木はどうやって水を吸い上げるのだ
そろそろ本格の春となって、あっちこっちで花が咲きはじめる。自然の摂理はよくできたもので、ちゃんと環境の変化を感じとって生命活動を活発化させる。
そんななかで、私がずっと前から不思議に思っていたのが、木はどうやって水を吸い上げているのかということだった。ポンプやモーターなどはないのだ。
ひとりでぶつぶつ言っていてもしかたがないので調べてみた。すると、疑問は簡単だが答えは複雑という、ほぼ予想通りの結果となった。
おもな要素はふたつ。「浸透圧」と「蒸散」という現象だった。
「浸透圧」というのは、水の分子が半透膜を通過して、濃度が低いほうから高いほうへ移動する現象だ。私のプロフィールに登場しているナメクジと塩の関係といえばわかりやすいと思う。
もうひとつの「蒸散」は、葉の表面にある小さな穴(気孔)から水蒸気が放出される現象(蒸発)だ。
箇条書きにすると以下のようになる。
1、根にある「根毛」という細胞が、浸透圧で土中の水分を吸い上げる。
2、蒸散によって葉から水分が出ていくと葉の細胞液の濃度が上がる。
3、その濃度を正常に戻すため、幹や枝から水分を葉に引き寄せる。
簡単にいえばこういうことのようだ。
補足すると、根毛は自らの浸透圧を高く保つために、土中のイオンや糖を積極的に取り込んでいる。
その結果、根毛の細胞液の濃度が濃くなり、これまた浸透圧によって土中の水分が根に移動する。この仕組みは「根圧」と呼ばれるもので、水を押し上げるポンプのような働きをする。
なるほど、と私は膝を打つことになる。
一応、仕組みというか理屈はわかった。わかったが、心の底では「ほんとうかなあ」などと疑っている。
なにしろ、ヒマラヤスギでは樹高が30メートルを超えるものもあり、セコイアという樹種では100メートル近くにまで生長するものもあるのだ。ケヤキなどは奔放に枝を張り、高さばかりか周囲も広げる。そんな枝葉の隅々まで水分を行き渡らせるのだ。
疑おうと信じようと、現実にたくさんの巨樹が存在している。ヒマラヤスギもセコイアも、現実に水を吸い上げているのだ。ああ、悩ましい。
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