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コーヒーショップで《青年!騙されるな応援団》になった話

彼氏と一緒に博多駅の筑紫口近くにあるコーヒーショップで、ホットのカフェオレを飲んでいたから去年の秋から冬にかけてだったと思う。

去年は頻繁にお出かけをしていて、少し足が疲れてきたら、コーヒーショップに入ってなにか飲みながら話すということをよくしていた。

コーヒーショップあるあるなのか、天神と並び人が多いからなのかは分からないが、とにかく博多のコーヒーショップはテーブルが小さい上に、席どうしがわりと近い。
私たちが座ってお茶をしている横の席では、男子大学生らしき2人組が向かい合ってコーヒーを飲んでいた。


お昼もすぎ、15:00くらいだったので、店内はさほど混んでいなかった。
だから、「このあと何食べる?」とか「カフェオレって甘くない?」「甘くないよ」 みたいなどうでもいい話を彼氏としつつ、ゆっくりと流れる時間を謳歌していた。

当時、私たちの間では『急にモノマネをしながら会話をする』という小学生の遊びみたいなものが流行っていて、ときには「香港の料理店のおじさん」とか、ときには「いいところのお嬢様」のマネをしていた。
なかでも、よく彼氏が真似していたのがシソンヌがとある番組でコントとして演じていた「一見悪徳に見えて○○を勧めているだけの男」である。(YouTubeの公式動画が消されていた…悲しい)

当時わたしたちは、このコントに死ぬほどハマっていて、ことあるごとにシソンヌの真似をしていた。

その日も、カフェオレをかちゃかちゃ回しながら、「お金欲しいよね!分かる分かる!……お金が手に入る方法知ってる?」などとのたまっていた。

そんなこんなでグダグダグダグダ話していると、コーヒーショップに入ってきたスーツの30手前くらいのお兄さんが隣の席に近づいてきた。
すると、男子大学生2人組のうち1人が「こんにちは」と挨拶をした。
もう1人の男の子に「こちら○○さん」といい、30手前くらいのお兄さんに「こっちが話していた○○です」と紹介をした。

おお〜〜〜っと……?進研ゼミで見たことあるぞ……?

はっと気がつけば、彼氏も顔の向きをこちらに向けつつ、横目で隣の席を見ている。

さきほどまでパズルゲームをしたり、おしゃべりをしていたわたしたちが、不自然に静かになったころ、そんなことは気にもかけていない隣の席の邂逅は見る見るうちに果たされつつあった。

「○○くんだっけ?いま、大学生だよね?就職とかちゃんと考えてる?」
「へ〜、偉いね。バイトは今してるの?」
「月どのくらい稼げてる?」

マジじゃん!!!
一見悪徳そうに見えて本気で悪徳なシソンヌがここにいる__________

すぐさまわたしは携帯を取り出し、LINEを開き目の前にいるはずの彼氏にLINEを送った。

「これ、ネズミ講とかそういう悪徳商法では?」(既読)
「本物だ」
「ほんとうに月何万稼いでいるかなんて聞くんだ」(既読)
「騙されるな友だち!」
「騙されるな友だち!『それ大丈夫ですか?』って声かけようかな…」(既読)

緊迫した雰囲気のなか、わたしたちカップルは隣の青年にエールを送り続けていた。
騙されるな!騙されるな!騙されるな友だち!

青年は友だちから紹介された男のことをどう思ったのだろうか。もしかしたら、これが悪徳商法のお誘いだと気がついたかもしれないが、友だちがいる手前、当たり障りのないように相槌を打っているだけなのかもしれない。
とにかく、彼は帰ろうとせず、悪徳商法男の話を延々と聞き、ウンウンと頷き、そうですねと相槌を打っていた。

いつの間にか、《青年!引っかかるなよ応援団》の団員と化していたわたしたちカップルは、そんな彼に痺れを切らし、隣の席で
「詐欺とか怖いよね〜(チラ!チラチラ!)」
「な〜んであんなことする人がいるんだろうね〜!(チラチラ!)」
「結構コーヒーショップで誘う人も居るらしいよ!(チラチラチラ!)」
と、普通の会話を装いながら青年に警告をしていた。

結局、電車の時間が迫っており《青年!引っかかるなよ応援団》は解団することになり、志半ばでコーヒーショップを出た。

あの日の青年はどうなっただろうか。
いま、苦しんでいないだろうか。
友だちとは関係が変わってしまっただろうか。

ホットのカフェオレがぬるくなる度に、あのコーヒーショップでの出来事を思い出してしまうのである。

普段は文系院生として過ごしているため、学費や資料の購入に回します✩゜*⸜(ू ◜࿁◝ )