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みみず腫れを指の腹で撫でつけて 私と夕景の境界線を消す 稜線は朱鷺色に発光し 民家の土壁を…
前編はこちら *** その絵には『一枚の絵』というタイトルが付けられ、第三展示室の隅の方…
わたしが生まれたのは日本のどこか、海辺の街で、夏だったこともあって、安直な、海っぽい名前…
まだ昼のうちから、鬱蒼とした森はくらく、視界はあまりひらけていない。 足元一面に広がって…
次の連絡船の時間まで、あと40分あった。 わたしは往復のチケットを買い、これから湾を挟んで…
履きつぶした革靴は、靴底が破けていて、動くたびに湿っぽい砂が中に入り込んで不快感を助長し…
強い風の音がしているのを言い訳に、ふたりの間には会話がなかった。 昼間は久しぶりに日差しが照りつけ、温かい陽気であったために、夜にも同じ調子で薄着で出てきてしまった。 向こうもやはり上着などは羽織っていなかったが、不思議と肩を寄せ合うということはなかった。 私たちはただこの沈黙を分かち合っていた。 夜の公園は街中にあっても人の気配がなく、よく知らない芸術家のオブジェにまみれた散歩道も、この暗がりではその華やかな色遣いを見ることがかなわない。 灰色になった塑像の群れは、かつて
フェードアウトしていた意識の中に、雨の音がクロスフェードしてくる。 夜半にはまだしとしと…