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料理人のゾーン体験について

少し前から、「料理人のゾーン体験」について考えてます
でも、なかなか頭の中で、まとまらないので
今回noteを使って頭の中の二人の自分を使って対話形式でこの
「料理人のゾーン体験」についてまとめていきたいと思います

目次
0.私たち紹介
1.料理人のタイプ分け
2.ゾーン定義
3.ゾーン体験の仮説
4.実体験とまとめ
5.最後に


0.私たち紹介

:今回自分の中のもう一人の自分との対話形式ということで、まずはゾーン体験を説明する方の私を「私」としておきます。よろしくお願いいたします。

あなた:聞き役を担当します。基本聞き役なので、ゾーン体験がわからない人となり切ります「あなた」と呼んでください。よろしくお願いいたします。

:よろしくお願いいたします。では早速本題に入りましょう

1.料理人のタイプ分け

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あなた:さっそく質問なのですが、タイプ分けってどういう意味ですか?和食?とか、中華?とかでしょうか?それとも「気が強い」とか「奥手」みたいな意味でしょうか?

:ちがいます。
タイプ分けとは業種の違いや個人の特製の違いではありません。
今回提案したいのは
「予約型」と「待ち受け型」の二つのタイプ分けです

あなた:「予約型」と「待ち受け型」?どういうことですか?
予約型は、、、なんとなく「お店を予約」することと関係していそうですが
「待ち受け型」?はどういった意味ですか?

:はい。お店のスタイルの違いです
「予約型」とは、あらかじめ予約をいただきスケジュール管理しながら段取りを組み料理を作るスタイルのお店です。
ホテルや結婚式場。民宿やペンション、またメニューが決まっている完全予約制のお店もこの「予約型」のタイプとなります

あなた:なるほど

:そして、「待ち受け型」とは、営業時間の中でお客様が来店し、自由にメニューから料理をオーダー(注文)するスタイルのお店です。
居酒屋さんや定食屋さん、ラーメン屋さんやファーストフードなどなど一般的な飲食店はだいたいこのタイプですし、レストランや料亭で、予約していくとしても、お客様が来店してから自由にメニューから料理を選ぶ場合はこのタイプに属します。

あなた:ん~なるほど。「予約型」は作る料理が決まっている中で準備段取りできる。反対に「待ち受け型」はお客様が来ないと何をどのくらい作るかその時までわからない。そこの違いでしょうか?

:流石です。まさにその通りで、そこが今回の「料理人のゾーン体験」の話の肝になってきます。

あなた:蛇足になるかもですが、、、私の知り合いのフレンチの料理人がよく、「ホテル」と「街場」の違いについて語ります。「ホテル」はまさにホテルの料理人で、大人数で組織として働く人。「街場」は独立して個人店として、開業した料理人やそこで雇われた料理人。今回の「予約型」と「待ち受け型」はこの
「ホテル」と「街場」に違いと似てますね?

:そうですね、ホテルと比較して、「街場」をカテゴリーするのはフレンチの料理人がよく言いますね。だいたいは同じと思ってかまいませんが、
少し捕捉するなら、街場でも完全予約のメニューも一種類ってスタイルもありますし、ホテルでも中にレストランがあって、オーダーで自由にメニューから選ぶスタイルで働く料理人もいますから
今回重要な
「あらかじめ作る料理が決まっている中で準備段取りして料理を作るタイプ」

「お客様の来店後、メニューを決めてから料理を作るタイプ」
の、このタイプ分けが今回のゾーン体験につながりますので、「予約型」と「待ち受け型」で話を進めましょう。

あなた:わかりました。スミマセン、フレンチの友達の話なんか混ぜてしまって。

:いえいえ、大切なポイントでしたので。
このタイプ分けを踏まえたうえで話を進めさせていただきます

2.ゾーンの定義

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:それでは、ゾーンって何なの?というところをお話します

あなた:良かったwそれ実は聞きたかったのです。ゾーンってなんとなく聞いたことあるけどよくわからなくて、、、お願いします

:一般にスポーツ選手などが「ソーンに入る」ってワードなどで聞くことがあると思いますが、ここは検索して定義を見てみましょう

ゾーンとは、集中力が非常に高まり、周りの景色や音などが意識の外に排除され、自分の感覚だけが研ぎ澄まされ、活動に没頭できる特殊な意識状態を指します。 その際には、取り組んでいることに没頭し、驚異的な集中力で予想以上の結果を出すことが可能になると考えられます。

