

料理でも仕事でもしっくりこない。しばらく考えてみたけど思い浮かばない。あれ、私そういう奮い立たせるようなものが人生から欠落してましたかね?と少ししょげながらトイレに向かい便座に座った瞬間に降りてきました。(発明とか歌とかの浮かび方と同じや、知らんけど)

私は弱いから、ラクなほうに流されてしまうかもしれない。でも、学ぶことと知ることを誰かの手に委ねてしまったら、取り返しのつかないことになる。だから踏みとどまって、自分を奮い立たせ鉛筆(マウス)をもち本(PC)に向かってきました。》

あ〜スッキリした。じゃなくてしっくりきた。

学生の間は半ば強制的に勉強させられるものですが、私はその頃から勉強が嫌いじゃないです。そして社会人になってからも英語の勉強をしたり、休職して経営学を学んだり、コロナ禍ではオンラインで心理学を学んだり、不要なのに宅建の勉強をして資格を取ったりしています。

今も白血病や体内で起きていることについて知りたくて、ネットで全文ダウンロードできる太っ腹な『白血病と言われたら』(全国骨髄バンク推進連絡協議会刊)や、『白血病治療』(医学書院刊)という本でシコシコと白血病への知識を深めています。

知は力。

私は知ることで治療を理解し、納得して前向きに取り組むことができます。

人それぞれ、面倒だな〜と思うこともあるけど、誰かの手に委ねずに自分の手でやりたいと思う核のようなものがあるのではないかと思います。

私は弱いから、ラクなほうに流されてしまうかもしれない。でも、○○と○○を誰かの手に委ねてしまったら、取り返しのつかないことになる。だから踏みとどまって、自分を奮い立たせ○○をもち○○に向かってきました。》

あなたの○○はなんですか?

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