見出し画像

春からの係争

4月から続いた、彼氏との係争がやっと、終わった。
傷つけた。傷ついた。怖かった。戸惑った。悲しかった。苦しかった。今はただ寂しい。

彼氏というより、友人を1人失ったような気持ち。なんでも仕事のことは話せた。負のエネルギーが強くて、こわい人だった。ピアノを弾いている姿がカッコよくて好きだった。私のせいでピアノが弾けなくなったと言われて戸惑った。作ったごはんをいつも美味しいといって感激しながら食べてくれた。LINEや電話で何度もなじられた。小さい子みたいに、私の名前をあだ名で呼ぶのが可愛かった。目の前から消えろと言われた。一緒に好きな演出家の舞台を観に行ってくれた。初めて自殺にチャレンジするくらい追い詰められた。仕事中、姿が見えるだけで嬉しかった。今は声が聞こえるだけで体が強張る。
傷つけた。傷ついた。

結局のところ、信頼関係を築けなかった私たちの問題だということになるけれど、好きだったから信頼してほしかった。認めて欲しかった。ああ、好きだったんだなあ。最後に会う前の日の晩なんかは、なんであんなやつと付き合ってたんや!ゴミ!くらいに思ってたのに。いざ終わって思い返すと、いいことばかり思い出す。確かに好きだった。大切にしたかった人なのに、どうしてこんな終わりしか迎えられなかったんだろう。

いつまで経っても問題が解決しなくて、互いに消耗した。片方は不眠になり、片方は目眩の病になり、散々だ。彼は、人生をかけて愛していたものも失おうとしている。らしい。
お前が100%悪いと言われた。
ごめんね。私はそうは思えない。
私は何度も謝った。解決する努力をした。毎度毎度、解決の糸口が見えたと思ったらすぐに白紙に戻すのは彼の方だった。同じ作業のリフレイン。スクラップアンドスクラップ。残ったものは何?

戻れるなら、初めて飲みに行こうと言った日に戻りたい。こんなにも傷つけあってしまう2人だから、絶対に付き合わない方が良かった。たくさん傷つけてごめんなさい。付き合わない方がよかったね、わたしたち。もう伝えられないけど、もっともっと謝っておけばよかった。謝ったって何も戻らないけど。
寂しがり同士だった。これからは、寂しさを抱えて、それぞれの人生を進んでいかなくてはならない。

別れ際に差し出された手。利き手だった。大事な商売道具の手。私のせいで、思うように動かない手。そんな手に触れることが憚られて、うまく握手出来なかった。どんな思いで、手を差し出したんだろう。もう聞けないけど。

願うことが許されるなら、あなたがまたピアノを弾けるようになりますように。わたしとは交わる事のない人生の中で、幸せに過ごせますように。


いただいたサポートは、note執筆のための感性磨きに使わせていただきます。拙筆ですが、テーマ等ご希望あれば、それに沿った記事を作成致します。