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【読書録】愛するということ

エーリッヒ・フロム 著
鈴木晶 訳

“愛”とは、おそらくわたしたちの永遠のテーマだ。

たくさんの映画や本、音楽、あらゆるところでそれはうたわれている。

人によってさまざまな愛のかたちがあるなかで、わたしは自分のなかにぼんやりとしたイメージしか抱いていなかった。

よく言われる「愛する=許すこと」も、いまいちピンとこず、長年ともにすごしている夫婦の間には“情”という名の諦めが漂っていると思っていた。

そんなわたしの前に現れた『愛するということ』。
原題は、The Art of Loving。

直訳すると“愛の技術”だそうだ。
アートは技術って意味ももつんだね。

“愛する”にはコツみたいなものがあるのかな。
わたしの中にもその知識を取り入れておきたい。
そんな目的をもって読み始めた。

いまのわたしにはなかなか難しいと感じるところが多い内容だったが、構成は至ってシンプル。

① 愛する=技術なんだよ
② 愛にはいろいろな対象がいます
③ 現代の愛はこんな感じ
④ 習練をつみましょう

人生経験の浅さからか、②と③は知識として知っておこうとしか感じなかったが、①と④には気づきがあった。


いまって、“愛される”ばかりがフォーカスされている。どれだけよい性格で、かわいくて、清潔感があって…。

けどほんとうに大事に持っていなきゃいけない感覚は、自分から“愛する”のも、自然発生的にじゃなく技術として習得できるということ。

落ちる愛はすぐに冷める。
だれかを愛せる人になって初めて、生涯のパートナーが見つけられるのかもしれない。

フロムによると、理論に精通することと、習練に励むことで愛する技術は習得できるらしい。

わたしが人生でいちばん大切だと思っている、「幸せだと感じられる生活を送る」ためにはここを避けては通れない。


どのような習練をつめば、愛する技術は習得できるのか。
それは、当たり前のようでとても難しいものだった。

前提として意識することは、
第一に、規律を守ること。
    楽しいと感じながら。
第二に、集中。
    ひとりでいられるようになる。
第三に、忍耐。 
最後に、最高の関心を抱くこと。

これができたうえで、自分にできるのは下記とのこと。
客観的にものごとをみる、考える。
自分も他人も、信じる。勇気をもって。

ひとつひとつ難易度は高いけど、家にひとりでずっといる今だからできる、いやむしろ今でないとできないと感じる。

特に、わたしは寂しがりやだと思っているので第二のひとりで集中するなんてこと今までしてこなかった。
自分自身にたいして敏感になることも、これまでの人生では通らなかった道だ。

巷で話題の“セルフコンパッション”ってこのことなのかな。
この本が出版されたのは1956年。
64年も前から同じことが言われてきてるなんて、人ってなかなか変わらないものだ。

自粛生活を送るいま、タイミングよくこの本に出会えてよかった。
ほんとうに今だから読むべき一冊だった。

少しずつ、けど着実に習練をつんで、愛する技術を身につけていきたい。

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