:つまりものすごい集中力で高いパフォーマンスを発揮することが出来るのが、ゾーン状態。

あなた:すごい!でも、スゴイ集中できるときはあるけど、どの状態がゾーンかは、わからないな、、、車で事故しそうになった時スローモーションになった体験はしたことあるけど、、、これは違うのかな?

:あ~わかります。生命の危機を感じた時にスローモーションになる感覚は、私も解ります。
ですが、ゾーンの定義とは少し違うと思います。科学的なことはわかりませんが、今回のゾーンの定義として、私が仮説として定義したいのは、「高い集中力」を「継続」した先にやってくるのが「ゾーン」ではないか?と思っています。なので、瞬間的にアドレナリンが出ているのとは違うものと、決めつけます。

あなた:なるほど!わかりました。ただ「高い集中力」の”高い”ってところや「継続」の時間の定義は気になります。どのくらいの集中力が「高い集中力」と言えるのか?そしてそれをどのくらいの長さ「継続」したらゾーンに入れるのか?仮説を教えてください。

3.ゾーン体験からの仮説

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:ここからは実体験からの感覚の話なのですが、自分のお店を持ち、ランチ営業する中で、月に2.3回はゾーン体験していました。

あなた:え!?そんなにですか?

:はい。もちろん私の仮説に基づく定義での、しかも感覚の話ですが(笑)。
つまり
「高い集中力を継続した先にやってくるゾーン状態」
具体的なシチュエーションでいいますと。
営業前にしっかりと仕込み段取りを行い、万全の状態(余計なストレスがない状態)でランチの営業スタートを迎え、ありがたくお客様がたくさん来てくださり、料理のオーダー(注文)が集中し、伝票が並んだ状態が30分以上続いた時に、思考も身体も疲れ始めます
少しでも気を抜いたり、あきらめたら、バタバタと思考パターン(段取り)が見えなくなり、手順がみだれ、オーダーはどんどん遅くなってしまう。
そんな状態においても
集中力を途切れさせず、最短の思考と最善の動きを続けた先に、、やってくるのです。

ゾーン状態

余計な音(周囲の雑音はもちろん、頭・心の中の雑音)は無くなり、少しぼんやりとした視界ながらも、俯瞰的(全体把握が出来る)なところから見ているような視点。身体は不思議なくらい良く動き思考も無駄なくゾーン前の必死な動きから比べてゆとりすら感じる。

あなた:わぁ、、、ゾーン

:私の感覚ではゾーン状態の前に「ハイ」の状態もあります。高い集中力で、頭と体をフル稼働させていると、疲れ始めてくるのですが、この状態をある一定の時間が経過すると「ハイ」になってきます。酔っぱらっているとは違って、単純に面白くなってくるというか、動きもより早くなり、思考は少しリラックスしたような、そんな感じです。

あなた:あ~その感覚は何となくわかります。昔居酒屋で働いている時にあまりの忙しさに途中から「ハイ」になってました。スタッフみんなで(笑)

:はい。そうなんです。その感覚です。ただ、「ハイ」の状態と「ゾーン」状態とはやっぱりもう一段階違う感覚なのです。

あなた: …一段違う、、、?

