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世界と出会い直すための「逸脱的思考」──小松左京短編SF『夜が明けたら』のプロットの導入が見事で感じ入って発火する

7月の「読書会」の課題図書『世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学』(近内悠太 NewsPicksパブリッシング)のすきまを這う。 人の考えには、あらかじめ、みちすじが通っていて、一定のパターンみたいなものがあって、その範囲を超えて考えることはとても難しいことだと、だれもが、うすうす気がついている。 ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』も断片ノートも読んでいない。なので、本書『世界は贈与で──』にも述べられた「言語ゲーム」という概念装置のことなど、論

    • 『白鯨』 Moby Dickのゲノム (1)

      ハーマン・メルヴィル『白鯨』(岩波文庫版 上・中・下巻)を何十年ぶりに読み進めた。 ただし、夢枕獏版『白鯨』とCWニコル『勇魚』を歴史的時間軸と鯨捕りの領分で位置決めして、重ね読みしている。なので、kindleづかいでないと挫折する読書法だが、そもそも後者の作家二人、書くほうにも創作意欲をもたげる動機があったはず。それは後に述べることにしたい。 メルヴィルの神経質な荒くれ知性が描く『白鯨』から、陸人間の限界を食い破る海洋勢力のタンパク質を吸収したいと思っていた。 大海原の

      • 流し目なのに射抜かれ、弥生時代だと日本とぼけて沈黙するのはちょっと待てよと。

        烈暑の上野・東京国立博物館、昨年は『縄文展』で火焔にまみれ、今年は『三国志』が放つ日本的世界像の彫琢への一撃だった。 会場平成館の入口の脇、14〜15才だろうか、中国の少年が両親と思しき人にカンペとスマホ向けさせて、玉の汗をかいて、特別展『三国志』のレポートをしている場に遭遇した。 bilibiliとかいう中国版ニコ動みたいなサイトで公開するのだろうか。 そのカンペを見て、ハタと舞いあがった。「司馬懿」「遠交近攻」「卑弥呼」の文字へのマーキングに衝撃を受けた。

      世界と出会い直すための「逸脱的思考」──小松左京短編SF『夜が明けたら』のプロットの導入が見事で感じ入って発火する

      • 『白鯨』 Moby Dickのゲノム (1)

      • 流し目なのに射抜かれ、弥生時代だと日本とぼけて沈黙するのはちょっと待てよと。

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      • 猪瀬直樹
        2本