しょーますとごーおんですっ
がばりと起きてすかさずスマホの画面で時間を確認。午前9時過ぎ、日曜日。
なんだ休みかと、一目散にベッドへ戻って目を瞑る。と、何やら聞き覚えのある声がする。
「え?休日だからと言って、まだ寝るつもりなんですか?そうやって今日も何一つ生産的なことをせずに時間を無駄にするわけですね、あなたは。」
はあ〜〜うるせ〜〜〜
これだよ。こいつ。誰だよまじで。
人がせっかく優雅に二度寝と洒落込もうとしてるって時に。うるさくって眠れたもんじゃない。
しぶしぶ起き上がって、何となく朝食を食べて、何となくタバコを吸って、何となく空を仰ぐ。ド快晴だな。羊雲もぴょこぴょこはしゃいでら。
「じゃあ、外でも出る?いや、どっちでもいいんだけどね。まあだって部屋の中で過ごしてた方が楽だし…うーん。でもさ〜、お出かけ日和ではあるよね。」
はいはいわかりました出ますよ。出りゃいいんだろ?
でもさ爺。
何に対しても「でもさ〜」って。
何だよ「でもさ〜」って。
不満があるなら初めからそうと言えよ。
それで西荻窪で昼間っから飲んでやろうとなったわけですわ。
酒でも飲んでりゃ少しは受け入れがたいことも易くなる。
個々がまあるい心で世界に対すればまた一歩平和が近づくというもんでしょう。
これが僕なりの社会貢献活動なのだ。
さて、休日の中央線。
平日ラッシュ時を思えば、車内は圧倒的にすいていた。でも、正午過ぎの絶妙な時間帯にしては混んでいたと言えるだろう。
電車に乗っているときは大体スマホ触ったり、本読んだり、窓の外眺めたりしてるんだけど、その時は極力何の情報も入れたくなくて、ただただぼんやり突っ立ってた。が、僕が立ってる隣辺りに大学生と思しき三人組がやってきた。
大学生A「え、この電車どこ行き?」
大学生B「うそでしょ笑」
大学生C「今まで何見てたんだよ笑」
大学生A「てか地図全然読めなくてさあ~」
大学生B「え?いちず?笑」
大学生C「一途?え?笑」
大学生A「いや、地図だって笑」
社内アナウンス「え~次は~荻窪~荻窪~」
大学生B「え?俺ずっと大ぎくぼだと思ってた笑」
大学生A「いやそんなわけないやろ笑」
大学生C「どういうことだよ笑」
面白いほどつまんなくてつい聞き入ってしまった。仲良しなんだね君たち。何してても楽しいんやろな。一生そうやってじゃれあって幸せに暮らせ。こんな捻くれたこと言うと僕には友人がいないんじゃないかと思われそうだがそんなことはない。ちょっと少な目なだけだ。
何を隠そうこの日はその数少ない友人の内の二人を誘っていた。今のうちにこういう貴重な存在を囲ってハッピーアルコールライフの礎を築いておこうという魂胆である。
西荻に着いたのは結局午後三時頃。しかし当然ながら終電までにはまだまだ時間がたっぷりある。今宵は長く楽しい夜になろうぞ。
僕は適当に飲んでるから好きなタイミングで来てよ、と彼らにはそう伝えてある。とりあえず、一人で一杯ひっかけよっと。
一軒目もそろそろこの辺で勘弁してやるかなという頃に一人目がやってきた。そのまま二軒目にはしごしてがばがば飲んでると、そこに二人目の刺客もやってきた。
三軒目に乗り込むころには三人して千鳥足だったが、それでもまだまだと四軒目になだれ込んだ。気が合う奴との酒は美味い。しかし気づけばもう時刻は日付を超そうとしているではないか。明日はリモートとはいえ仕事だし、もう終電も近いから、とあの時本当は離脱するべきだったのだ。
「仕事がなんぼのもんじゃい!半端な気持ちで飲んでんじゃねえ命捧げろ!」
おお、やったるわい。こっちだって好きで仕事してるんじゃないやい!
声でっかでっかおぢさんがそうがなりたてるもので、つい終電を見送ってしまった。
人の代わりに朝日でいっぱいになった始発の列車内、床でぐにゃぐにゃ形を変える影をぼんやりと見つめながらいろんな勘定をする。
財布に残った紙幣が確か二枚…いや三枚か。まあ上出来だ。
昨日は確か三時過ぎから飲んでたから…半日以上は飲み続けてたってことか。
今日は九時から仕事だから帰ってから長くて五時間、いや四時間半くらいは寝れるかな。
ああ、でも楽しかった。この楽しさは数字や文字に還元できるものではない。なんだかんだであのうる星奴らの呼びかけに応えてたら、自分にとって有意義な休日を過ごすことができたな…甚だ不本意だが
がばりと起きてすかさずスマホの画面で時間を確認。午前9時過ぎ、月曜日。
ね、寝坊だ…
おい!なんでこういう時は何も言ってくれないんだよ!なんとか言えってば!
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