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じわじわくる『ビバリウム』

話題のスリラー映画『ビバリウム』を観てきました。

新居をさがしている若いカップルが、不動産屋に案内されて内見にやってきた住宅街。
内見しているといつの間にか不動産屋は消えており、帰ろうとするが、同じ見た目の家が立ち並ぶ住宅街から脱出できなくなっていた。

家に届く食材、そして家に届く子ども……「育てたら解放される」と書いてある段ボール……

誰もいない住宅街に閉じ込められ、得体のしれない子ども育て続けるカップルが、じわじわと疲弊し、じりじりと不安に侵食されていく様子を、簡潔ながらも丁寧に描写したスリラー映画です。

ビバリウム、というのは、生物の飼育をする際に住環境を再現した、水槽などを指す言葉です。

このビバリウム、というのが一体主人公たちにどう関わっていくのか、というところが、話の中心となる部分かな。

主人公たちは、よくわからないけれど子どもを育てなければならなくなる。

しかも、とても人とは思えないスピードで育っていく。

毎日届く、イマイチ美味しくないごはん。

どこを見てもまったく同じ見た目の家しか住宅街。

嘘みたいにきれいな空と雲。

彼女のジェマと、彼氏のトムがそういった閉塞的で環境の中で徐々に心境に変化が現れていく。

その変化の描写や、その閉塞的な環境のディティールが、本当にじわじわと心をえぐって、気持ちが悪い。

怖いというよりは「気色悪い」映画でした。

監督にはホラーというよりSFらしいです。

わたしも、観てみてSFと言われる方がしっくりくるなあと思いました。

あるいは、ジャパニーズ・ホラーに近い。
じわじわ感とか、気味悪さ、気色悪さ、後味の悪さ。

背中に急に氷入れられたみたいなぞわっと感、がずっと続く感じの気味の悪さ。

ストーリーとしては、割とシンプル。

あらすじを読んでから行くと、かなりストーリー展開は分かりやすいのかなと思います。

むしろストーリーそのものというよりは、主人公たちが置かれている状態や、その見せ方、間、とかが注目ポイント。
だけど、そこに注目すればするほど気持ちが悪い。

シンプルだからこそ、ダイレクトにそのゾクッと感が味わえると思いました。

ミッドサマーと比較?並列?されることが多いようですが、ミッドサマーのように考察や知識がいるかというと、そういうカルト的なことではなく「なんとなく」という、不明瞭感がむしろ『ビバリウム』の怖さなのかなと思う。

共通するのは「不条理」。
わけの分からなさ、理由のなさ、(主人公目線だと)多すぎて処理できない謎、徐々に崩壊していく人間関係と心理。

目に見えない怖さが怖い、というタイプにとっては至高のホラーに部類する気がします。

どちらかというと見える怖さが好きなタイプなので、怖くはなかったのですが気持ち悪くて、映画館出てまず隣の友人に「何アレ?」と言いました。

「何アレ?」に結構あの映画の味が集約されていると思います。

「何アレ?????」が好きな人はぜひご覧ください。

志邑でした。


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