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アメリカ留学日記/帰国4日前、しゃんと生きたい

帰国ってのもなんだか変な気がする。まるで唯一の家が日本にあって、ここはただの仮住まいだったように聞こえる。実際そうなのかもしれないけど、心の中では、私はここでもっと頑張りたいという悲鳴に似た声がこだましている。

昨日アメリカを横断するロードトリップから帰ってきて、ようやくパソコンを開いて一人で部屋で作業する時間と心の余裕がもてた。

コツコツと、毎日モーテルで限られたエネルギーで蓄えてきたロードトリップの日記は下書きに眠っていて、それに手がつけられるのはきっと日本に帰ってからだろう。ロードトリップ前に徹夜して出したインターンのアプリケーションは、提出してから2週間返事がないから、おそらく縁がなかったんだろう。3月に出したリーダーシッププログラムからも、3時間前にお祈りメールが来た。

面白そうだと思うものに全部手を伸ばしてきた。うまくいったこともあるけど、うまくいかないことが続くとやっぱり落ち込む。自分の境界線をどんどん広げていく時期は、そろそろ終わりなのかしら。エネルギーは限られている。でも今日も手に入れた情報にインスパイアされて7・8月のイベントに三つも申し込んでしまった。変に忙しくしてどうすんねん。

多分だけど、留学後の自分の生活が不安なんだと思う。燃え尽きちゃうっていうか、密度を失ってしまう気がして。正直、アメリカの大学院に進学したいっていう大きな目標を持っているけど、どうやったらいいか見当もつかない。プログラムのリサーチして、GREの勉強と卒論いいものを仕上げて、教授たちにメールを送りまくって。そうしてやっともしかしたら手に入るかもしれないものなんだけど、圧倒的な倍率を聞いてしまうと、何かプロットツイストが必要な気がして、そして"I'm not good enough"なんじゃないかという感覚に苛まれて、それを打ち消すための理由を探して、直接は関係ないけど興味をそそる機会に手を伸ばしまくる。私はかなり、気が散りやすいみたいだ。

あと5年は頑張ると決めた。自分自身に、5年をあげると。おそらく日本に戻ってからは、かなり地味な生活になるだろう。論文を読み、リサーチを続け、院試に必要なテストの勉強をして、メールを送り続けて。ほら、アニメとか映画だと早送りになるあのシーン。それを半年、歯食いしばって続けるしかないんだよ。うまくいくかはわからないけど。でも、一緒に2週間ロードトリップした友達が、私の目をまっすぐに見て言った。"If you pour your mind into it, you will do a great thing.(本気になれば、君ならすごいことができる。)" その友達が5000マイル車を走らせ続けた横顔を見て、私はdetermination、dedidation、descipline(覚悟、献身、規律)の三つのDを痛いほどに学んだんだ。あとイニシャルD(道中アニメの16話見させられた)。iPhoneのロック画面は、2003年に行われた NASAのプロジェクトSTS-107のスペースシャトル・コロンビア号のメンバーの笑顔の写真。この人たちは、今この世界にいない。地球に帰還する寸前で空中分解されてしまったのだ。20年前に住んでいたテキサス州ヒューストンのNASAスペースセンターで彼らの写真を見たとき、胸がヒュッと締め付けられるのを感じた。彼らの信念、彼らの生き様、そして死。自分の命を賭けることに値することってなんだろう?なんか、ちゃんと、そしてしゃんとして生きたいなと思った。

スペースシャトル・コロンビア号のメンバー

自分で決めたこととはいえ、卒業を2年延ばしたこと、自分のアカデミックなパッションを追求すると決めたことは、やっぱりしんどい時がある。本当にひとりだ。うまくいくかもわからないし、いろんなことを先延ばしにしている気がする。でも、「これは違う」ということもわかる。それを心を無にして選んでいないだけマシか。Linked Inを見ることは、一種の自傷行為だ。”I'm thrilled to announce”から始まる新しい仕事のポジションについたという投稿。自分の生活を成り立たせる方法を持ち合わせていない今の自分にとって、それらの投稿を見ることは、自分の不安を突っついてたまらない。

自己顕示欲、自己実現欲求は収まるところを知らない。きっと、今望むものを手に入れたとしても、収まることはないだろう。今私が持つのは、今とここだけ。あーあ、未来への不安や過去の後悔で今を塗り潰すのはやめよう。アメリカ最後の5日を、家に泊まらせてもらっている友達と過ごして、できるだけ今を感じよう。明日は友達のおばさんの家に行って、わんちゃんを洗うことになっている。あー不安だ。不安を消すのが無理なら、仲良くなりたいな。

明日は、大学の教授にメールすることから始めよう。ほんで、アクティビスト・スカラーに話を聞くプロジェクトの日程調整とドキュメントの作成、メールうち。大学院のリストアップ、奨学金の手続きに必要な搭乗証明書の発行。一個一個、進めていこう。ご縁がないもんはしょうがない、打率は3割で儲けもんだ!

(トップ画の写真は、20年前、父とスペースセンター・ヒューストンで撮ったもの。)

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