:「ハイ」になって高い集中力を続けるのって実は難しくて、、、何て言いますか、ハイになってしまうと「たのしい」感覚が「まぁどうなってもいいか」ってなりがちで。
アッ!すみません。これは私がいい加減だからですね(笑)。ハイになってしまうと、あきらめとか適当と言ったった私の本質が勝ってしまうんです(笑)
なので、相変わらず私の「仮説に基づく定義の感覚」の話です

あなた:はい(笑)

:ハイになりながらも”あきらめず”に高い集中力を維持したさきにやってくるのが「ゾーン状態」です

これにはポイントがあると仮定しています

あなた:と、言いますと

:頭(思考)と身体(運動神経)の両方が、ある一定時間
高い集中状態を続けていることに、このゾーン状態に至るポイントがあると思います。
つまり、どちらか一方だけ(頭・身体)の集中(負荷)状態では、ゾーンには入れない。
そんな仮説です。

あなた:なるほど。なんかイメージは解りました。
スミマセン、、ところで、最初の「予約型」と「待ち受け型」のタイプ分けって、、、?このゾーンのお話に必要だったのでしょうか?(笑)

:あっwすみません忘れてました!はい。必要です。というか、予約型ではゾーンには入りづらいって話です。

あなた:でも、予約型だとしても忙しくて、頭も身体も動かしていたらゾーン状態にはなるのではないでしょうか?

:絶対にならないとは思いませんが、きわめて成りづらいと思います
なぜならば、予約型では、あらかじめ段取りを組み立てられる時間があります。洗練されスキルが上がれば上がるほど、混乱やパニックを起すことなく、最適な段取りをつけてスムーズに仕事が出来るようになります。
 この混乱やパニックは、不慮の出来事や、想定外の事によって起こりえますが、その対応もスキルが上がれば上がるほど冷静に素早く対応できるようになります。

あなた:確かに、そうですよね

:待ち受け型ももちろん、スキルが上がれば上がるほど、混乱やパニックは起さずに仕事が出来るようになりますが、ポイントは「ツーオーダー」です

あなた:つーおーだー?

:業界用語ですから解説入れます

オーダーを受けてから調理すること。 作り置きしていたものを提供するよりも時間はかかるが、作りたての美味しい料理をお客さんに提供することができる。  また賞味期限切れの食材ロスや、料理の味が落ちるのを防げる利点もある。

:ツーオーダーで、しかもどんなオーダーが入るか一秒前でも解らない。
ここが両者(予約型と待ち受け型)の違いのポイントです
予約型でも、お客様の来店に合わせて最高の状態で作ることは変わりませんが、何が来るか全く予測が出来ず、また、一つとして同じ組み合わせのないオーダーパターンですので、毎回オリジナルの手順のための思考パターンを組み続けなければなりません。
一名様の場合。四名様をそろえて出す場合。料理の仕上り時間のずれ。オーブンやフライヤーなどの容量などなど、その組み合わせパターンは無限です。

4.実体験とまとめ

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:以上の仮説で私の実体験を重ねてまとめていきますと
特に、一人で厨房に立つスタイルになって「ゾーン体験」は増えました。理由として、
ひとつは
単純に一人でバタバタと忙しいから
もうひとつは
全て自分の思考内で処理するので集中しやすい
この二つが大きいと思います。厨房に二人いた時でも体験したことはありますし、雇われで居酒屋で働いていた時も似たような体験はしたことはありますが、頻繁に「ゾーンに入る」事が出来るようになったのは
独立して自分の店舗を持ち、厨房に一人で立つようになってからです。

5.最後に

写真家と庭の食卓ロゴ - 瀬戸内Set

自分に料理人が向いているかどうかは、いまだにわからないのですが、「ゾーン体験」がこの仕事のやりがいというか一つのモチベーションになっていたのではないのかと、最近思うようになりました。
考えてみれば、ゾーン体験を得られる仕事は、限られると思います。
それが得られた方がいいと言う話ではないですが、ゾーン体験をすると病みつきになるのです。
「ハイ」から「ゾーン」に至るまでには、毎日の反復からくる洗練された動きと、高い集中のための余計なトラブルやパニックを避けるための準備段取りが欠かせません。
 料理人として、毎日の仕事を”こなす”先に”ゾーン”というご褒美があるのではと、感じています。
料理人って仕事の魅力を伝えるのに、これからは「ゾーン体験」の話をしていこうと思います

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